#2177/5495 長編
★タイトル (ZBF     )  93/ 6/20  19: 0  (198)
「県政転覆」2   久作
★内容
「県政転覆」2−鬼畜探偵・伊井暇幻シリーズ−   久作
      ●小林凌辱(アブノーマル・ターキー)
 昨夜は逞しい女王様だったけど、今日のアタシは二十五ぐらいの清楚な人妻。夫
への疑惑と愛に揺れてるという設定。浮気の調査を依頼する、ってつもり。昨夜よ
り五センチは細い首周り、白くスンナリした指。伊井の馬鹿野郎の助手を堕として
やるわ。義弟って噂だけど、このアタシの魅力からは逃れられない筈よ。あの手の
可愛い美少年は、こーゆータイプに弱いって決まってるのよ。あ、ここだわ。相変
わらず貧乏じみた事務所ね。ちょっと眉の辺りに憂いを漂わせてっと。準備OKね。
この眉を顰めるって技は、西施なみの美人であるアタシぐらいにしか許されないの
よねぇ。醜女がやったら、それこそ顰蹙。……ま、イイんだけどさ。
 「あの ごめんください」思いつめた顔を俯け、消え入りそうな声。
 「はい いらっしゃい」ふふ、元気のイイ声。ガソリンスタンドじゃないってば。
 「あのぉ 先生は? ご相談したいことがございまして……」
 「えぇと 留守にしています 夕方迄帰って来ないんですけど」知ってるわよ。
だから、来たのよ。くっくっく、真っ直な視線、トンガリ気味のスッキリした顎の
線、キリッとした眉。可愛いわぁ。これは伊井の弟なんかじゃないわね。
 「あ あの 待たせて戴いて 宜しいでしょうか」すがるような上眼遣い。
 「はい 構いませんよ どうぞ」ふふ、疑うことを知らないイイ子ね。アタシの
コレクションに加えちゃお。
 「有り難うございます」ユルヤカなシナをつくり、チラとウナジが見えるくらい
に深く御辞儀、まずは大人の色気でコナをかける。ん? 反応が無いわ。まだ童貞
なのね。セクシャルなサインが読み取れないなんて。ま、その方がソソルけど。
 「座っててください お茶いれますから」甲斐甲斐しくキッチンに立つなんて躾
けが行き届いてるわね。勿論、伊井の奴じゃなくて、ご両親が偉いに違いない。
 「あ お構いなく」と、一応は言うのが“清楚な人妻”よね、やっぱり。コーヒ
ー好きなのかな。すごく真面目な顔でフィルターに湯を注いでる。美少年の真剣な
横顔ってイイわよねぇ。ムラムラきちゃう。本当に惚れちゃったわ。ふふふ、気付
いてないわね。何処から責めようかな。暑いせいか、白く張りのある肌が薄っすら
汗ばんでエロティック。薄く直線的な肩、白くウブ毛が生えたウナジ、キュッと絞
り込んだウエスト、引き締まって丸く盛り上がったヒップ、それとも、イキナリ…
…。目移りしちゃうわ。
 「はうっ なっ何するんですかっ」まぁ、吐息を耳に吹きかけただけで、この反
応。これは楽しみだわ。
 「はぁあ 寂しいの お姐さん 寂しいの 夫は浮気して ……子供はいないし」
 「ちょっちょっと 止めてくださいっ や 止めてよぉっ」怒りよりは驚きが多
く含まれている声。ふふふ、脈ありだわ。身を硬くして、アタシの指が這い回る引
き締まった腿が少し震えている。スッキリした白い首筋に、吐息とともに甘く噛み
つく。ビクンと反応がある。チラと窺うと、泣きそうな目を見開き、開きかけた唇
で拒絶の叫びが引っ掛かってる。ふっ、他愛ない。
 「はぁあ 可愛いわ 可愛いわ」ワザと軽い音を立て、何度も口づけする。
 「や やめ……て」目は硬く閉じている。歯の根は合ってないみたい。薄い背中
に肉体をシッカリ押し当てながら、指をジワジワと股間に近づけていく。今だっ。
 「アトミックゥゥ…… シェイッカアアーーー  ……ん? あれっ」どうして
っ、何故、あるべき物が、あるべき所に無いの。混乱するアタシをキョトンと見返
る美少年、……美少女? と、その時、勢いよくドアが開いて、
 「何なのっ 一体 どうしたのっ」大柄な女が駆け込んで来た。アタシをキッと
睨みつけ、
 「ちょっとアンタ何よ 小林君に何をしたのっ さては……」
 「ちっ バレちゃ しょうがないね その通り アタシは
  アブノーマル・ターキーよ」怪人は臨機応変の態度をとるのが基本よ。
 「はへ アブノーマル・ターキー? 何よ それ」女がキョトンとする。
 「とっとぼけても無駄よ よくぞ見破ったわ」もしかして、アタシ、墓穴を掘っ
たんじゃ……。いや、そんなことは決してないわ。何故ならアタシは、アブノーマ
ル・ターキーなのだから。とにかくバレたら、消す。これが鉄則よ。女一人に子供
一人。敵じゃないわ。
 「死ねえっっ」躍り懸かったはイイけど女の姿が突然、消えた。と、その瞬間、
 「んがあああっっっ」下から嫌という程、顎を突き上げられた。頭の中が真っ白
になる。軽い脳震盪。半身の態勢をとった女の踏み出した左足を見る。甲にモリモ
リと浮き上がった静脈、サイズはユウに二十八センチ。もしやと思って見上げれば、
そこには立派な喉仏。
 「美貴さん そいつ悪者の怪人だよっ」美少女が叫ぶ。ヨシタカですって! 騙
されたわ。伊井の奴、相変わらず変態なのね。とりかえばや物語。今日のところは、
歩が悪いわ。ひとまず退却よ。
 「あっ 窓にっ 美貴さんっ」
 「待ちなさいっ」
 「ほほほ この借りは必ず返すわよ さらば」アタシは窓から宙へ舞った。華麗
なる逃走、これこそ怪人よね。
     ●ミーティング(山本美貴)
 「ねえ 美貴さん 僕を襲ったターキーに『さては』って言ってたけど……」
 「あ あれ 大したことじゃないわよ」
 「えぇー 気になるよぉ」
 「うーん 実はね ご近所のオバサン達の間で
  小林君は先生の義弟ってことになってるのよ すっかり男だと思われてるの」
 「ふーん 別にイイよ」
 「だから オバサン達 小林君をネタに昼間っから性妄想を喋くり合ってるのよ
  狙われてるんだぞぉ 小林君」
 「えー ヤだなぁ オバサンは」
 「ただいまぁ」
 「あ 先生 お帰り さっき ターちゃんが小林君を襲おうとしたのよ」
 「何っ ターキーが 貴奴め 再び俺と闘うつもりか ぬふふふふふ
  返り討ちにして 縛り上げて アァしてコォして あそこをコォやって」
 「何言ってるんだよぉ 先生 それより ターキーの正体 教えてよ」
 「そうよ 小林君も知る権利があるわ」
 「ふっ 知る権利か…… 俺には喋らない権利もあるが
  まぁイイ 教えてやろう」ったく、偉そうなんだから。
 先生の説明を要約すると、ターキーは三年前、この街でSMクラブをオープンし
て、なかなか繁盛してた。先生も常連客で週に一度は通ってたんだけど、先生はあ
の通り並の変態じゃないでしょ。いかにもマゾマゾした娘をイヂメるのには、すぐ
に飽きちゃったのよ。で、目を付けたのが経営者のターキー。その時、ターキーは
残酷そうな三十男だったんだけど、先生には独特の嗅覚があって、ターキーがアン
ドロギュノスだって見抜いてたのよ。夜道で襲って眠らせて廃屋に連れ込み縛り上
げ、ありとあらゆる技を使って、まぁ色々やって、ターキーのもう一つの人格を引
きずり出したのよ。ターキーは自分でサドだと思ってて、確かにサドなんだけどマ
ゾでもあったの。先生ったら男みたいな女が好みだし、サドを痛ぶることこそ先生
みたいな真性のサドにとっては悦びなんだってさ。変態にしか解らない論理ね。こ
れって手の込んだマスターベーションだと思うけど。ま、セックス全般、そうかも
しれないけど。そうやって一年ぐらいは二人の蜜月関係が続いたけど、ターちゃん
たら、トンデモナイ事件を起したのよ。
 ターちゃん、実は権力全般が嫌いな人だったの。SM趣味なのに不思議よねぇ。
それで二年前、し尿処理場が新築される話が持ち上がった時、浣腸器一本で計画を
潰そうと決意したのよ。すごく下んないんだけど、毎晩、浣腸器を手に闇を駆け抜
け野良犬を捕え所構わず糞をさせたの。街じゅうが犬の糞だらけになっちゃった。
悪臭に包み込まれた街では、し尿処理場建設の反対運動が巻き起ったのよ。それま
で皆が反対しなかったのは、悪臭が起り得るとは頭で思えても実感が湧かなかった
からなの。だから、実際に悪臭がたち上る状況になってはじめて、これはタマラン
ってことになったのよ。運動は全市を席捲し、選挙が近かったもんだから市議会も
建設反対の立場に回ったわ。理事者側は近代設備だから悪臭は無いって必死に説得
を試みたんだけど一旦、ヤだと思ったら簡単にひき下がらない。揉めてるうちに理
事者側が密かに先生に犬の糞事件の解明を依頼したのよ。
 先生は現場を回って糞が例外なく下痢っぽくなっているもんだから、まず検便の
丸い入れ物に一つ一つ採取して保健所に鑑定させたの。グリセリン液が検出された
わ。そして、丹念に採取を続けていって、明らかに浣腸で排泄された人間の糞に行
き当たったの。鑑定から犯人像が浮かび上がったのよ。決め手となったのは、一人
分なのに、どうも二人分混じってるようだったこと。先生の出した結論は「これを
ひり出した人物は他人の排泄物を口にする性癖をもっているらしい」。そして排泄
物を食べさせた、もしくは食べられた人物はB型ってことも分かったわ。先生の第
六感が「犯人はターくん」と囁いたのは、その時だったの。その二日前、先生は嫌
がるターちゃんに自分の排泄物を食べさせてたし。先生、B型なのよ。
 ターちゃんのSMクラブに潜入して帳簿を調べたのよ。すると事件直前から毎日、
大量のグリセリン液を仕入れてるのが分かったわ。で、ターちゃんとの逢瀬の分か
れ際、問い詰めたの。ターちゃんは素直に認め、先生を仲間に引き入れようとした
の。先生も面白そうだから仲間になろうとしたんだけど、サドの血が、それを許さ
なかったのよ。正義感からじゃなくって、ターちゃんをイヂメルためだけに、冷た
く拒絶し捕縛しようとしたのよ。馬鹿よねぇ、縛ってるうちに問い詰めたらよかっ
たのに。ターちゃんは隠し持ってたワルサーPPKで先生を撃って逃げたのよ。先
生ったら自分は悪虐非道なサディストのクセに自分に対する暴力には逆上する、至
極ご尤もな性格だから、ルガーP08をひっ掴むと追っていったわ。で、結果はタ
ーちゃんの国外逃亡。実はターちゃん、ドイツでSMの修行したみたいで、あっち
にもツテがあったのよ。
     ●第二の犠牲者(田部金造)
 ああぁ、都会の議員はイイのぉ。農民に気兼ねしなくてイイのじゃから。こっち
は信じてもいない食物自由化阻止なんて御題目を大声で言わなきゃイカンというの
に。党本部も勝手ばかり言うてきよる。外交交渉を有利に進めるため、形だけの陳
情団をワシらに組織させよって。地方議員を道具としか思っておらん。田舎が保守
を支えとるというのに。しかし県令も妙なことを言い出したものじゃ。地方拠点都
市発展法の地域指定をバラまくだと。指定されて各種事業に優先的な補助が下りる
とは言うても結局、総額の半分は地元負担じゃないか。田舎には過ぎた事業も多い
から、ますます自治体が借金漬けになるのは、目に見えとる。県令も以前はソォ言
うとったのに急にバラまくなんぞと言いよる。総選挙絡みとしても、何だかのぉ。
七十になる今まで五期、県議会議員をやってきたが、こんな妙な話は過去には思い
当たらんが……。
 「田部先生 失礼致します」
 「ん 誰かな」おや妙な男だ。捩じり鉢巻きと褌一丁の半裸の屈強な四十代、だ
とは思うが引き締まった逞しい体を包む焼けた肌は若々しいから、三十代かもしれ
ん。祭への補助の陳情かな?
 「こんな格好で失礼致します
  勝手金権党県連団長の田部金造先生で おわされましょうか」
 「いかにも しかし威勢のイイ格好じゃな どうしたのかな
  この田部 県民のためなら労は厭わぬが…… ところで どなたの紹介かな」
 「ごめんっ」男はワシに躍り懸かり、幾つもの小穴が開いたピンポン玉のような
物を口に押し込みおった。
 「どうだ ギャグを噛まされた気分は」
 「ひゅへひほふぉ ふぁふひゃふぉ ほほひほほはひふぉ」無礼者っ。ギャグだ
と? 面白おないぞっ。
 「お前を 俺の奴隷にしてやる 有り難く思え」
 「はひほっ はひほほふぁ」何をっ、何者だっ。
 「くっくっく 俺を憎みきってるって顔だな ソソルぜ
  その顔がジキに歪み 随喜の涙を流すことになるんだ
  ほほぉ 案外色白なんだな ぐふふふふ この肌がジキに桃色に染まるんだぜ
  そぉら ココをコォして コォやって ココん所に通して 結んで
  どぉだ 完璧な縛りだろう 身動きとれまい」
 「ひほふひひほはひはふぁふぉ」肥後ズイキの涙だとっ?
 「ひっひっひ まずは手始めに……」
 「ひゃひぇふぉふぉっっっ」やめろおおっっっっ。
 「ぬきききき 他愛ない奴め」
 「んぐうっ ほっほーー」もっとーー。
 「ほぉれ ほぉれ」
 「んぐうっ へんはふははひふぁ へんはふははひふぁ」洗濯バサミがっ、洗濯
バサミがっ。
 「ぐひひひひひひ」
 「んぐうっ へぇふぅはひほほひふぁ へぇふぅはひほほひふぁ」低周波治療機
がっ、低周波治療機がっ。
 「ぬふふふふふふ」
 「んぐうっ ほぉはふひふぁ ほぉはふひふぁ」乗馬鞭がっ、乗馬鞭がっ。
 「きっきっきっきっき」
 「んぐうっ はひはぁふぁ はひはぁふぁ」ライターがっ、ライターがっ。
 「がはははははは」
 「んぐうっ ははははほふぁ ははははほふぁ」生卵がっ、生卵がっ。
 「けーーけっけっけっけ」
 「んぐうっ ひふへへふぁ ひふへへふぁ」水責めがっ、水責めがっ。
 「はぁはぁ ふっふっふ 最後に 俺のコイツで…… うりゃうりゃあっっ」
 「んぐううぅぅぅっっっ」おおっ、勃ちよった。二十年ぶりじゃ。
 「仕上げだ アトミックゥゥ…… シェイッカアアーーー」
 「んぐうううっっっっ へくっ」
 それは地獄のような、極楽のような……。
(つづく)