#2123/5495 長編
★タイトル (RJM ) 93/ 6/11 22:43 (163)
『二人のしっちゃん』その2 スティール
★内容
あさ、おきたら、しっちゃんは、なぜか、おかあさんと、いっしょに、ねていま
した。しっちゃんは、こころのなかで、(あれ、どうしたんだろう? いつのまに、
おかあさんのベッドにきたのだろう?)と、おもいました。よこをみたら、おかあ
さんは、すやすや、ねていました。ネコのジョバンニも、いつのまにか、しっちゃ
んのあしもとで、すやすやと、ねていました。しっちゃんは、こころのなかで(あっ
、しょうかぁ〜、きっと、しっちゃんがねているうちに、おかあさんが、しっちゃ
んを、かわいそうにおもって、はこんでくれたんだ)と、おもいました。
へやのなかをみたら、まだ、くらかったので、しっちゃんは、もういちど、ねよ
うと、おもいました。しっちゃんは、おかあさんに、いつもよりも、しっかりと、
だきついて、ねました。しっちゃんは、それから、いつものように、すぐ、ねてし
まったらしく、それからのことは、よく、おぼえていません。
しっちゃんが、つぎに、おきたのは、おかあさんに、どつかれたときでした。ぐっ
すりと、ねむっていた、しっちゃんは、それで、やっと、ねぼけたじょうたいに、
なりました。めがさめるまでは、まだまだ、とおいです。おかあさんのこえがしま
した。
『しっちゃん! はやく、おきなさい、ちこくするわよ〜!』と、おかあさんは、
しっちゃんに、いいました。あさ、おかあさんは、とても、げんきです。しっちゃ
んは、ほとんど、ねてしまいながら、『もう、すこし、ねかして』と、おかあさん
にいいました。でも、おかあさんは、ゆるしてくれません。
『しっちゃん! じゃあ、すぐ、おりてこないと、ぶったたくよ!』といって、お
かあさんは、へやをでていきました。しっちゃんは、おかあさんが、かいだんをお
りていく、おとをききながら、(かていのしゅふって、なかなか、たいへんなんだ
な)と、こころのなかで、おもいました。
しっちゃんは、ちょっとでも、きをぬいたら、ねてしまいそうでした。(このま
ま、ねてしまったら、なんて、きもちがいいだろう)と、しっちゃんは、いつもの
ように、おもいました。でも、(はやく、おきなければいけない)というきもちも、
ほんのちょっとですが、しっちゃんの、こころには、ありました。
にちようびに、あそびにいくとかだと、あさの、4じや、5じでも、ゆかをごろ
ごろ、ころげまわりながらでも、いのちがけで、おきるんだけど、でも、まいあさ、
そんなことをしていると、しっちゃんも、やっぱり、にんげんですから、しんでし
まうというものです。
しっちゃんは、めをとじたままだけど、なんとか、あたまを、もちあげました。
でも、ちょっとでも、ゆだんすると、また、ねむってしまいそうです。それでも、
しっちゃんは、いつものように、なんとか、おきようとしました。しっちゃんは、
ちからをいれて、なんとか、じょうはんしんをもちあげるところまで、きました。
でも、また、べちょっ、と、つぶれて、しまいました。
したのろうかから、おかあさんのこえがしました。
『しっちゃ〜ん! ほんとうに、ぶったたくよぉ〜! しっちゃんの、おしり、ぺ
んぺんしちゃうょぉ〜!』
もう、そろそろ、あぶないです。このまま、ねてしまうと、ほんとうに、ぶった
たかれそうです。しっちゃんは、ふとんから、なんとか、おきあがって、めをこす
りながら、めざましとけいを、みました。ほんの、ちょっとのあいだですが、しっ
ちゃんのめは、いっぱい、ひらきました。たいへんでしゅ。もう、ほんとうに、がっ
こうに、おくれて、しまいそうです。
しっちゃんは、よつんばいになって、ずるずると、ドアのほうに、むかいました。
ドアで、なんども、ねむりそうになりながら、めをつぶったまま、てさぐりで、ド
アの、ノブを、つかみました。ゆっくり、ドアをあけました。
しっちゃんは、なんとか、ろうかにでました。めは、はんぶんくらいしか、ひら
いていなくて、まだ、くるしいじょうたいです。そのとき、しっちゃんのへやのド
アが、ゆっくりと、ひらいて、なかから、だれかが、でてきました。なかから、で
てきたのは、なんと、しっちゃんでした。しっちゃんは、こころのなかで、(あれっ
? しっちゃんは、ここにいるのに、もうひとり、しっちゃんがいる!)と、おも
いました。そのとき、しっちゃんのおへやから、でてきた、もうひとりのしっちゃ
んも、しっちゃんのことをみました。もうひとりのしっちゃんも、みたしゅんかん
に、めが2ばいくらいに、おっきくなって、おどろいたようでした。もうひとりの、
しっちゃんも、『おっ!』というかおをしました。しっちゃんは、はんぶん、ねぼ
けていたので、ゆめでも、みているのかなと、おもいました。しっちゃんは、ねぼ
けながらも、いつもよりも、かいだんを、はやく、ドタッ、ドタッ、と、おりまし
た。もうひとりの、しっちゃんも、はんぶん、ねぼけながら、ドタッ、ドタッ、と、
かいだんを、おりてきました。ふたりの、しっちゃんは、どうじに、リビングルー
ムにいきました。
ふたりのしっちゃんをみた、おかあさんと、おねえちゃんは、めを、まるくしま
した。きっと、おどろいたのでしょう。おねえちゃんは、『あれっ、しっちゃん、
ふたりいるよぉ〜』と、いいました。しっちゃんは、なんとなく、てれてしまって、
あたまのうしろに、てをやって、てれました。
おかあさんと、おねえちゃんは、ダーッと、かけよってきて、ふたりのしっちゃ
んを、めずらしそうに、みていました。
おかあさんは、しっちゃんと、もうひとりのしっちゃんのかおを、みて、『あ〜っ
、ほんとだぁ〜、しっちゃんが、ふたりいる〜!』と、いいました。しっちゃんは、
おかあさんは、あいかわらず、おとなげないなと、おもいました。
もうひとりの、しっちゃんは、『こっちが、ほんものの、しっちゃんだよ。あっ
ちが、にせものださぁ〜!』と、しっちゃんをゆびさして、いいました。しっちゃ
んは、さきに、ゆびさされて、さきに、しっちゃんがいいたいことを、いわれてし
まいました。しっちゃんは、(しまった)と、おもいました。だから、しっちゃん
も、あわてて、おなじことをいいました。
『おかあさん、こっちが、ほんとうの、しっちゃんだよぉ〜!』
おかあさんと、おねえちゃんは、めをまるくしたままです。しっちゃんは、あせ
りました。ここで、しっちゃんが、にせものと、まちがえられると、うちから、お
いだされてしまいそうです。しっちゃんは、あせって、しまいました。もうひとり
の、しっちゃんも、やっぱり、ちょっと、あせったみたいでした。しっちゃんが、
いうのと、どうじに、もうひとりの、しっちゃんも、おなじことをいいました。
『しっちゃん、おかあさんのこどもだもぅ〜ん! しっちゃん、おねえちゃんの、
きょうだいだもぅーん!』と、しっちゃんたちは、ふたりで、ハーモニーをしなが
ら、いいました。
おかあさんは、そのようすをみて、『ふたりとも、おなじくらい、まぬけだから、
みわけがつかないわね』と、いいました。いつもなら、ここで、ぷっと、ふくれて
しまうところですが、いまは、それどころでは、ありません。しっちゃんは、まっ
すぐ、たったまま、なみだぐんで、くちをとじて、まっすぐ、まえを、みていまし
た。となりの、もうひとりの、しっちゃんをみたら、しっちゃんと、おなじような
かんじで、たっていました。しっちゃんは、もうひとりのしっちゃんを、しっちゃ
んよりも、ちょっと、まぬけだな、と、おもいました。
おねえちゃんは、うでどけいをみながら、『あっ、もう、こんなじかんだ。がっ
こうにいかなくちゃ』と、いいました。
しっちゃんは、(おねえちゃん、ちょっと、つめたいな、ひじょうだな)と、お
もったけれど、でも、そんなことをいうと、うちから、たたきだされてしまいそう
なので、しっちゃんは、『おねえちゃん、どうそ、どうぞ、しっちゃんにはかまわ
ず、がっこうにいってくだしゃい』と、いいました。そうしたら、もうひとりの、
しっちゃんも、しっちゃんと、まったく、おなじことをいいました。
そのとき、しっちゃんは、もうひとりの、しっちゃんを、(にくたらしいやつだ
な)と、おもいました。もうひとりの、しっちゃんも、こわいめで、しっちゃんの
ことを、にらみました。しっちゃんは(こいつ、ちょっと、こわいな)と、おもっ
て、ちょっと、びびりました。もうひとりの、しっちゃんも、すこし、びびったよ
うです。
おかあさんは、しっちゃんと、もうひとりの、しっちゃんの、ふたりに、『しっ
ちゃん! もう、そろそろ、がっこうに、いかないと、おくれるよぉ〜』と、いい
ました。しっちゃんは、(あっ! しょうだ、がっこうに、おくれてしまう!)と、
こころのなかで、おもって、あせりました。もうひとりの、しっちゃんも、そう、
おもって、あせったようでした。
『おかあさん、どうしよう〜?』と、ふたりの、しっちゃんは、こえをそろえて、
いいました。おかあさんも、かなり、あせったみたいで、はやくちで、ふたりのしっ
ちゃんに、いいました。
『ふたりで、がっこうにいくわけにいかないしね〜。そうだ、じゃ〜、じゃんけん
で、まけたほうに、がっこうにいってもらったら〜』
(あっ! そうだ、そのてがあったのか)と、しっちゃんは、かんしんしました。
でも、しっちゃんは(どうして、まけたほうが、がっこうに、いくのかな?)と、
ふしぎに、おもいました。しっちゃんは、じ〜っと、かんがえました。しっちゃん
は、ひらめきました。(あ〜っ! しょうだ、かてば、がっこうに、いかなくても
いいんだ)と、おもいました。しっちゃんは、(でも、となりのやつは、きづいた
のかな?)と、おもって、やつにきづかれないように、よこめで、やつのかおを、
みました。そうしたら、やつも、よこめで、しっちゃんをみていました。しっちゃ
んは、(ぜったい、じゃんけんで、まけないじょ!)と、おもいました。
おかあさんは、『じゃあ、じゃんけん、いくわょ〜!』と、いいました。しっちゃ
んは、じゃんけんのかまえに、はいりました。やつも、しっちゃんとおなじように、
かまえに、はいっています。
おかあさんの『じゃんけん、ぽん!』という、かけごえとともに、しっちゃんと
やつは、じゃんけんをしました。でも、しっちゃんがグーなら、やつもグー、しっ
ちゃんがパーなら、やつもパー、しっちゃんがチョキなら、やつもチョキというよ
うに、ふたりとも、おなじものをだすので、なかなか、しょうぶが、つきません。
そのうち、しっちゃんは、(あっ! しょういえば、しょうだ)と、きづきまし
た。しっちゃんは、おかあさんに『やつも、おなじやつしか、ださないよぉ〜』と、
いいました。おかあさんも、すぐに、つぎのてを、かんがえてくれました。おかあ
さんは、しっちゃんとやつに『じゃあ〜、あみだにしましょう〜!』と、いいまし
た。
あみだでも、しっちゃんと、やつは、おなじところのとりあいになったんだけど、
でも、おかあさんに、えらんでもらうことにして、やっと、きまりました。おかあ
さんが、あみだを、たどっているあいだ、しっちゃんと、やつは、ワクワクしてい
ました。おかあさんが、やつのあみだをたどっていくと、やつのえらんだあみだは、
がっこういきに、なりました。しっちゃんは、とても、よろこびましたが、やつは、
とても、くやしがっていました。
そういえば、しっちゃんと、やつは、はじめて、ちがうことをしたようなです。
しっちゃんは、そのことにきづいて、とても、うれしかったけれど、ちょっぴりさ
びしいような、きもします。となりにいる、やつをみたら、おなじような、かおを
していました。
しっちゃんと、やつの、どっちが、がっこうにいくかをきめるのに、とても、じ
かんがかかりました。みんなで、とけいをみたら、もうとっくに、ちこくのじかん
を、すぎていました。
しょうがないので、やつは、おかあさんといっしょに、がっこうにいくことに、
なりました。やつが、ちょっと、かわいそうなきが、しました。