#2079/5495 長編
★タイトル (ZBF ) 93/ 4/22 5:21 (198)
「私本・堤中言納言物語」(18禁)訳 夢幻亭衒学
★内容
第1段落
仲春の月に誘われて蔵人の少将の娘は髪を結い上げ男装し深夜の散歩に出掛けた。
凛とした容姿に似つかわしく、ズボンの裾をタクシ上げ歩いている。顔立ちの美し
い童女を一人だけ連れて歩いていたが、やがて夜明けも近付き朝霧が二人の姿を隠
しだすと(童女を相手にアオカンを始め)立て続けにイッた。そのうち飽きて「ど
こかに素晴らしい少女で“空き家”なのはいないかなぁ」と言いつつブラブラ歩い
ていると、庭木を趣味よく植えてある家から琴の音が、うっすらと聞こえてくる。
(聞いていると)なんだかとても肉体が火照ってきて踊りだした。門の脇に塀の壊
れた処もあったが築地は大層見事に手を加えており、侘びを追求しているのか逆な
のかヨク解んないなと思いながら、いったい如何な人が琴の音の主なのかと妙に気
になった。他に良い方法も思い浮かばないので、例によって童女に歌を叫ばせた。
朝霧に紛れて快楽に身を委ねておりましたが
あなたの琴の音のエロティックさに肉体の炎が再燃してしまい、
もともと終わりの無い快楽なのに、それを更に引き延ばしてしまいました。
ほんの少しの間、内から人が出て来てくれるかな、とワクワクして待っていたのだ
が、誰も出て来なかった。残念がりながら、その家を通り過ぎた。すると好みの童
女が四、五人、奇麗な小箱を捧げ持ったり可愛い柄の手紙を袖の上に載せたりして、
出入りする家があった。みんな可愛い女の子だったのでムラムラときて、人目を忍
んでコッソリ家に入った。大層茂ったススキがあったので潜み(毛深い個所へと)
指を突き立て自慰をしていた。そこに八、九歳の非常に洗練された感じの女の子が
薄色のアコメに紅梅色の上着などをラフに着こなし張形を瑠璃の壷に入れてアッチ
の方からパタパタ走ってくるのが、とても可愛いらしぃなぁ、と思って見ていると、
その女の子が(女の)直衣の袖がススキから出ているのを見付け「ここに男がいる
っ」と驚き大声を上げそうになった。女は慌て「ちょっと、静かにして。聞きたい
事があってコッソリ入って来ただけよ(と言っておこう)。男装しているけど、こ
れでも女なのよ」と言い聞かせ「来てごらん」と手招いた。女の子はためらうふう
もなく女の股を触り「あら本当。穴だわ。驚かせないでよ。明日のことで頭がイッ
パイで、今から準備で急いでいるのよっ」とマクシ立てて行ってしまおうとした。
第2段落
女は興味をソソられ「なにをそんなに慌てているの。私のことを少しでも思って
くれたら、とってもイイことしてあげるわよ」と(スケベェな笑みを浮かべて)言
った。女の子は務めを忘れたかのようにジッと立ち尽くし「ここの姫君が幼い頃か
ら慕っていた北の方の姫君(=東の御方)に沢山愛の歌なんか贈りたて、やっと貝
合せ迄こぎつけたの。姫君は、この上なく悦ばせて他の人なんか忘れさせたいと思
って、この数ヶ月間に張形を蒐集することに専念してきたんだけれど、相手は年増
のテクニシャンの大輔の君やら侍従の君なんかと貝合せするような年上趣味の人な
の。それにアッチはアッチで結構な張形コレクタァだし。姫君にとって張形蒐集で
頼れる相手は(同じ趣味)の妹君だけで、とっても不利な状況なのよ。だから今も
こうして姫の姉君の処へ頼って行こうとしてたの」と言う。女は「ねぇねぇ、姫君
たちが素顔を見せてる処、見てみたい。格子の隙間なんかからでもイイからさぁ」
と頼み込んだ。女の子は「えぇっそんなことしてアナタが喋ってバレちゃったら、
アタシ、お母さんに叱られちゃうよぉ」とビクつく。女は「冗談じゃないわっ。私
はそんなオシャベリ女じゃない。あぁあ、その姫君が究極の張形を手に入れて望み
が叶うか、叶わないか、私の胸三寸なのになぁ。なのに他人が文句を付けるワケな
いじゃない」と(ワザと冷たい声で)言ってみた。女の子は(女の空手形に)コロ
ッと引っ掛かり「えぇっ、そぉなんですかぁ。じゃっ、ここに居てください。隠し
てあげます。皆が起きないうちに、さあ、いらして」と(方角でいうと浄土が存在
すると信じられていた)西の妻戸の辺りの、屏風を折り畳み立てかけている所に連
れていった。女は何だか悪いことをしているよぉな気になってゾクゾクして徐々に
興奮してきた。まだ子供の姫君を目当てに潜んで居るのがバレたら、(ロリコンと
か言われて)弁解も出来ないなぁ、(どんな酷いコトされるか解ったもんじゃない
し)とか思いながら、(却って興奮して)指を濡らした。隙間から覗くと十四、五
の少女たちが居る。まだ幼い感じのが十二、三人居る。さっきの童女みたいな女の
子たちも居る。それらが皆で念入りに装飾した小箱に入れたり物の蓋に載せたりし
て張形を捧げ持ちワイワイ行き違いバタバタしている。その中で母屋の簾の処に置
いてある几帳をからげ身を乗り出す人がいる。歳は僅かに十三ぐらいか。前髪が眉
の辺りにかかっている処といい何とも、この世の者とは思えぬほど美しい。藤襲の
織物の袿、紫苑色なんかの上着を重ね着ている。頬杖をついて、いかにも悲しそう。
第3段落
どうしたのかな、可哀相に、と思って見ていると(妹君であろうか)十歳ぐらい
でダブダブの朽葉の狩衣、二藍の指貫を着ている女の子が、同年配の童女に硯箱よ
りは小さめの奇麗な紫檀の箱に入れた幾つかの素晴らしい張形を持ってこさせた。
(その張形を姫君に)見せながら「もう見落としはないと思います。承香殿の御方
などの処へも行って明日のことを申し上げますと、これを下さいました。でも、侍
従の君が言うには、大輔の君は藤壷の女御から、すごく沢山の張形を貰ったそうで、
隙なく取り揃えているようです。(彼女たちは)どぉいぅノでヤッているのかなぁ、
と道すがら考えつつ帰って参りました」と言って、もの凄い張形を想い浮かべたの
だろう、顔をパアァと赤く上気させた。次第に姫君も心細くなって「すごく難しい
けど、あの方でさえも二度と忘れられない張形を手に入れ貝合せに臨みましょう。
だけど、あの方も、さても仰々しく集め回っているものだわね」と仰しゃる。妹君
は「そぉよ、そんなにバカみたいにかき集めやがってさ。母親だって内大臣の母上
にまで頼んで貰って来たとか言ってたわ。それにしても私たちのお母様が生きてて
くだされば、こんな惨めな想いをしなくても済んだのに……」と涙をこぼすほどに
悲しく悔しそうな表情をした。女は(それを見て、あぁ姉妹の心は深く結び付いて
いるのだなぁ、と)イイなぁと思った。そこに例の童女が「東の御方がいらっしゃ
いました。その張形どもを隠して下さい」と言ってきた。そこで建て付けの収納箱
に全部突っ込んだ。姉妹が澄ました顔を取ってつけていると、姫君よりは少し大人
びた感じの東の御方が入ってきた。山吹、紅梅、薄朽葉とセンス悪くコォディネイ
トした上着をモコモコ重ね着している。長く美しい髪、姫君よりはチョッと背が低
い感じ。だいぶ(美しさでは姫君に)見劣りするけど、とても可愛くはあった。
第4段落
「アナタの持ってる張形が見当たらないのは何故(何処に隠しやがったの)。テ
クニックが幼稚なのは解ってるけど、どんな張形でアタシを悦ばせてくれようって
のかしらねぇ。それを想像すると興奮してきちゃうわ。(アタシを満足させるのは
無理だろぉけど)」などと言う表情が、とってもバカにした感じだったので女は、
どうしても姫君の望みを叶え(東の御方に思い知らせて)やろうと、ついつい考え
てしまっていた。姫君は「アタシは他人の所にまで行って集めたりしないけど、ア
ナタはどぉなのかしら(このスケベっ!)」と応えなさった。その(シャンと)座
っている姿が、とても美しかった。(東の御方は気押されしてか、フン何さっ、ど
ぉせココら辺に隠してるんでしょ、って感じで)辺りを見回し、帰って行った。
第5段落
さっきの童女と同年配の女の子が三、四人連れ立って(こともあろうに女の隠れ
ている処に)やってきて、(まるで女に対するかのように)「アタシのお母さんが
常日唱えてる観音経様ぁ、姫君の望みを叶えてあげてください」と(拝んだ)。た
だ、この(観音と言っても洩れ出そうになる)声を忍ばせて掻き広げた“観音”に
向かっている(とも知らず拝んでいる真摯な)女の子たちの顔は、とっても心打つ
モノではあった。さっきの童女が(空手形をうった)女のコトを(藁にもすがる気
持ちで)言い出し(潜んでいるのが暴かれ)はしないか、と女は気が気じゃなかっ
た。だが童女は何も言い出さないで向こうに行ってしまった。(自分が隠れている
ことを知っている童女がいなくなり、途端に気が大きくなった女は)小さな声で、
頑張る甲斐がないと何故嘆くのですか。
貝(甲斐)といえば白波ですが、こうやって姫君の貝を盗もうとしている
泥棒(白波)の私も同情していますよ。
と言うと、さすがに耳ざとく聞き付けて「ねぇ、今の声、聞いた? 誰が言ったの」
「観音様が現れたんじゃない?」「ええっ、うっそぉ、嬉しぃ、姫君に申し上げま
しょう」と一応はハシャイでいるよぉなのだが、(彼女たちには超常現象だと感じ
たのだろうから)恐怖も感じたようで、皆固まって走って行った。イランことをし
て自分の隠れている辺りを捜索されて見付け出されはしないかと、さすがに(女は)
胸苦しくなったが、(結局ソンナことにはならず)単に(以下のやり取りが交わさ
れただけ。)「カクカクシカジカと(観音様に)念じたら仏が出現してカク仰しゃ
いました」と女の子が言う。姫君は頬杖をやめ(顔を上げ)「それって本当、信じ
らんないっ。恐ろしいぐらい(に嬉しいわっ)」と、すごく嬉しそうな声を上げた。
その時、チョッと頬を紅潮させたサマは、とても美しかった。「ねぇねぇ、この天
井から突然、ポトッって(究極の張形が)落ちてきたら(スゴイよねぇ。そうした
ら)本当に仏様の仕業ってことになるよねぇ」などと面白可笑しく言い合っていた。
第6段落
女は早く帰って、どうにか姫君の望みを叶える算段をしようとしたが、明るい昼
間は抜け出すことができず、ボンヤリと屋敷の中(の女の子)を眺め過ごし、夕霧
に紛れて(漸く)出ていった。そして具合よく三曲がりにグネグネしている皮筒に
袖搦のように沢山細い枝が飛び出している棒を骨として通し、小さい玉を隙間なく
詰め込み(人肌にするため)湯を注いだ。(棒を回すと枝が小玉を掻き混ぜること
になり、グリグリと表面が蠢く究極の張形を工夫したのであった。出来上がると、)
私は白波ですから浜で悲しく干上がりそうになっている小貝であるアナタに
打ち寄せ濡らしてあげますよ
と歌を添え、いつも連れ歩いている童女に持たせ、翌日の早朝のうちに姫君の家の
前をウロついていた。すると昨日の童女がパタパタと走り出してきた。
第7段落
女は嬉しげに「さあ究極の張形ですよ。空手形じゃなかったでしょ」と(童女の)
懐から奇麗な小箱を取り出し「誰がしたか解らないように置かせて下さい。さぁて
と、今日の姫君と東の御方の貝合せの場面を見せて貰いたいんだけど。(もし見せ
てくれたら)また、お役に立ちますよ」と(下卑た笑いを浮かべて)言う。童女は
(張形を見て)大変に喜び「昨日の戸口なら、まず人が来ないでしょう」とだけ言
い残し(急いで家の中へ)入っていった。女は(連れの童女に)張形を南の高欄に
置いてこさせ、家の中へと忍び込んだ。コッソリ覗いていると、同じような感じの
女の子が二十人ばかりバタバタと格子を上げたりして朝の準備を始めた。やがて張
形を見付け「あれぇ、ねぇ、誰が置いたの」と騒ぎだした。(そのうち)「こんな
ことをしてくれる人は思い付かないわ。やっぱり昨日、現れた仏が置いてくれたん
だよぉ。あぁナンと感動的なのでしょぉ」ということになって、皆でハシャギだし
た。女は、その異常な光景を見て面白がっていた。
第8段落
待つうちに東の御方がやって来て、姫君の寝室に通された。姫君は、長い間恋慕
っていた相手だけに、抱きしめて頚の辺りに唇を這わせながら十二重さえ愛しげに
一枚一枚ゆっくりと脱がせていった。東の御方は白けた感じで姫君の唇の愛撫を受
けていたが、姫君の明るく美しい眉の辺りに欲情の影が漂い悩ましく曇るのを見て、
ソソられ徐々に興奮して乱れはじめ、指も自然に姫君の、まだ毛も生え揃っていな
い秘丘へと伸び、互いに指を遣う。やがて姫君は苦しげな声で「早く観音の張形を
(持ってきて)」と言った。控えていた童女が差し出した。
第9段落
姫君は、まず張形を舐め湿し東の御方の“濡れ口”へとユックリ挿入していった。
東の御方は挿入されながら平然として姫君を抱きしめただけだったが、これは、ど
う考えたって普通ではない(ぐらいに東の御方は慣れきっているのであろう)。姫
君は張形の骨を回した。骨の枝が小玉を混ぜ起こし三曲がりの張形は、まるで魂を
吹き込まれ生き物のようにクネリ始めた。東の御方は死ぬほどに苦しげにジタバタ
と乱れ騒いだ。姫君も喜んで、
筒井筒という歌があるけど、 私も幼い頃からアナタを慕っていました。
だけどアナタは靡いて下さらず、私はポッカリ開いた井筒に
アナタを想い浮かべながら、自ら慰めていたのですよ。
と歌を詠んだ。東の御方もイク寸前に、
今までツルんできた大輔の君とか侍従の君とかとは別れましょう。
観音様が体の中で踊りクネリ、私は昇天してしまいそうです。
と返歌した。
第10段落
女は姫君たちの乱れるサマを覗き見て屏風の陰で自慰をしていたが興奮し我慢で
きなくなって飛び出した。「どぉして、ここに男がいるのっ」と姫君は慌てて騒ご
うとした。女が覆い被さり右の腿を姫君の脚に割り入れ股間を押し付け「薄情なコ
ト言わないで。私が観音の張形を上げたのよ。(その私のことを)気に懸けてくれ
るなら、サセてよ」と言い左手で姫君の口を塞ぎ(股間を)ひたすら愛撫した。や
がて女の真心(=欲望)が仏に通じたのであろうか、抵抗していた姫君も女に自分
から抱き付き乱れていった。姫君がイキそうになった処で女はスッと体を離し(今
度は姫君の)股に顔を近づけていった。姫君は顔を覆って「あぁ恥ずかしい。アタ
シは貝が自分に付いてるのが嫌で(それが思い知らされるから)男とは寝なかった
の。艶っぽい女をネコにして愛したかったの。だから自分が女であることを忘れて
(男になりたくて究極の)張形を求めてきたのに」と仰しゃった。女は、
まだ成熟していない貝は淡いピンク色の桜のよう。
この桜は、まだ咲いてないだけあって自分の美しさを解っていないようだけど。
と歌を詠むと舌人形を始める。姫も喘ぎながら、
桜より先に咲き色も濃い梅は今が満開。
その梅の傍らに菊も咲いている。ともに揺らめき、千鳥を誘っている。
と返歌しムシャブリ付き、流れ出る蜜を啜った。やがて苦しそうな声で「早く観音
様の奇跡を」と狂おしく求めてきた。しかし女は「本当の千鳥は、(男の代用品で
ある)張形なんかに頼らないのよ。性ってリッシンベン(心)に生きるって書くで
しょ。心が篭ってないで、どぉしてヨかったりすると思う(張形なんか使わずに心
を込めてヤッてあげる)」と言うと右手を股に差し入れ左手を乳房にあてがい、ゆ
っくりと執拗な愛撫を繰り返した。姫君は苦しそうな声を洩らしていたが、暫くし
て昇天した。女は夜が更けるまで姫君を責め立てたので、そのうちに東の御方も目
を覚まし、姫君が大層乱れているのにソソられて、女に擦り寄り求めていった。女
は右手で姫君を左手で東の御方をイカセ続け、東の空が白んでくるころ、やっと止
めた。女は二人の姫の上に身を重ねていたが、東の御方に次の歌を詠み与えた。
この子 ネコの子 この子ネコのネコ (終わり)