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★タイトル (GSA ) 98/ 6/21 1:33 ( 51)
三宮晴樹とその友人達(46) ハロルド
★内容
晴樹と善三と譲治と郁太郎は、仏世界杯での日本対クロアチア戦のことを話題に
していた。但し日本が今回も負けたということでアルゼンチンの時ほどの盛り上が
りはなかった。
「決勝トーナメント出場は無理かなあ」晴樹が落胆しながら言った。
他の三人は暫し黙っていたが、やがて郁太郎が口を開いた。「クロアチア戦での
敗因を冷静に分析すれば出れる可能性はあるよ」
「でも日本は何が悪かったっていうの?」善三が言った。「ラモスさんが言ってた
みたいに意識が低いなんて言うんじゃないだろうね。あの『ヨーロッパのブラジル』
クロアチア相手にあれだけやったじゃない。城といいゴンちゃんといい、惜しいと
こまでは行ってるんだよ。シュケルが少ないシュートのチャンスをたまたまものに
したんだから運が悪いとしか言い様がないよ」
「そうじゃない」郁太郎が言った。「問題は日本のテレビ番組にあるんだよ」
「テレビ番組?」
<また何か馬鹿なこと言うぞ>晴樹は思った。
「CX系列の番組で、対戦相手のクロアチアの選手が戦火を逃れて世界で活躍する
ドキュメンタリー番組を特集してたよね」
「ああ」
「あれはかなり感動的な番組だった。敵チームと日本とはサッカーに対して背負っ
ているものが違うということを思い知らされた番組だった」
「それは確かにあるな」譲治が言った。
「しかし情けは無用だった。フランスのテレビ局はイラン出場期間中に、サリー・
フィールド扮するイラン人の奥さんがイラン国境を脱出する映画を放映してるんだ
よ。やり方は悪いけどここまで卑怯に撤しなきゃ駄目なんだよ」
「あ、俺、用事思い出した」晴樹はその場を去ろうとした。
「ちょっと待て!」郁太郎は叫んだ。そして善三と譲治に指示した。「三宮を押さ
えろ!」
善三と譲治は、逃げだそうとする晴樹を両脇から押さえた。
「離せー! 何の真似だー!」
「三宮君。確か君はテレビ局にコネがあるよね」
「そんなものはない! ポスプロでバイトしてるだけだ!」晴樹はもがき苦しみな
がら言った。
「そこで映画でもドキュメンタリーでも何でもいいから、次のジャマイカ戦までに
ジャマイカをイメージダウンさせるような番組を放映させるんだよ。そして日本が
ジャマイカに勝った後でジャマイカのイメージアップになるような番組を放送すれ
ば、ジャマイカが勝って日本は決勝トーナメントに進出する可能性が出てくるって
わけだよ」
「当然やってくれるよな。日本の為だもんな」譲治が晴樹の耳元で囁いた。
「・・・・なんてことを言われたわけなんですよ」晴樹はエースプロダクションの
事務室にて、先日クラスメートのとの間で起こった話を、川瀬と川井に打ち明けて
いた。「よくまあテレビ番組でワールドカップの勝敗を左右しようなんて馬鹿なこ
とを考えられるもんですよねえ」
晴樹は、川瀬と川井の賛同を得ようとして、笑い出した。しかし二人は晴樹の話
に真剣に耳を傾けていただけだった。
「どう思う?」川瀬ディレクターはADの川井に尋ねた。
「盲点でしたね」ADは言った。
「すぐ企画書作って。私、編成との打ち合わせセッティングするから。時間ないわ
よ!」
二人は晴樹をその場に残して仕事にかかりだした。
<どいつもこいつも!>晴樹は嘆いた。
(98/06/20)