AWC 推理小説的読書法「魔術師」6   永山


        
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★タイトル (AZA     )  96/12/ 7  21:45  (200)
推理小説的読書法「魔術師」6   永山
★内容
 誠治の指摘は、伊集院の期待の上をいっていた。これほどにまで推理力のある
            ↑                 ↑
  何を期待したんですか?         大した推理ではない。むしろ
                     何の根拠もないのにこんなこと
                     を言い出すのはおかしい
作家がいるだろうかと、伊集院は考えた。
「カギの束は見つかりますかね……」
 慎治がそう言うと、
「机の引き出しとかを探せば……」
 誠治がそう言って、近くにあった引き出しを開けた。そして、
「ほら、今いった通り出てきましたよ、ねっ」
 政治は自慢そうに言った。
 ↑「誠治」の誤変換?
 伊集院はそのカギの束を借りると、次に慎治の父である幸助の部屋に向かった。
2人も伊集院のあとをついて部屋を出た。
 伊集院は今度は、部屋をノックをするのを省いて、カギの束から一本ずつかぎ
穴に差し込んでいった。4本目辺りでやっと部屋のドアが開いた。
「お父さん」
 慎治はそう言って部屋に駆け込んだ。そして、
「なっ、なんて事だ、どうして父さんまでが……」
 慎治の嘆く声が廊下の方まで聞こえてきた。伊集院たちはそれを聞いてから少
し部屋に入るのを遅らせた。これが人の情けと言うものなのかと、伊集院は思い
ながら待っていた。
 慎治の嘆きが収まったのを見極めてから2人は入っていった。そして、伊集院
はすぐに幸助の死体を調べた。
 死体のとなりには「絵」が飾られており、その「絵」の通りに死体が飾られて
いた。正座で床に座っている死体は辺り一面に自らの血を振りまいていて、一面
赤い花畑のようになっていた。
 血の生々しい匂いが漂っていて、誠治が窓を開けても匂いは外へは出ていかな
かった。
 「絵」の中は正座をしている男性が舌を切られて死んでいる絵だった。
 伊集院は幸助の口を指でこじ開けた。すると、口の中からどす黒い血があふれ
出してきた。それだけではなく、切られた「舌」の一部が、床へと落ちていった
のである。

 伊集院は腹の中からあふれ出す吐き気に耐えながら死体の足元にある紙を手に
とって読んだ。
 ***************************
 悪人は 閻魔の餌食になるべきだ それを私が買って出て
 悪を成敗し続ける 我は赤い魔術師なり
 目立つ衣服をまとっても 誰も捕らえることできぬ
 時の死こそは我ではなく 我の偽物の仕業なり
 ***************************
 その紙にはそう書かれていた。時夫の死が別の死であることは伊集院にも分か
っていた。だが、未だとして誰が犯人かは分からない。
 伊集院はそれを読み終わると「絵」をもう一度見た。微かにだが、一度動かさ
れた様子があった。壁が日焼けをしていたためか、色の違う部分が出ていたので
ある。
 その絵にも血が飛び散っていたがその飛び散り方が、伊集院には妙に引っかか
ったのだった。壁に飛んでいるものの飛び散り方と、違う飛び方をしている血が
あったのである。
「皆さんを起こして、ロビーに集まってもらってください」
 伊集院がそう言うと誠治が「分かりました」と言って部屋を出ていった。伊集
院の方が年下なのだが、なぜか言う事を聞いていた。
「慎治君。ロビーに行こうか」
 伊集院が慎治に言う。
「えぇ、取り乱してしまってすみません。もう平気ですから」
 慎治はそう答えた。
 伊集院は慎治と一緒に部屋を出て、ロビーへと歩いていった。そして、慎治を
ロビーに座らせると、伊集院は2つの現場へと舞い戻った。
 まず、幸助の部屋に行き、壁にかかっていた「絵」を取り外し部屋を出た。そ
して、第1の現場だと伊集院が断定した時夫の部屋にその「絵」を持っていった。
「これをこの壁にかけて……。やっぱりだ、この絵は始めここにあったんだ……」
                        ↑「初め」では?
 伊集院はその「絵」をかけたまま、ある部屋へと行った。廊下では誰にも合わ
なかったし、ロビーも通らなかった。伊集院は誰にも見られずにその部屋に行き
たかったのである。伊集院は自分が持っているカギの束で、その部屋の扉を開け
た。中はどの部屋も同じ造りであるなぁと、伊集院は思いながら「ある物」を探
した。
 一つ一つ丁寧に部屋のあらゆる場所を探していった。そして、やっとお目当て
の物を発見した。
 伊集院はそれを開けて中のあの場所に目をやった。
「やっぱりか、でも、どうしてこいつが……。それに、後から書き加えた部分が
ある……。うん? どういうことだこれは! もしかして、偽物とは……」
 そこには、時夫と和巳の名前が書き足されていた。
 伊集院はそう呟くと、急いでそれを書き写し部屋を出て、ロビーに向かった。


              9

「またしても、この中で殺人事件が起こりました。今度の被害者は時夫さんと幸
助さんです。幸助さんの方には「絵」と「置き手紙」がありました。が、時夫さ
んの方には何もなかったのです。死因は、私が見る限り出血死であると思います」
 伊集院は集まった皆にそう言った。和巳と慎治はまだ、少し泣いていた。それ
だけではなく、理津子も何が何だか分からないと言うように錯乱していた。
 萌はまだ事を理解できないらしく、ボーッとしていた。
「私がまた見た方がよろしいんでしょうか?」
 陽子が重たい空気の中でそう言った。
「えぇ、できれば……」
「分かりました。後ほど見ることにしましょう。それに、詳しいことをもっと教
えていただきたいわね」
「わかりました」
 伊集院はそう言うと、皆にもっと詳しい説明をした。
 日も大分高い所まで上がっていた。鳥たちが群れを成して青い大空を飛んでい
く。3日前のいまわしきつり橋墜落事故から、色々な出来事が短期間の内に起こ
ってきた。赤い魔術師が誰か、これが一番の謎である。それだけではなく、何故
殺されたのかも謎である。
 室内は暗く鈍よりとしていた。誰一人てして話さない。伊集院の声だけが、だ
      ↑「どんより」では?
だっ広いロビーに響き渡る。その声は事の重大さを物語っているように低くはっ
きりとしていた。
 話していてふとこの部屋に変化があるのに伊集院は気づいた。それと同時にあ
の場所は何のためにあるのかの検討を始めた。伊集院は話し終えると玄関を出て
↑「あの場所」って何を示しているのでしょう?
建物の裏側へと歩いていった。そして、高さが1階分であまり広くなさそうな小
さな立方体の白い建物を見つけた。それは暖炉のあった場所の丁度裏側に当たる
                   ↑どの部屋の暖炉なんですか?
所にあった。しかし入り口らしきものは何処にもなく、窓すらなかった。伊集院
はそれを確かめると室内へと戻っていった。
「どうしたんです、伊集院さん」
 幸夫が聞く。
「いえ、ちょっと気になることがありまして……。でも何もありませんでした。
ただの勘違いでしょう」
「そうですか……。それと、家内が現場の検索をしましょうかって言ってました
                   ↑せめて「捜索」がいいと思います
が?」
「そうですか。では、5分後に食堂にいらっしゃってくださいとお伝え下さい」
「分かりました」
 幸夫はそう言うと階段を上っていった。ロビーにはもう誰もいない。伊集院は
それを確認すると暖炉へと近づいていった。そして、隅々まで偵察した。暖炉の
                「観察」がいいと思います↑
奥の壁が、少しばかりだが、ずれているように思えたからである。
「伊集院さん? 何をしているのですか?」
 伊集院が振り返ると西側の建物から燐子が歩いてきた。
「ちょっと捜し物を……。燐子ちゃんは何をしにきたの?」
「私は、おなかがすいたから何かもらおうと思って、食堂に行くんです」
「そうなのか、何なら僕も一緒に行こうかなぁ、丁度用事もあることだし」
 伊集院はそう言った。
「いいですわ、一緒に行きましょう!」
 燐子はそう言うと伊集院の袖をつかんで引っ張っていった。
 食堂に着くまで、伊集院と燐子は、ごく普通の世間話をしていた。そして、食
堂に着くと伊集院は奥に入っていって、何か作ってくれるように頼んだ。
 すると、陽子が一番奥のドアを開けて中に入ってきた。
「ありがとうございます。忙しい所を」
 伊集院は陽子に向かってそう言った。
「いいえ、丁度退屈していましたから。あれ、燐子ちゃんだったっけ、何しにき
       ↑殺人事件が連続しているのに、退屈も何もないでしょう?
たの?」
「おなかすいちゃって」
「そうなの、それは大変だわ。何か頼んだの?」
「えぇ、僕がさっき頼んでおきました」
「じゃぁ、おばちゃんたちはお仕事があるから、ゆっくり食べててね」
 陽子がそう言うと燐子は「うん」と頷いた。そして、伊集院と陽子は食堂を出
て、現場へと向かった。
「まず、僕の検討でいくと、この時夫さんの部屋が第1の現場だと思うのです」
 伊集院はそう言って時夫の部屋のドアを開けて中に入っていった。陽子もその
後に続いて中に入っていく。
「まず、死因は出血し。で、この絵は何なの?」
         ↑「死」ですよね
 陽子が検死をしながら言う。
「これは僕が幸助さんの部屋から持ってきたものです。ちょっと引っかかること
があったので持ってきておいたんです。いいですか、まず、この血の飛び方を見
てください」
 伊集院はそう言うと、「絵」の中に飛び散っている血を指さした。そして、今
度は壁にかかっている血を指さした。
「これは不思議。血の吹き方が一致しているわね。て、言うことは、この「絵」
はここのもの?」
「いいえ、この「絵」は第2の現場である幸助さんの部屋のものです」
 伊集院はそう言って、陽子を第2の現場へと連れていった。
「これを見てください。まず、この壁の部分だけ色が濃いでしょう。周りが日に
よって焼けていたんです」
 伊集院はそう言って、時夫の部屋から持ってきた「絵」をつけたりはずしたり
して見せた。
「本当だわ。ちよっと伊集院さん。その絵をあった通りに壁にかけて下さい」
「わかりました」
 伊集院は言われた通りに壁にかけた。ちゃんとあった通りにずらして。
「この血の吹き方も一致しているわね。それに、影になっている部分も一致する
し、この死体の死因もやっぱり出血死ね。で、伊集院さん。ずれているけど、あ
       ↑今回はどうして死亡推定時刻を言わないのでしょう?
なたが合うようにずらしたの?」
「いいえ、これが僕のさっき言った「絵」の移動の証拠ですよ。このずれがなか
った「絵」を付け替えたりしたなんて分かりませんでしたからね」
 伊集院はそう言って部屋を出た。
「ありがとうございました。本当に」
「いえ、こちらこそ、楽しい推理を聞かせていただいて」
 陽子はそう言って少し笑った。伊集院もごまかすように笑って見せた。
 陽子はその後、すぐに部屋に戻っていった。伊集院は自分の部屋に戻って行く
ことにして、廊下を歩き始めた。
 その日の午後、何も起こらずに1日が過ぎていこうとしていた。僕は和巳に今
                突然、一人称描写になっている↑
日の夜は自分の部屋からでないようにと言って和巳の部屋を出た。
 伊集院は部屋を出ると誰にも気づかれないようにロビーへと降りていった。そ
して、腕時計を見て、時間を確認した。
「8時45分か……」
 伊集院はそう呟くと、暖炉の中で見つけた隠し通路に入っていった。
                    ↑
  手がかりの提示が遅い。読者は壁がずれていたとしか知らされていない


              10

 中は暗かった。当たり前の話である。伊集院はライターをポケットから出して
火をつけた。伊集院のいるすぐ右に小さなボタンがあった。伊集院はそのボタン
を左手で押した。
 辺りが急に眩しくなった。まるで部屋から外に出たときの太陽光線のような明
るさである。伊集院はライターの火を消して手で目を隠した。そして、ゆっくり
と目の前に置いた手を退かしていった。
 そのボタンはこの中の電気のスイッチだった。辺りには裸電球が等間隔に天井
に吊されていた。伊集院はこの道が何処につながっているのかを確かめるために
前へ進んだ。




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