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★タイトル (AZA ) 96/12/ 7 21:42 (199)
推理小説的読書法「魔術師」5 永山
★内容
「丁度いいときにあの事件が起きた。これを使って復讐するのが、一番怪しまれ
ないはずだ。後は、証拠を残さずに、慎重にやれば……」
私は何回も言葉に出していった。それは、自分に勇気づけるための儀式のよう
なものでもあった。
自分の部屋から出てきてから10分ほど経っていた。昼間ならばこんなに時間
はかからないのだが、夜ということと、慎重になっていたせいからか、こんなに
時間が経ってしまったのだろうと、私は考えた。
ポケットの中からカギの束を、音を立てないように出した。どれだけ音を立て
ずに取り出そうとしても、少しの音は出てしまうものである。取り出したカギを
かぎ穴に、気づかれないように入れ、音を立てずに回し、カギを外した。
私はドアを開け、部屋の中に入っていった。部屋の中は廊下と変わらないくら
いの暗さである。そのお陰で、何処で寝ているのか、何処に何があるのかが分か
らなかった。窓からの月明かりが、カーテンか何かのせいで、部屋の中に入って
こなかった。
私は部屋の中に入ると、ドアにカギをかけた。外からの邪魔者を部屋の中に入
れないためである。そして、自分の獲物を探すために一歩一歩歩いていった。
20歩ほど歩いただろうか、私はやっとのことで獲物を発見した。獲物は深い
眠りについているのだろうか、いびきをかきながら寝ている。私が側に居ても気
づかないほどである。
カギの入っていたポケットとは反対側のポケットから、やや太いロープを出し、
獲物の首下を通した。そのような動作を行っても起きるような気配は感じられず、
↑「首下に」の方が分かり易いのでは
自分の思う通りの作業が短時間で出来た。
私は獲物を殺す前に部屋のセッティングをした。他の部屋から持ってきた「壁
画」を壁にかけ、自分の持っていた白い紙を雑に切り文を書く。赤いインクのペ
↑「壁画」は壁に直接描かれた絵であって、動かせないのが普通です。ここは
「絵画」ではないでしょうか
ンで白い紙を染めていく。
その作業が終わると、私はしばしの休憩をとった。時間は午前3時を少しまわ
↑犯行の前にのんびりしすぎ
った頃。処刑をする前の一服を窓の外を見ながらしていた。すると、何処の部屋
だかは分からないが、一ケ所だけ明かりが点っていた。私は、急いでカーテンを
閉め処刑台へと急いだ。
「さらば、我が餌食よ」
↑「獲物」の方がいいと思います
私はそう呟いて、ロープに力を入れた。獲物は目を「カッ」と見開いて、のど
元へと手を伸ばした。声も出ず、ただ、手足をばたばたとさせている。のど元に
は、無数のかき傷が見える。私は最後の最後まで力を入れ、獲物の全身の力が無
くなるので首を閉めた。獲物の抵抗していた手足が、力尽きてベッドへと落ちる。
私はそれを確認すると、ロープから手を離した。
屍となった獲物を、化粧台としてセッティングした場所へと運ぶ。そして、タ
オルに包んであったナイフで屍の体に無数の刺し傷をつくった。まだ死んだばか
りで、血が私へとかかってくる。生温かく、ベトベトしている。私は「壁画」を
見ながら、屍を芸術作品へと仕上げていく。
3時半。私は最後の仕上げをすると、部屋にあるシャワー室で返り血を浴びた
体を洗った。着替えの服も持ってきている。血を洗い流した私は、静かに部屋を
↑のんびりしすぎ
出て、カギをかけた。そして、誰にも見つからずに部屋へと戻り、軽い睡眠に入
った。
屍となった獲物の部屋に赤いマントをまとった人物がドアを開けずに入ってき
た。そのものは壁にかかっている絵を取り外し、また、部屋から消えていった。
↑この段落だけ描写する視点が変わっている
8
朝が来た。これは日本の中なら当たり前のことである。白夜などと呼ばれるも
のもあるが、ここ日本では絶対に見られない。
いつも通りの鳥の声に太陽の強い光、涼しい風、おいしい空気と、体をリラッ
クスさせるものがここには色々詰まっていた。
伊集院は昨日の夜、熟睡することが出来なかった。夜中、何度となく起きて全
く寝た気がしなかった。伊集院のとなりには、いつの間にか和巳が来ていて、可
これだけ事件が起こって、伊集院は部屋に鍵をかけていないのですか?↑
愛い寝顔で寝ている。
置き時計に目をやると午前10時を示していた。
「大分寝たなぁー」
と、寝た気になれないのに言って、ベッドを出た。
和は隣でぐっすりと寝ていて、伊集院が居なくなったのにも気づいていなかっ
↑「和巳」の「巳」が抜けている
た。伊集院はタオルと着替えをもって部屋を出た。目指すは風呂場である。自
↑気付いていないかどうかは和巳にしか分からない。この段落、伊集院の視点
と和巳の視点とが入り乱れています
分の部屋にもあるのだが、せっかく大きな浴槽があるのならと部屋では入らず、
1階にある風呂場へと出向くのである。
風呂場は湯気で何も見えなくなっていた。ドアを開けると中からは、暖かい空
気が流れてくる。廊下では誰にも合わなかったが風呂場には誰かがいるようであ
る。伊集院は服を脱ぎ中へと入っていく。案の定、中には誠治がいた。浴槽の中
で頭にタオルをのせていた。伊集院は体を流すと浴槽の中へと入っていき、誠治
のとなりに座った。
「これはこれは、お早いですね」
「えぇ、なかなかいい案が出ないものでして、頭の中をリフレッシュするために、
こうしてつかっているのですよ」
「そうですか、締め切りが近いんですか?」
伊集院と誠治がそう話初めてから、何分が経ったかは分からなかったが、突然
↑「話し始めて」とすべきだと思います
外から大声をあげて風呂場に入ってきたものがいた。その声は、慎治のようであ
った。伊集院は浴槽の中から外にいる人物に話しかけた。
「どうしたんですか?」
「伊集院さんですか? 慎治です。いや、父の姿が見られないのです。部屋には
「見えない」の方が適切だと思います↑
カギがかかっていて、外からどれだけ呼んでも返事がないんですよ。それで、時
夫さんに合いカギを借りようと思って部屋に尋ねたのですが、時夫さんも部屋に
いないんです」
伊集院と誠一は、慎治の話を聞くと急いで浴槽を出た。そして置いてあったタ
↑誰ですか? 「誠治」のタイプミス?
オルで体をふき、服に着替えて風呂場を出た。外では慎治が立っていて、二人に
事の説明を詳しくした。
話を聞いた伊集院は、急いで自分の部屋へと帰っていった。
伊集院は部屋につくと、寝ていた和巳を起こし、時夫の部屋に走っていった。
時夫の部屋の前につくと、そこには誠治と慎治がいた。
その他にはまだ、誰も起きていないのか、起きてはいるが部屋から出ていない
のか分からないが、4人は誰にも合わずにここまできた。
↑「会わずに」だと思います
廊下は静まり返っていた。しんとしていて、この家の中には、誰もいないので
はないかと思わせるほどの静けさである。
「どうするんだ?」
誠治が伊集院に聞く。
「ドアを蹴り破るしかないんじゃありませんか?」
伊集院は和巳の顔を見ながら答えた。
「おじさんの部屋のカギなら確か、食堂にあるはずよ」
和美が伊集院の期待にこたえた。
↑「和巳」に直っていない
「本当ですか、その話」
慎治が後ろから言う。
「えぇ、とりあえず、見に行ってみません。カギがあるかないかを」
和巳がそう言うと、ほかの3人は、首を立てに動かし、和美のあとについてい
「縦に」の誤変換?↑ ↑直っていない
った。
伊集院はその間に、何が起こったのかを整理していた。時夫はどうなったのか、
そして、幸助は何処へ行ったのか、部屋で寝ているのかなど、色々なことが浮か
んでは消えていった。
そう考えているうちに、目的地である食堂へとついた。伊集院は考えるのをや
め、今ある現実へと視点を変えた。
和巳は食堂に入っていくと、色々な所をくまなく探していた。食器棚を調べた
り、壁掛けの中を探したりと、一人でせっせと探していた。その間伊集院は、さ
っきの妄想の世界へと旅立っていた。残りの二人は何か話していたが、伊集院の
↑「空想」でいいと思います
耳には入っていない。
和巳が3人のもとへ帰ってきたのは20分ほど経ってからだった。手には一つ
のカギを持っていた。息は少し切れていて、額に少し汗をかいていた。
「あったわよ」
「ありがとう。和巳さん。伊集院さん、部屋に行きましょう」
誠治が言う。伊集院はその声にも反応しなかった。
「伊集院さん? 聞いています。カギがありましたよ」
「はっ、ありましたか、分かりました、部屋へ急ぎましょう」
伊集院はそう言うと、時夫の部屋へと歩いていった。
3人はその後をついて歩き出した。和巳はカギをポケットにしまうと、まず前
を歩く伊集院のとなりに走っていった。誠治と慎治は先ほどの話の続きをし始め
ていた。
陽も大分高くなっていた。外は昨日に引き続き晴れ晴れとしていて、眩しいほ
どの太陽光線が降り注がれている。鳥たちがこの大空を気持ち良さそうに羽ばた
いていく。大きな羽をピンと伸ばし、風を受け止めている。小さい羽根を持つ鳥
達は、その羽根を精一杯伸ばし風に乗っていた。青々と茂る樹々達は、たまに吹
く風に揺らされながら暖かい日の光を体で受け止めていた。
この家の廊下にもそんな陽の光が窓から入ってくる。日の光にホコリが当たり、
白い線を描き出していた。
4人は時夫の部屋まで静かに歩いていった。他の誰にも気づかれないような足
音しか出さないようにして。
時夫の部屋まであと少しと言う所で伊集院は前に一度見たことのある紙がある
のに気づいた。その紙は、食堂へ行くときには見なかったもので誰かが置いたも
のだと言うことは分かっていた。
伊集院はその紙を拾い、裏返してみた。
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偽物が 赤い服着た偽物が 己の恨み晴らすため
人を殺しに旅立った 我は本物 赤服の魔術師が
偽物処刑に旅立った 時の流れは終わりを告げ
助けのいらぬ幸せも 何処かと奥に消えていく
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伊集院はその紙を捨てると、時夫の部屋へと走り出した。3人はその跡を必死
↑捨てなくてもいいのでは
についてきた。3人は何があったのかまだ気づいていなかった。
「時夫さん。時夫さん」
伊集院はドアを「ドンドン」と叩きながら言った。そして、反応がないことを
確かめるとスペアキーを使ってドアを開けた。
「誰も中には入らないで下さい」
伊集院はそういうと、自分だけ中に入り部屋のドアを閉めた。
↑何の権限があってそんなことを命令できるのでしょうか
伊集院は部屋に入るとまず、寝室を見た。乱れているとは言えないが、誰かが
寝ていた形跡があった。そして、その場所に触れると、いくらか温もりがあった。
「どこに行ったんだ時夫さんは?」
伊集院はそう言うと次の部屋を空けた。そこには想像もすることのできないも
のがあった。
体全体の力が抜けていて、首は右斜め下に傾いていた。そして十字架に張りつ
けられたように壁に付けられていた。それだけではなく、口からは赤い血を流し
出していて、左肩から右腹部に渡って大きな切り傷があり、そこから大量の血が
流れ出していた。
伊集院はすぐさま「絵」があるかを確かめた。が、「絵」などは何処にもなく、
また、置き手紙もなかった。そして、部屋のドアを開けて、外に待たせた3人を
中に入れた。
「時夫さんは殺されていました。ただ、変なことに「絵」がないんです。そして、
↑何が変なのでしょうか?
あの赤い魔術師も」
伊集院は3人にそう言った。3人は何があったのか始めは分からないようだっ
↑「初め」では?
たが、伊集院が殺害現場を見せると皆、納得がいったという顔になった。
「誰がおじさんを殺したの。ねぇ、誰が……、誰が、殺したの……」
和巳がそう言いながら泣きだした。
伊集院はそんな和巳の肩を軽く支えて廊下へと出ていった。そして、和巳の部
屋へと連れていった。
「ねぇ、どうして、どうして……」
和巳が伊集院の胸の中で泣いていった。伊集院はそんな和巳をただ、抱いてい
ることしかできなかった。そして、和巳をベッドに寝かせると、部屋を出て現場
へと向かった。
「何かありましたか?」
伊集院は中にいる2人言いながら部屋に入っていった。
「いや何も。ただ、始めの事件とは全くの別人である可能性が高いということだ
↑「初め」では?
けですね」