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★タイトル (AZA ) 96/12/ 7 21:48 (200)
推理小説的読書法「魔術師」7 永山
★内容
入り口からすぐに下へと降りる階段、いや、梯子があった。伊集院は落ちない
ように梯子を降り、前へと進んだ。丁度さっきの暖炉からあの窓のない部屋との
距離を歩いたあたりで、今度は昇りの梯子を見つけた。
伊集院はその梯子を上っていった。一番上まで上ると大きな空間があった。が、
暗くて何も見えなかった。ライターの火の光で電源を探し、つけた。
そこはまさに、さっき外から見た窓のない空間だった。そこには何も置かれて
なく、ただ下へ降りていく梯子が2本あるだけだった。今、伊集院が昇ってきた
近くにライターが落ちていた。何処にでもあるようなジッポである。裏面には、
KOと彫られていた。
伊集院は今上ってきたのとは別の梯子を降りていった。梯子の近くにはスイッ
チがあり、それを押すと梯子の中の電気がついた。
その梯子はとても長かった。距離的に言うと、つり橋から下までの距離に等し
いのではないかと、伊集院は思った。梯子の中という表現はおかしいが、梯子が
ある空間は人が2人入ると一杯になるほど狭かった。それだけではなく、下に降
りて行けば行くほど気温が下がっていった。
普通、山などを登るときは登れば登ほど気温は下がっていくのに、ここの場合
は下がれば下がるほど気温が下がっていくのである。
降りはじめて10分近く経って、ようやく一番下に着いた。下に着くと今度は
横道が延々と続いていた。伊集院は頭の中で外のどの辺りを今歩いているかと言
うことを考えながら歩いた。
歩き始めて20分が過ぎた。場所的にはあの建物から直線的につり橋の辺りに
出て、つり橋を渡り終えた辺りにいることとなる。
そこから1、2分歩くと、石段の階段が現れた。伊集院はその石段の階段を上
↑「石の階段」でいいと思います
っていった。その石段は何重もの螺旋を描きながら天へと昇っていた。伊集院は
半ば、目が回っていたが、何処に出るのかを確かめるという強い意志に助けられ
ながら、暖炉の中に入ってから50分後に地上にへと出た。
↑「に」不要
綺麗な星が夜空一杯に輝いていた。月も欠けてはいるがその明るさを星達に見
せつけていた。崖を挟んだ向こう側には、こうこうと明かりがついている「紅館」
があった。
伊集院は来た道を休むヒマも惜しんで帰っていった。時間は9時35分。暖炉
の前に出たのはそれから45分後だった。
伊集院は「紅館」に戻ると自分の部屋に戻った。そして、シャワーを浴び、和
巳の部屋へと行った。そして、赤い魔術師への罠を仕掛けた。
11時37分。魔術師は突如となくこの「紅館」に現れた。ロビーの前に仁王
立ちをして、大きなシャンデリアを眺めていた。赤い服をまとった魔術師は、ロ
ビーの横にある階段をゆっくりとした足取りで登っていった。廊下はもちろん、
何処の部屋からも声など聞こえてこなかった。ただ、廊下を歩く魔術師の足音だ
けが、静かに鳴り響いていた。
この3日間の中で一番星が綺麗な夜だった。月もそれに負けずと綺麗に輝いて
いる。風は全くといっていいほど吹いておらず、樹々もゆっくりと眠っていた。
魔術師は2階の廊下を歩いていた。何かを狙っているかのように歩いて部屋の
前を通過していった。廊下の突き当たりにある階段をめざし歩き続け、また、そ
の階段を昇っていった。
ピチャッ、ピチャッ。
そんな音が聞こえてきた。風呂場か何処かで水が出ていたのだろう。栓をきち
んと閉めていないせいか、一滴一滴落ちる音が聞こえる。魔術師はそんな音にも
耳を向けず、ただ、階段を昇っていった。
3階に着いたその者は、突き当たりの部屋を目指して歩いていた。服を引きず
る音が今度は聞こえてきた。赤い服にはこれまでの勲章たる「血」がついている。
まさに、死に神のような人物である。
その部屋は和巳の部屋だった。その者は部屋の前に立つと、何処からともなく
カギを出し、音を立てずにかぎ穴に入れた。そして、かかっているカギをはずし
中に入っていった。
中にはいたその者は懐から刃物を出すと、ベッドめがけて飛び込んだ。そして、
↑「入った」のタイプミス?
何も確かめる事なくめった刺しにした。ベッドにいる者は何の一言もあげず、た
だ刺されていた。見るも無残な刺され方である。
正気を取り戻したその者は刺すことをやめ布団を剥いだ。
その時である。消していた部屋の電気がつき、伊集院の声が聞こえてきたので
ある。
「そこまでです、誠治さん。あなたの復讐は、もう終わったはずです」と。
魔術師こと沖田誠治は、伊集院を狙ってベッドから起き上がった。周りで待機
していた慎治や隼人達が、その暴れ狂う体を押さえた。そして、凶器である刃物
を取り上げた。
「もうやめませんか、いい加減」
伊集院が言う。
「君がこの殺人の犯人だったのか」
隼人がつけ加えていった。
「私が犯人だって。私はただ、ここの女を殺しに来ただけじゃないか。私があの
紙に書かれた赤い魔術師なら、証拠を見せてみろ」
「分かりましたよ、誠治さん。そこまで言うのなら。皆さんを集めてロビーで謎
解きでもしましょうか」
伊集院はそう言ってロビーへと歩いていった。皆が集まるのは早かった。そし
て、
「では、この「紅館」で起こった3つの殺人事件と1つの殺人未遂についての謎
解きを始めましょう」
伊集院はそう言って椅子から立ち上がった。
「まず、犯人からズバリ言いましょう。赤い魔術師は、誠治さんあなたです。と、
言っても、誰にも信じてもらえないでしょうから、事の起こった順に1つ1つ説
明していきましょう」
伊集院はそう言いながら、皆の座っている椅子の後ろを歩きながら言った。
「まず、最初に起こったつり橋墜落事件。あれは用意周到な計画でした。つり橋
のこちら側には、刃物で切り込みが入れられており、向こう岸にも、同じように
切れ込みが入っていました。これが第1の準備でした。
次に、誠治さんは、いや、ここではまだ、犯人と言っておきましょう。犯人は
第2の準備として「あの悪戯の手紙」を連条さんに見せたのです。犯人は、連条
さんがすぐカッとなることを巧みに利用したのでしょう。何故そのことを知って
いたのか? それについては後で説明します。かくして。計画通りに車でつり橋
を渡り、重さに耐えきれなくて、谷底に落ちたのです」
伊集院がそこまで言うと、慎治が尋ねた。
「さっき、向こう岸もそうなっていたと言っていましたね。でも、橋が切れたの
に、どうして向こう岸のことを知っているのですか?」
「良い質問ですが。まだ、それを話す時期になっていないのでそれはその時に話
しましょう。
そこで、犯人として考えられるのはその場に居なかった誠治さん、燐子さん、
理津子さん、そして、菊子さんです。
↑何故? 赤い物体が関係しているかどうかの証明がない
そして、第2の殺人が起こったのです。初めに言っておきますと、被害者は利
根田菊子さんでした。
菊子さんは部屋に飾られた「絵」とほぼ同じ状況で死んでいました。正確な死
亡時刻などは分かりませんが、大体の時刻は分かっているんです。陽子さん、あ
れは何時頃でしたっけ」
伊集院が陽子に荘尋ねると陽子は口を開き言った。
「確か、朝方の3〜5時でした」
「菊子さんが死んだのはその時間となります。当然と言って良いかは分かりませ
んが、この時間に現場不在証明をもっている人はいないと考えて、ここに居る全
員が犯人となります、自分も含めて……。
↑「容疑者となり得ます」ぐらいにすべきでは
さて、次に起こったのは幸助さんを殺害した事件です」
伊集院がそういうと和巳が、
「おじさんは誰に殺されたの?」
「それは後にとっておきましょう。
幸助さんが死んだ部屋は自分の部屋でした。ただ、一つだけ変な場所がありま
した。それは、私だけではなく、検死してくれた陽子さんも知っています。「絵」
がずれていたんです。殺人のモチーフとして役に立ってきた「絵」が。
↑この事件が起きる前までは、絵は、たった一度、現場
にあっただけです。それだけでここまで断定するのは無
理がある
そこで私は時夫さんの殺人に関係しているのではないかと考えたのです。実際、
私と誠治さん、慎治君、和巳の4人は初めに時夫さんの部屋で死体を発見した。
そして、幸助さんもと思い、みに行ったわけですから。
時夫さんの殺人にはもっと不明の点がありました。あの部屋には「絵」がなか
予告をした犯人は殺人現場に絵を残すとは一言も言っていません↑
ったんです。そして、もう一つ、殺したときに飛んだはずの血が中途半端に切れ
ていたんです。
ここでさっき話した「絵」のずれと、今しがた言った中途半端だったと聞いて、
思い浮かぶことはありませんか?」
伊集院は自分の席の位置でそう言った。
すると、燐子が、
「その「絵」が一度時夫さんの部屋にいき、そして、元の位置に戻ってきたと言
うこと?」と、言った。
「その通りです、が、ここで引っかかることは、あれほど姿を見せなかった犯人
が、そんなへまな事をするでしょうか? いや、しないでしょう。そこで私は一
つの結論に達したと言うことです」
「分かった。犯人は二人いたんだわ」
と、理津子が言った。
「その通りです。時夫さんだけは別の犯人がこの場を借りて殺したんだと。そう
するとある出来事も説明できるのです。それがここに書かれた文です。
↑
何のことでしょうか? 何に書かれていたかの説明がありませんでした
ここには、連条紀夫、夏目幸助と書かれています。この文字はワードプロセッ
サーで書かれたものですが、この次に書かれている文字が重要なのです。その名
前とは、園田時夫です。しかも、手書きなのです。と、言うことは……」
↑手がかりの提示が遅い
「突発的な殺人か」
と、幸夫が言った。
「と言うことになります。ここでさっき慎治君が言った向こう岸の話が出るわけ
です。
このロビーには暖炉があります。そして、この敷地内に窓すらない建物が、丁
度暖炉の後ろに立っているのです。ある時この暖炉に変化があったのです。それ
は、この暖炉には隠し通路があったと言うことです。
そして、それに気づいたとき、犯人がそこの付近から出てきたのです。それが
伊集院はいつこの状況を目撃したのでしょうか↑
誠治さん、あなただったのです。
そこでもう一度私は現場を確かめました。そして、これが出てきたんです」
伊集院はそう言って2枚の紙を出した。
↑犯人は何故、暖炉に紙を隠したんですか。肌身離さず
持っていればいい
そこには、<おまえ等の殺した菊間辰利だ。この恨みいつかかえすぞ。地獄の
↑誰のことですか
そこに落ちてでも>と書かれていた。
「誠治君が菊間の子供だったのか……」
そう言ったのは幸夫だった。
「そうです。先程読んだ紙には社員の名前も書かれていました。当然あなたの名
↑意味不明
前はありませんが。当時何があったか分かりません。ただ、今回の犯人は誠治さ
んだったのです。父親の復讐と言う理由で……。誠治さんの部屋にある手帳には
もっと詳しいことが書かれています。でも、ここではそう深い事実は関係ないで
しょう」
「菊子は、菊子はどうして殺されたんだ?」
隼人が言った。すると、
「見られたんだよ。伊集院さんみたいに暖炉から出た所を。だから、口封じに殺
したんだ」
と、誠治が言った。
「そして、時夫さんを殺した犯人は、和巳。君だ。だから、誠治さんが殺しにき
たんだよ」
「私がおじさんを、馬鹿なことを言わないで、どうして私が殺さなきゃぁいけな
いの」
「それは、和巳が時夫さんのことを恨んでいたからじゃないのか。本当の父親を」
伊集院はそう言った。
「和巳の本当の父親である時夫さんは、今の君の母親と夫婦関係にあった。しか
↑どうしてそんなことが分かるんですか? 手帳を見たのだとしても、
和巳が手帳にそんなことを書く必要がない。そもそも、伊集院が和巳
を疑うきっかっけは何だったんですか?
し、時夫さんがそんな母親を捨てた。それが原因じゅぁないのか」
↑「じゃあ」のタイプミス?
和巳は一瞬たじろいだが、すぐに態度を変えて、
「そうよ、あの男は私が殺したのよ。あの憎たらしい父親をね。まさか、翔君に
↑どうしてこんな素直に認めるんですか?
手帳を読まれていたなんてね。これっぽっちも思わなかった。今まで言ったこと
↑伊集院はいつ手帳を見たんですか?
は当たっているは、ただ、最後の部分だけはあの手帳には書かれていないの。そ
れは私の死……」
和美はそう言うと玄関を開けてつり橋の袂へと走っていった。伊集院たちはそ
↑直っていない
の後を追った。