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★タイトル (AZA ) 96/11/10 3:59 (187)
推理小説的読書法「月光」2 永山
★内容
「あれがそれだと思うわ」
祥子は進行方向の右斜め前を指す。そこには、葉のあまり付い
ていない、大木がそびえていた。
「まだ、たき火の火が見える。さほど離れた所じゃぁ、ないみ
たいだな」
そう話ながら歩いていると、今まで、同じテンポで鳴り響いて
↑誤変換? ここは動詞だから、「話しながら」とすべき
いた鈴の音が、急に激しく鳴り始めた。そして、一分もしないう
ちに、その鈴の音は、ピタリと鳴り止んだ。
「パット、何処なの」
祥子は少し大きな声で叫んだ。すると、ある草むらの一部から
「ニャ〜ニャ〜ニャ〜」
という鳴き声が聞こえてきた。
祥子が捜していたとこよりも、もう少し左に行った所から、パ
ットは顔を出して鳴いていた。
剛はそれと同時に、血の匂いに近い匂いが、風にのって漂って
きたのを感じた。その匂いはまだ、生々しさを帯びているような
匂いだった。まさに、出血したての匂いに近かった。
さっき出てきた雲が、濃くなったように思えた。それはただ濃
くなったのではないように思えた。この先に何かおぞましい出来
↑二文続けて「思えた」で結んでいる
事でも、待ち構えているような気配だ。
剛はなるべく低い体勢で歩いていた。それは、この辺一帯に漂
っている異臭元をいち早く見つけるためである。
↑剛が遺体がどこにあるか、分かっているはずですが
「剛、なんか足元にものが落ちているんだけど」
「どこだ」
剛がそういってしゃがみ、辺りをたいまつで照らした。雲が増
えたせいで、辺りが異様に暗くなった。驚いたことにそこは、草
↑誰が驚いたのですか? 剛は全てを
知っているのだから、彼ではないはず
が倒れかかっていたのである。自然的ではなく、人工的な倒れ方
で・・・。そして剛は、想像していた以上のものを発見したので
↑「想像していた以上」とはどういうことでしょう?
剛は近くに死体があることが分かっていたのだから、
それ以上の何かを発見したのでしょうか
ある。
その時、風が微かに吹いた。それでも月は雲をかぶっていた。
それは、辺りの寒気さをいっそう引き立てた。恐怖という寒気さ
↑「寒さ」あるいは「寒気」だけでいいのでは
を・・・。
「何かあったの?」
祥子のそういう言葉にも、剛は反応できなかった。そこには、
脇から胸にへと、いくつもの刺し傷がある女性が横たわってい
た。服はその傷口からの出血のせいで赤く、いや、どす黒く染
まっていた。
剛はすぐに、その女性が息をしているかを確かめるため、脈
を取り、鼻の下に手を置いた。体温はまだ生暖かかった。しか
し、脈は打っておらず、息もしていなかった。
↑女性が間違いなく死んでいることを確かめた犯人の剛は、ほっとしたはず。
その心理を一言も描写しないのはアンフェア
「何かあったの?ねぇ」
祥子がもう一回そう言ったとき、剛はもとの自分を取り戻し
た。
「女の人が、死んでいるんだ」
剛は風の如くつぶやいた。
「死んでるって、本当なの?」
「ああ、ほぼ間違いない。多分パットについていた血は、こ
の人のだろう」
「何とかしなくっちゃ。まず、稔たちを呼んでこないと」
「そうだな、俺がここに残るから、あいつらを呼んできてく
れるか?」
「ええ、わかったわ」
祥子はそう言ってきた道を返っていった。
↑普通は「帰って」あるいは「引き返して」では
風のせいで、たき火の火が強くなったり、弱くなったりして
いた。稔はそんな炎のゆらめきで目を覚ました。そして、3人
がいないことに気づいた。すると、理恵は草むらの中から自分
↑意味不明。続く文章では理恵の行方が分
からなくなっているのに……
の寝どころに戻ってきた。
「祥子たちはどこに行ったの?」
「さぁ、今起きたばっかりだからわからないんだ」
「理恵は?」
稔はそう言われるまで、理恵がいないのに気がつかなかった。
そして、辺りを見回したが、理恵の姿はどこにもなかった。
「散歩かな?」
美香はそう言った。でも、こんな遅くに一人で散歩に行くは
ずがないと思っていた。
それから二人は、時間(トキ)が経つのも忘れて話していた。
祥子と剛が何を見たのかも知らず、3人がいなくなったのも忘
れるほどに・・・。
それから10分くらい経ったとき、突然草むらが激しく揺れ、
何かが走ってくるような感じの音が聞こえた。その時、風はま
ったくと言ってもいいほど吹いていなかった。
「誰だ!」
稔が振り向きざまに言った。しかし、その音の主は何も言い
返さなかった。そしてまだなお、稔たちのほうへと向かって走
り続けてきてきた。
草むらから、「バサッ」と飛び出してきたのは昼間出会った
猫だった。
「昼間の猫かよ。たくー、ビックリさせるなよ」
「でも、この猫の体に血みたいのがうっすらと付いてるけど、
ケガでもしているのかな?」
稔はそう言われて猫を抱き上げた。
「いや、ケガじゃないみたいだ。でも、おかしいなー」
「美香〜」
暗闇の中から祥子の声が聞こえてきた。稔たちはその声が聞
こえる方へと、たき火の火の一部を持って歩み寄っていく。す
ると、そばにいた猫が急に草むらへと走っていった。
「パット、どこ行ってたの」
祥子はパットを抱いて、稔たちの前へと表れた。
「どこ行ってたの祥子、理恵もいなくなっちゃったし・・」
美香が祥子に言った。それと同時に、理恵が昼間来た道から
姿を見せた。
「事情は後で話すから、ちょっと私に付いてきてくれない?」
祥子がそう言うと、稔は懐中電灯を出してきて、皆に渡した。
そして、その場所に行く前に、ある程度の状況を説明した。
「ということなの」
「で、剛がそっちに残っているんだな」
「うん。だから、なるべく早く行かないと、火がもたないの」
そして祥子たちは、剛の待つ場所へと走り始めた。
その場所までの道のりは至って簡単だった。ただの一本道だか
らである。でも、所々獣道になっていて、走りにくいは所もある。
↑タイプミス?
さっきまであった月は、薄雲に覆われていて、あの輝かしい光
が半分以上カットされていた。祥子はそんな夜空を見上げて思っ
た。また何か、いやな出来事が起こるのではないかと。
行きには見なかったものが近くに落ちている。祥子はそれを拾
いあげた。それには「月光塚」と書かれている。確かこれは、キ
ャンプ場の入り口と、女性の死体があった場所にあったと祥子は
↑「あった」↑が重なっています
思った。
祥子はその看板を草むらに立てかけた。そして、さらに先を急
いだ。
やっとの思いで剛の所まで戻ってきた。そこには、思いがけな
いものが目に入ってきた。
↑「そこには、思いがけない光景が広がっていた」とでもすべきでは
女性の死体がなくなっていて、その代わりに剛が倒れていたの
だ。
「剛、ねぇ剛。しっかりして、大丈夫?」
祥子がそう言って、剛を抱き起こした。
まさに、手品師が手の中でハンカチを消して、帽子の中から鳩
を出したような風景である。
「うっ、うぅ」
剛がようやく目をさました。後頭部を自分の手で押さえながら、
「祥子が稔たちを迎えに行って直ぐ、誰かに殴られて、気を失
ってしまった見たいなんだ」
↑「みたい」の誤変換?
剛はまだ、殴られた衝撃が残っているらしく、時折頭を押さえ
ていた。幸いにも、出血はしていないようだった。
「それで、女性の死体はどこ?」
理恵が肩越しに言った。確かに、あったはずの死体はなくなっ
ていた。
祥子は地面をじっと見ていた。すると、何かを引きずった跡が
ついていた。
「これ、何の跡だと思う?」
祥子は指で指しながら皆に尋ねた。すると、
↑「指差しながら」でいいのでは
「死体を引きずったときにできたもの?」
「そうだと思うの。で、その方向は崖になっているの」
「ということは、死体は崖下に?」
「そう言うことになるな」
祥子たちはそう言って崖淵まで歩いていった。暗いせいもあっ
て、あまりよく下が見えなかった。崖下は森になっている。明日
捜せば、見つかることは見つかると祥子は思った。
「で、どうするのこれから」
美香が皆に言った。
「とりあえず、朝になるまでキャンプ場にいよう」
稔はそう言うと、剛に肩を貸して歩き出した。
月にかかっていた雲は、いつの間にか晴れていた。それは、こ
のいまわしき事件を歓迎するように輝きだった。
祥子は誰が剛を殴ったのか?そして、何のために殴ったのか?
ひょっとすると、死体を発見したために?色々なことが頭を駆け
巡った。でも、剛が無事で、何よりだったと心の中で思った。
「こんばんは。ニュースの街の時間です。まず、行方不明のニ
ュースです。2週間前から行方がわからなくなっていた木戸真理
子さん(19)は、何らかの事件に遭遇したものとみて、警察は
今日、捜索本部を設置して模様です・・・」
↑「設置した模様」のタイプミス? 無論、アナウンサーが
読み間違えたとも考えられますが……
警視庁捜査一課の手塚晋太郎は、テレビでこのニュースを見て
いた。晋太郎は2週間前から、この事件を地道に追っていた。
警察に捜索願が出されたのは1週間前で、非番になっていた晋
↑捜索願が出されたのが一週間前なのに、晋太
郎は二週間前から事件を追っていたんですか?
太郎は、この事件の解明のために繰り出されたのであった。
「それで、木戸真理子が行きそうな所は、わかったのか」
晋太郎は近くにいた部下に大声で言った。いや、言ったのでは
なく、叫んだという方が適切である。
↑「大声で言う」と「叫ぶ」にさほど違いはないと思うのですが……
「はっ、はい。山梨県にある月光山という所によく行くと、親
と友人が言っていました」