#4228/7701 連載
★タイトル (AZA ) 95/ 5/28 9:55 (200)
うちの文芸部でやってること 3−16 永山
★内容
[我をあの渦の中心に投げ込め。我は金の魔神の魂を食らう]
魔剣の答えは簡潔だった。
「よっしゃ! 頼んだぜ、魔剣!」
クリバックは魔剣を逆手に持ち替え、中心めがけて投げつけた。魔剣は一直
線に渦の中心に飛び込んだ。
次の瞬間、声とも音ともつかぬ不気味な振動がビリビリとクリバックの身体
に伝わってきた。
「なに、これ! うまくいったの?」
コトリンが揺れる機体を抑えようと、必死に輝光石に意識を集中させる。一
方、クリバックは思わず目を閉じていた。
唐突に不気味な振動がやんだ。恐る恐るクリバックは目を開け、周囲を見回
してみた。すると、今まで垂れ込めていた闇色の気が、嘘のようにかき消えて
いた。
地上でも、同じ現象が起こっていた。振動がやむと同時に、金の魔神の本体
の動きがピタリとやんだ。
「……?」
クレスタ達が茫然と見守っていると、上空から狙い澄ましたかのように魔剣
が降ってきて、金の魔神の本体の頭部に突き刺さった。
それが合図であったかのように、金の魔神の本体が崩れ始めた。まず両腕が
肩から外れて地面に落下して砕けると、腰から上が前のめりになって崩れ落ち
た。崩れた身体の破片は見る間に細かくなっていき、最後には闇色の砂の山に
なっていた。
「やった……!」
クレスタがゆっくりと声を出した。
「やったぞ、金の魔神を倒した!」
レブノスが天を仰いで絶叫する。
「やったぜぇーっ!」
スウェルドが拳を突き上げた。その頭上では、「鳳凰の翼」が誇らしげに舞
っていた。
エピローグ
「これからどうするんだよ?」
レブノスが四人に聞く。
「金の魔神、この剣の中に入ってるんだよなあ」
クリバックが、金の魔神の残骸に埋もれ、地面に突き立ったままの魔剣を薄
気味悪そうに見る。
「今度も結局は魔剣に封印しただけな訳だからな。簡単に復活しちまうかもな」
スウェルドが溜め息まじりに言う。
[その心配はない]
魔剣が言葉を発した。全員の目が魔剣に注がれる。
[今や、我は金の魔神と同体である。金の魔神という存在そのものが、もはや
存在せぬのだ]
「じゃあ、金の魔道はもう使えないの?」
と、コトリン。
[左様。と言うより、近い内に地の魔道も使えなくなり、やがては天の魔道も
消滅するであろう。所詮、かような力は人の手で扱いきれる代物ではないのだ]
「ええーっ! じゃあ私、これからどうすればいいの?」
コトリンが悲しげに魔剣に聞く。しかし、魔剣はもはや黙したきり、何も話
そうとはしなかった。
「まあ、心配するな。いざとなったら、俺が面倒見てやるよ」
スウェルドが胸を張ったが、コトリンは「馬ー鹿、何考えてんのよ!」と、
軽くあしらった。
「ちぇっ。何だか締まりのない終わり方だなあ」
スウェルドがぼやく。そのとぼけた言葉を聞き、レブノスがケラケラ笑い始
めた。それにつられ、クレスタとクリバックも声を立てて笑った。さらにはコ
トリンとスウェルド自身も笑いの輪に加わった。彼等の笑い声は半ば廃墟と化
した神殿内に響き渡っていった。
魔剣の残した言葉通り、それから三年後、地の魔道は完全に失われた。天の
魔道の消滅はそれから十年後のことだった。それを機会にグリミーカ魔道王国
の名も歴史上から一時消えた。次に歴史の表舞台にグリミーカの名が顔を出す
のは千年後。グリミーカ王国なる、強力な水軍を有する島国国家としてである。
しかしその頃には、魔道そのものが迷信として否定され、クリバック達の存
在もただの伝説として語られる時代となっていた。
−完−
おわりに
由良君からB5用紙三枚の原案をもらってから、十日前後で作り上げたこの
物語。これを読んだ由良君が想像とのギャップの余り、のけぞって驚く姿が今
から目に浮かぶようです(笑)。
原案の段階で既に魔道、魔剣、魔神といった言葉が出てくる上に、こっちで
風・水・火・土の四大元素の設定まで加えた結果、まさにコテコテです。主人
公の属性が「土」であることと、強引に風色の少女と輝光石で飛ぶ飛行機械を
登場させた点で、少しはオリジナリティを出そうとしているつもりですが。ど
んなもんしょう?
そう。この原案も一応は、彷徨君発案の「ファンタジー系の賞を目指す」計
画に由良君が賛同して書いてくれたものなのです。ありがとね(ちょっと方向
性が違うような気もするが)。
いやー、原案があると話が作りやすくていい。もし、この程度の大雑把な小
説でいいんだったら、由良君のように、あらすじと主要登場人物、物語世界特
有の世界観を書いた原案を渡してさえくれれば、こちらの忙しさにもよります
が、一ヶ月ほどで作れます(おお、強気やな)。でも、その際には、あらすじ
はなるべく詳しく、登場人物の性格付けや世界観設定は物語に反映しやすいよ
うに書いてくれるとありがたいです。また、「これだけは絶対、作中に入れて
くれ」というのを明示してあると助かります。逆にそうでないと、物語の内容
を、どんどんこっちで書きやすいように変えていってしまいます。
というのも、由良君の書いてくれたあらすじの場合、「何でそうなるのか?」
と思われる点がいくつかあったので、色々といじくってしまったからです。何
で、記憶喪失の魔道士が宰相になれたのか、とか(そもそも、魔道士と宰相の
関係が分からない)、王子に渡すはずの神器が物語にどう関わっているのか、
とか、主人公の後ろに浮く魔剣って何なんだ、とか。考える楽しみがない訳で
はないのですが、説明のない設定は結局死んでしまう訳で、「これにはこんな
設定をちゃんと考えてあったのに」とかあとから言われても困る訳です(そう
いうことだ、由良君。あとで文句を言わんように)。
でも、あらすじを見たときには何の疑問も感じなかった点が、いざ書くとな
ったときに首を傾げる場所もあったので、なかなかあらすじの段階でそれを見
抜くのは難しいかも。第一、そんなに文句を言われながら原案を作るんだった
ら、自分で全部書いてしまった方が早いからね。
余談ながら、人物の命名法はかなりクセがあります。従って、人によっては、
車の名前の例のアレ(笑)より、その由来が分かり易いという人がいるかもし
れません。主人公達五人は少々難しいかもしれないけど(「クリバック」「ク
レスタ」あたりには聞き覚えのある人がいるかも)、魔道士父子や、皇帝父子
の名前で気付く人もいるでしょう(「エクゾセ」は少々やり過ぎたという気も
する)。原案で名前やタイトルを決めてないと、当然こっちで勝手に名付けてしまうの
で、それが嫌な人はちゃんと考えて、細かく設定するようにしてください(その方がこ
っちとしても楽だし)。
という訳で。とりあえず話を完成させたことで気が大きくなっているので、
決め台詞の一つも言っておこう。
「あらすじ一つあれば、一ヶ月で物語を完成させてみせる!」
ただし、テスト前はなしね(おいおい、全然決まってないぞ)。
原案設定(由良真沙輝)
百年ほど前、大陸を襲った魔神を封印した勇者達がいた。彼らのうち、ある
者は王位を継ぎ、ある者は国を再興し、ある者は小さな土地をもらい静かに暮
らした。その大陸の隣の島国では魔神の封印による天候の異変でこれまで以上
に魔力を行使することになる。九十年前、王は魔神開放のための部隊を派遣し
たが、長距離空間転移の影響で記憶に支障を来し、大陸南の国に拾われる。後
に宰相の地位を得る。
そして現在、魔道士の一族は宰相と宮廷魔道士に就いていた。二十年前に戻
った記憶を元に封印の地へ向かう。制止しようとした王は瀕死の状態にされる。
追跡に向かった騎士達により魔道士達の目的地が判明。王子が騎士団を率いて
先回りして迎え討とうとする。そこへ視察から城に帰ってきた二人の騎士。そ
の二人に王子に渡す神器を授け、魔神開放の阻止を助勢するように頼む。
大陸北部、剣士の村落では二人の若者が魔神の封じられているという島に探
険に行こうとしていた。と、そこに虚空から一人の子供が降ってくる。長距離
集団移転の反動で九十年前の時代から弾き飛ばされた魔道士だった。その魔道
士に連れられるように島へ旅立つ。
島の前で二人の騎士は騎士団の死体の山を目の当たりにする。それから二人
の若者と魔道士に遭遇。
魔道士達を追って島に上陸した一行は洞窟の前で魔道士達と対峙。奥に行く
と宰相が封印を解いたあとだった。魔神が現れるかと思われたとき、魔剣が言
葉を発する。解かれたのは魂の封印で本体の封印は北の国にあり、魔神の魂に
よって本体の封印も解かれつつあるということ。魔道士達の力で空を飛んで城
に向かう途中、剣士の村落が踏み潰されたようになっているのを見つける。扉
の壊れた城に入ると王子が王の仇を討とうとしていた。
ほいでぇー、結局魔剣が魔神を食って、意志を持つ聖剣とゆう正しい魔神の
姿に戻っておしまい、と。
◎魔道王国の歴史
0 大陸の調査船数隻漂着。島自体から正体不明のエナジーが出ているこ
とが分かる(魔力と名付ける)
10 調べるうち八つの異なる魔力が存在することが分かる。魔力を帯びた
八種類の魔石を発見
110 魔力に関する研究が進み、魔石から魔力を引き出す方法を発明(魔道)
300 魔法文明最盛期。大陸を支える(支配する?)金の魔神謎の暴走、そ
して封印される。それによって八つの魔力の均衡が破れ、暴風雨と地震
が起こる。その後も昼夜の長さが不均一になり、乾燥期と大雨期とに分
かれ、小地震が多発し、風が絶えず吹くようになる。
地震を避けるために島を浮上させる
320 地面と離れたため土の魔力が弱まり、金の魔力がなくなったため風の
魔力が強まったことで徐々に島が浮上していく。それを止めるため魔神
の封印を解く目的で、大陸へ部隊を派遣……
400 (大陸新暦元年)
・魔道王国の人間の寿命:百年超ぐらい(老け方は人間の半分)
・現在:宰相127才(故人)、現宰相83才、宮廷魔道士・義妹75才、
弟80才、義妹74才
登場人物
主人公1−−性別:男
クラス:魔剣士
年齢:19
性格:責任感はあるが楽観的・脳天気
容姿:短めの黒髪・黒の皮鎧に黒の強化セラミックスの大きめの肩当て・背
は高め。大きな魔剣を後ろに連れ歩く・黒曜石の妖刀を持つ
主人公2−−性別:男
クラス:竜騎士
年齢:17
性格:先のことを考えずに行動することがある・責任という言葉は知らない
ようだ・お調子者
容姿:肩を越える程度の金髪の長髪・宝石の埋められた銀水晶?(元は銀製)
のプレートメイル・背は普通くらい・空中に浮いている(飛べる)・銀
水晶?の槍を使う
主人公3−−性別:男
クラス:パラディンマスター(聖騎士団団長)
年齢:28
性格:生真面目・責任感の塊
容姿:オールバックの黒髪・白い強化セラミックスの胸当て+肩当て・背は
高い・水晶の細剣を持つ・国を捨てた北の国の第二王子
主人公4−−性別:男
クラス:ソーサルナイト(魔道剣士)
年齢:22
性格:陽気で何を考えているか分からないように見えるが戦闘になると真剣
になる・実際何も考えてなかったりする
容姿:やや長めの赤黒い髪・赤い強化セラミックスの胸当て+肩当て・背は
低め・銀水晶?の大剣を持つ・南の国王の兄の遺児
副主人公−−性別:女
クラス:ソーサラー(魔道士)
年齢:15(29)
性格:自分勝手・きれい好き・短気
容姿:長く赤い髪・灰色のローブを着ている・背は低い・両手に二つずつ、
大きめの宝石の付いた指輪をしている
次は4。ではでは。