AWC うちの文芸部でやってること 2−3  永山


        
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★タイトル (AZA     )  95/ 4/29   7:54  (200)
うちの文芸部でやってること 2−3  永山
★内容
(承前)


8.宣言
 筆者の目指すものは、「大人が大人のままで楽しめる夢」と前述した。何を
以てそれを実現するのか、まだはっきりとは分からないが、現段階で言えるこ
とがいくつかある。ストーリーの性質といえる類のものについてだ。
 一つめは、観念主義に陥らない、だ。どういう意味かというと、全ての事象
は物理法則と戦略・作戦・戦術という「理屈」によって説得力を持たされた形
で動き、決して愛や勇気や根性に頼らないということだ。
 もちろん、これが言うは易く、行うに難い作業だというのは十分分かってい
る。ID野球のはずの野村監督のヤクルト。今年のキャッチフレーズは「我武
者羅野球」だもんな。成すべきことが分かっていても、それを実行できるかど
うかは別問題なのだ。しかし、そこを妥協しては、無数の競争相手が待ち受け
る舞台に自ら突っ込んでしまう羽目になる。前述したように、「軽いノリ」の
冒険小説は巷に溢れている。違う切り口が必要なのは言うまでもない。もっと
も、軽いかどうかは主観の問題。あるところには、「日本が世界に誇るドッ硬
派ファンタジー『フォーチュンクエスト』」と書いてあったぐらいだから。ま
あ、どこまで本気なのかどうかは分からないが。
 二つめは、全てに寛容になる、ということ。とかく世の完璧主義の人達は、
人間の愚かさ、社会の歪みについて不満をぶちまけがちであるが、筆者は敢え
てそれをしない。納得できるなら、核兵器でさえも容認してあげようじゃない
か、という広い心である。おっと、別に作中に核兵器を登場させようという訳
じゃないぞ。物事は全て何らかの形で結び付いている。それらは理由があって、
そこに存在しているのだ。だから、認めたくない現実であっても、そこで思考
停止することなく知識として理解しなければならないのだ。世の中に対して何
かを訴えるとすれば、全てそこから始まるはず。
 何故か。我々は、我々の現実でしか生きられないから。そして、筆者は決し
て、気に食わない現実から逃れ、空想の理想世界に遊びたくて小説を書く訳で
はないからだ。これが執筆の際においても基本姿勢となるだろう。筆者が描き
たいのは、断じて理想の世界ではない。ファンタジーだからといってその点を
譲るつもりはない。そこでも権力争いがあり、陰謀が渦巻き、正義は大義名分
でしかないのだ。それが間違っているからではなく、それが現実であるから。
もっと言えば、人が欲望を満たそうとする生き物であり、そしてそれを筆者は
容認しているから、だ! そのあたりを突き詰めていくと、「大人」の話にな
るのでは、と考えている。文句を言うだけなら、三歳児にだってできるのだ。
 そして最後の三つめは、独りよがりにならないということ。多くの人達にア
イデアを募るのは、ストーリーの独創性と整合性を両立させたいがためだ。
 誰もが思いもつかないアイデアは、雑多な知識と広い視野から生まれる。小
説において奇想天外と荒唐無稽は別物だ、という話がある。奇想天外は納得で
きる驚きを意味するが、荒唐無稽は納得できないただのでたらめを意味する。
目指すところが奇想天外なストーリーであるのは言うまでもない。従って、不
条理やご都合主義はお呼びじゃないのだ。

        ★        ★        ★

 脈絡のない話が続いて申し訳ないと思っている。しかし、今は無から有を生
み出そうとしている時期なので、勘弁してほしい。何事も基本が大事。土台が
しっかりしていなければ、首尾一貫した話など作れるはずもない。
 まあ、そういう訳で、今回は余り進展のないままだったが、次ぐらいからは
具体的な世界観の構築(登場人物の名前、地名、単位、その他)を始めていき
たいと思う。
 物語の創作。それには多大な困難が常につきまとう。であるのに何故、筆者
に限らず多くの人々が全ての問題に敢えて立ち向かい、創作活動を行おうとす
るのか? それは、自身の意向・信念が最大限に具現化された物語を読みたい
と一番願っているのが、その著者自身であるからに他ならない。
 −−ファンタジーロマン大賞締め切りまであと百八十四日
              (次回、「我狼咆哮編」に続く)
(この企画は九割形フィクションです。登場人物、組織、団体名などは、実在
するものとは関係ない場合がほとんどです)

−−第二回.完 3−1に続く?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 うーむ、私のちょっとした一言が、いかに大きな(?)影響を与えたことか。
彼ら、あんまりマジになりすぎて、今度は「ファンタジーロマン大賞」に似つ
かわしくない作品を書き上げてしまいそうで、コワイ。
 基本案については、設定は二が、ストーリーは三がいいと感じたんだけど、
他の人、特にファンタジー小説をよく読んでいる人はどうなんだろう? 気に
なります。
 とにかく、今度の2−1、2−2、2−3を読んでの、私の感想を次に付し
てみます。すでに彼ら二人には見せたので、また悩んでるかな?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ファンタジー系の賞を目指す報告の二回目、読みました。
 全くの門外漢の言うこと、あまり真剣に受け取らないように。自由に書いて
ください。ちょっと耳を傾けてくれたら、それでいいから。

 と言いつつ、今回は重箱の隅をつつく。

◎昇華石について
 水がかかっただけでガスを勢いよく噴出するのなら、昇華石が地中にある内
に、染み込んできた雨水等で、大爆発がしょっちゅう起こりはしないか? 水
と何かの混合溶液がかかるとガスが出るというぐらいの設定の方がよいのでは?
 あと、昇華石そのものが武器にならないか。例えば、昇華石の下に液体を詰
めた袋を敷いて、地雷よろしく設置する。何も知らずに通りかかった敵は、昇
華石を踏みつける。液体と反応した昇華石は猛烈なガスを発生、兵隊らを吹き
飛ばす、とか。

◎横文字(外来語)について
 実際に書き始める前に、作中、横文字を使うか否か、決めておくといいと思
う。使うにしても、会話には用いないでほしいと、永山は願います。「お、チ
ャンスだ。そこのナイフ、取って」「オッケー」なんて、ファンタジーにはそ
ぐわない気がするもんだから。ナイフはぎりぎり妥協するにしても、チャンス
やオッケーはいかん。
 地の文に用いるのは、場合によりけり。作中人物の誰かの視点を取って、一
人称で物語を進めるのでれば、使わないのが当然。純粋な客観描写、あるいは
それに近い三人称ならば、使ってもおかしくはない……けど、使ってほしくな
いです、はい。
 あ、もちろん、人名等、固有名詞は別。作者が勝手に作る、物語世界での動
植物や単位(お金とか長さとか)などの名称も、カタカナでかまわないと思う。

◎主人公と敵役
 いっそ、主人公なんて決めずに書いてみては? と言うか、少なくとも読者
には、どちらの側が主人公なのか分からない(=どちらが勝つのか予測できな
い)ような書き方が面白いかもしれないなと、永山は考える訳です。風色の少
女が敗北する側になっても、一向にかまわない。勝利する側も敗北する側も戦
う背景にちゃんと筋が通っていて、なおかつ、こっちが勝ってやっぱりよかっ
たなあと読者に思わせられたら、最高じゃないかな?
 ただ、これをやろうとすると、飛光機以外にもう一つ、柱となるエピソード
が必要かもしれない。二つの国に、それぞれ一つのエピソード。あるいは、二
国間で輝光石による飛光機の開発競争をさせるのも、一つの手ではある?

◎飛び方の問題
 今さら根底から覆すような意見も何だと思うものの、言わずにはおられない。
輝光石の設定は、やはり「ラピュタ」に似過ぎではないか? そればかりか輝
光石のせいで、飛行機乗りという設定までもが、「紅の豚」を想起させなくも
ない。これに風色の少女がナウシカのイメージとくれば、選考委員に「この作
品、宮崎駿映画の真似をしている」という悪い印象を持たれる可能性が、非常
に高い。
 思い起こすに、宮崎駿作品ではよく空を飛ぶ。「風の谷のナウシカ」のメー
ヴェは風に乗って飛ぶという発想。「天空の城ラピュタ」は言うまでもなく飛
行石、石の力で飛ぶ。「となりのトトロ」は空を飛べるおばけ、か。「魔女の
宅急便」は魔女、空飛ぶほうき。「紅の豚」は戦闘機。とまあ、並べてみたと
ころで気付くのは、全て飛び方が違うこと。
 宮崎駿作品にない飛び方を案出できれば、それだけで、「真似をした」と思
われる要素は減るのだけど……困難そう。残っている飛び方となると、鳥等の
生物に運んでもらう、グライダー、凧、空飛ぶ円盤、超能力……ぐらいか。し
かし、空飛ぶ円盤や超能力では物語世界に合わないし、グライダーでは戦闘に
ならないだろう。凧は自由さに乏しいので物語の柱となり得そうもない。飛べ
る生物に運んでもらうのは、少女がその生物と会話できるとした途端、「ナウ
シカ」になってしまいかねない。
 まあ、輝光石でもいいけど、なるべく類似点を削るに越したことはないはず。

◎蘇る死者の問題
 ただ単に、「戦火の中、死んだと思われた不世出の英雄が、実は生きていた」
というのは、永山も容認できない。でも、必然性と論理性があれば、死んだと
思われた人物が生きていても、かまわないと思う。例えば−−開戦のために、
敵味方に別れてしまった将軍と娘。将軍は立場上、敵国へ寝返ることはかなわ
ない。そこで、将軍は自分が死んだように見せかけ、戦列を密かに離れること
を計画。色々と細工をした成果もあって成功−−こんな場合は、認めたい。無
論、他人の遺体を用意して将軍の遺体と誤認させるのならば、それなりの細工
をし、充分に読者を納得させなければならない。
 こういう考え方(遺体を他人と誤認させる)って、ファンタジー小説にはな
い、多分に推理小説的な発想じゃなかろーか。同様に、いかにも魔法っぽい呪
文が実は暗号だったとか、一人二役とかもあるかな。男を女、女を男のように
描くのも、理由があればやっていいと思う。

◎女性パイロットの理由
 思い付くまま。
・体重が軽い。つまりは飛びやすい、武器が多く積める。ついでに、物語世界
の男は皆、超肥満体という設定で……だめか。
・(ヒジョーに下ネタめくので嫌なのだが)ときどき、人の乳と反応させてや
ることで、輝光石は推進力を発揮するという設定。もちろん、男は乳が出ない。
万が一、本案を採用する場合、この物語世界では、妊娠しなくても乳が出るこ
とにしないと、ファンがつかないかも。
・風色の少女は記憶力に優れている設定。敵の布陣や武装ぶりを一目で記憶し
たり、濃霧がかかっても帰途をきちんと把握していたりと、活躍……。
・オーソドックス(?)なところで、敵パイロットを油断させるため。
・これもありがち。操縦法を知る者が、今やその少女しかいない。
・少女は過去、飛行船の事故で、記憶の一部を失っている。その記憶を取り戻
すことが、国の勝利につながる。記憶を取り戻すため、少女は空を目指す……
ってのはどう? 少女自身は、自分の記憶が戦の勝敗に関わっているとは思い
も寄らない、としてもいいかな。
・兵士不足。長引く戦争のため、飛行機(飛光機)に乗れる男が極端に減って
しまった。
・思い切って……女は飛べる、男は飛べない!

◎戦士、武器
 一人や二人、超人がいてもいい。相当に距離があっても百発百中の弓の名手
とか、重い鎧を身に着け湖を泳ぎ切る達人とか。
 同じく、ちょっと信じられないような武器も、一つ二つあってもいい。何人
斬ろうが刃こぼれしない名刀、脅威の命中率を誇る投石機等々。
 ただし、火薬だけは要注意。ファンタジーの世界では拳銃等の飛び道具がな
いことが多い。あってもせいぜい、弓。となると、往々にして、火薬が物を言
う。あまりに強力な火薬(爆弾)の存在を容認してしまうと、戦闘における妙
味がなくなるかもしれない。火炎瓶程度のレベルがいいのでは。

◎個人的希望
 風色の少女は、戦争回避に力を尽くしてほしい。詳しい設定がまだだからよ
く分からないが、立場上、戦争に加わらざるを得ない設定を採るにしても、可
能な限り、開戦を避ける努力を。
 あと、やっぱり、天才的な軍師がほしい。二国が抱える軍師が知力の限りを
尽くす。あるいは、同じ国の中に何人か軍師がいて、そのトップと目される軍
師の足を引っ張ろうと、他の軍師が陰謀を画策。が、やはりトップにはかなわ
ない。こういうのってプロトタイプだけど、読んでみたい。

 それからもう一つ、参考までに。うろ覚えだけど、宮崎駿氏は、ヒロインが
身近にいる少年に対して、「これからどうしたらいいの?」という意味の台詞
を言うことのないように心がけているとのこと。理由は、女は男を頼るものだ
という考え方が嫌いだとか、「どうしたらいいの?」と少年を頼ってばかりの
ヒロインは真の意味でのヒロインではないとか、そういうことだったと記憶し
ている。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 まあ、私の場合、この島津君とはかなり考え方が近いこともあって、素直に
読めてしまいます。だから、あまり建設的な意見を言えない。
 そこで、厳しい読み方・違った読み方のできる皆さん。どんどん意見・疑念
を二人に出してやってください。お願いします。
 自分もまとまりのない意見を述べている気はしますが、こうした雑談の中か
ら「黄金の物語」が姿を現してくれることを願って。

 次は3。ではでは。




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