#4160/7701 連載
★タイトル (AZA ) 95/ 4/29 7:51 (169)
うちの文芸部でやってること 2−2 永山
★内容
(承前)
三.「この世界では物理の力が全てに勝る」確固たる世界観
最初に宣言しておく。「魔法」はなしだ! 但しその全てを否定してしまう
のではなく、「物理法則が支配する世界」の根幹を崩すようなものは出さない
ということである。分かり易く言えば、「魔法の存在が一般に認知された世界」
ではないということになる。
それは何故か。「剣と魔法が不都合なく同居できる世界観」を作り出す自信
がないからだ。弱気に聞こえるかもしれないが、まあ、面倒臭いのは苦手だ、
ということで勘弁してもらいたい。
それに付随して、といっては何だが、エルフ、ドワーフ、ノームといった異
種族も登場しない。出てくるのは純粋な人間だけだ。こういった異種族の多く
は「指輪物語」等の、著作権のある小説の創作であり、それを安易に使う訳に
はいかないからだ(余談ながら、エルフのとがった耳は、寝るときに邪魔にな
らないのか気になってしまう。有翼人なんかも、うつ伏せにしか寝られないの
ではなかろうか、と心配になってしまう)。
次に、ストーリーの設定上、軍隊・戦争といったものは不可欠になりそうだ。
中世ヨーロッパがモデル、と一口に言ってしまえばそれまでだが、その中にも
いろいろあるので少し考えておきたい。
具体的には、何を出し何を出さないのか、という話になる。彷徨君が最初に
提示した「鉄のない世界」は魅力的な設定ではあるが、これをまともに捉える
とかなり疲れる。木と皮の鎧はまだ想像できても、石槍や石斧、石の矢尻のつ
いた矢を使って戦われる戦争となると、何だか原始人の喧嘩のようになってし
まう。そこで、彷徨君には悪いが、思い切ってこの設定は余り気にせずに話を
進めたいと思う。
また、できるならば、主要な登場人物を死なせたくないと考えている。別に
人道的にどうこうという話ではなく、場を盛り上げるために「死」という概念
を安易に持ち込むのが気に入らないだけだ。可能な限り、人の死は大事に扱い
たいと思う。一度は死んだと思われていた登場人物が、土壇場になっていきな
り現れる、なんてのは論外だ。
四.「俺の拳が真っ赤に燃える」愛すべき奇想兵器
a.マッハ0.1の騎士、飛光機
例え主人公が「風色の少女」だとしても、主役は輝光石を使って飛ぶ飛行機
である。これの性能を決めていくことで、ストーリーが逆に規定されていくの
ではないかと思う。
・形状と性能
基本は木製の枠組みに布を張った、第一次大戦当時の複葉機なのだが、それ
では少々完成され過ぎたスタイルという気がするので、二捻りぐらいした方が
いいだろう。
前回、「秋水」のような、と書いたが、秋水は無尾翼機(水平尾翼がない)
という、一種異様な形をしている。しかし、極めて初歩的な「空を飛ぶ機械」
のイメージの具現が、そんな異様な形になるだろうか。やはり、鳥や昆虫を連
想させる形に落ち着くのではないかと思うから、形としては普通のジェット機
に近いだろう。機体後部から光を噴射して飛ぶ訳だ。光の尾を引く飛光機、な
かなか格好いいと思うのだが、どうだろう。
あと気になるのが、着陸装置をソリにするか車輪にするかという点。まさか
引き込み脚になる訳がないから、いずれにせよ固定脚になる。固定脚のジェッ
ト機というのは何か想像できないのだが。
また、木と布でできている以上、それほど無茶な機動をさせる訳にはいかな
い。しかし、くんずほぐれつの空中線、というシーンは是非とも欲しいところ
なので、ここは何を敵に回して戦うのかという設定が決定されてから考えよう
と思う。
ところで、筆者は今の今まで羽ばたき式の飛行機というのは技術的に不可能
だと思っていたのだが、「陸・海・空ビックリ大計画99」(金子隆一/二見
文庫)によると、技術的な問題はなく、資金源と大がかりな計画がないために
実現していないだけなのだそうだ。従って、羽ばたき飛行機もあり。もっとも、
二十世紀の技術が前提になるのだが、ここで重要なのは羽ばたき飛行機そのも
のよりも、それを作れるという情報の方なのだ(何のこっちゃ)。
・一撃必殺の搭載兵器
我々の世界において、ごく初期の空中戦は、レンガや石の投げ合いだったと
いう。しかし、それでは余り見栄えしないので、技術レベルという問題はとり
あえず無視して、ファンタジーらしい兵器も考えておいた方がいいだろう。
イ.輝光砲
輝光石が発する光の力を金剛石(ダイヤモンド)によって収束させ、発射す
る兵器。レーザー砲のようなものだと考えてもらえばよい。「宇宙戦艦ヤマト」
の波動砲のように、射撃態勢に入ったときは推進用のエネルギーも砲側に回っ
てしまうので、滑空しながらでないと打てない、という設定にすると話が膨ら
むかもしれないが、その場合、敵は地上の要塞や飛行船などに限られてくる。
ロ.噴進弾
いわゆるロケット弾。翼の下に吊り、後席員がレバーを引くと、マッチを擦
るような要領で点火され、発射される。直撃させるのは難しいが、時限信管(
というより、推進用火薬が燃焼し終わると炸裂用火薬に引火して炸裂する)に
よって、破片を食らわせることは可能だと思う。
ハ.アンカーフック
本来は、着陸時の制動用の装置。機体の尾部に縄につないだ石を搭載してお
き、空中戦時には射出して空中に垂らし、それを振り回して相手にぶつける。
相手に絡まってしまった場合の切り離し装置も当然ついている。この中では割
合独創的だとは思うが、見た目が余りよくなく、絵にならないのが難点。
ニ.ボウガン、その他
何の捻りもなし。後席員が担当する。こんなのはまともに当たるはずがない
のだが、当たってしまうのがファンタジーのいいところ。いや、両者間の速度
が共にそれほど速くないのなら、「やぶさめ」の変種として理解できるかも。
・「彼女がパイロットになった訳」
女性を操縦手にさせるためには、かなり強引な手段で読み手を納得させなけ
ればならない。若気の至り、で全てを片付けてしまう訳にはいかないのだ。
やはり現段階では、輝光石を扱えるのは風色の髪と瞳を持つ者しかいない、
というのが妥当な線なのだろうが……、だめだ、余りにも「ラピュタ」してい
て赤面してしまう。
b.三分間の夢、噴射滑空機
前回書いた、昇華石を用いた推進力付きのグライダー。昇華石を「水に触れ
ると、物凄い勢いでガスを発生させる」と設定し、そのガスを後方に噴射して
飛ぶ。ロケット戦闘機「秋水」(Me163「コメート」と書いた方がいいの
か?)のイメージに近い。飛行機の敵役にはもってこいだと思う。一対一では
勝ち目がないので、数を頼んでの集団戦術を採るとバランスが取れるだろう。
何で「推進力付きのグライダー」と記述したかと言えば、固体燃料である昇
華石は、燃費が極めて悪い。早い話、三分程度で燃料が尽きてしまうため、そ
の後は滑空する以外になくなるのだ。
c.木製の轟天号、飛空戦艦
早い話、武装した飛行船だ。但し、普通の武装飛行船と違う点は気嚢全体が
木製の装甲で覆われ、ゴンドラ部分と一体化している点だ。そのため、見た目
は文字通りの「空飛ぶ船」である。推進力は前述の昇華石。方向転換も、船体
のあちこちに設けられた噴射口を用いて行われる。ついでに言うなら、詰め込
まれるガスも昇華石の気化したものだ。
基本的な戦い方はラム戦(艦首の衝角による体当たり)とボーディング(接
舷斬り込み)。あと、噴進弾の発射器が艦首にある。
弱点としては、その構造上、上部に物を置けないということ。トップヘビー
に陥って転覆(横転か?)してしまうからだ。従って、飛空戦艦同士の戦いで
あれば、上を取った方が勝ちになる。飛光機で攻撃するのであれば、急降下爆
撃ということになるだろう。
また、飛空戦艦よりもさらに大きな空中要塞という概念もあるかもしれない。
これなら、飛行機の存在意義が大きくなりそうだからだ。じゃあ、その内部に
突入して、要塞が浮遊する動力源となっている輝光石を破壊するという話にな
るのか? むぅ。それだと「スターウォーズ」のようでもある。
五.忘れちゃいけない輝光石
先日、ちょうどうまい具合に「ラピュタ」がテレビで放映されていたので初
めて最初から最後まで見た。見終わって不安になった。果たして、こんなに完
成された物語を見せられたあとで、オリジナリティに溢れた作品を作れるのか、
と(彷徨君、少々「基本案二」は宮崎アニメの影響を受け過ぎてないか? 書
いてて心配になってきているぞ)。
まあ、世間には光輝く石がカギになる話は意外と多い。力の輝石とか飛行石
とか飛翔石とか精霊石とかパワーストーンとか、まあそんなやつだ(いくつ分
かる? 全部分かったらオタク三段の称号を上げたい)。だから、気にしすぎ
ると自滅の元になるのかもしれないが、安易な設定はそれ以上に危険だ。
ポイントは大きく分けて二点。輝光石の性質と、それをどう使って飛行機を
飛ばすか、である。
「基本案二」では、輝光石は、技術さえあれば採掘できるものとされている。
つまり、「世界でたった一つしかない秘宝」ではなく欲しければいくらでも(
かどうかは分からないが)手に入れられる性質の代物なのだ。採掘した輝光石
を粉々に砕き、水で溶かしてから型に入れて固めると、高純度のエネルギーの
かたまりのでき上がり……って、これではファンタジーにならないか? よく
分からんが。やっぱりあれか? 「輝光石は、風色の少女が呪文を唱えると、
風を含んだ光を放射する」という、言ってみればオーソドックスな形に落ち着
くのだろうか。余りにも「ラピュタ」なので、どうかという気はするのだが(
今回、こればっかだ。うんざりするほど)。
もし輝光石を反重力物質として扱うのなら、もはや形状がジェット機型だろ
うが何だろうが問題ない。極端な話、座席さえあればそれだけで人が乗って飛
べるのだ。円盤型でも葉巻型でも何でもありだ(UFOじゃねーっての)。
さて、文句ばっかりかいていては話が進まないので、案をまた考えてみたい
と思う。
・基本案その四
「シャイニングストーン・バーニング」
国土の大部分を険しい山岳地帯に覆われたある国。陸上交通機関の発達を遮
られたこの国では、飛空船によって各市町村が結ばれ、物資・人員が運ばれて
いた。
あるとき、飛空船の墜落事故が連続し始めた。政府が軍・警察を総動員して
原因を究明させた結果、謎の高速飛翔物体による攻撃を受けたことが分かる。
直ちに空軍が出撃したが、性能差がありすぎて空軍の戦闘機が束になってもか
なわない。補給を断たれ、国内に不穏な空気が流れ始める。
そんな中、一連の事件で父親を失った少女が、父の遺品である日記から、謎
の高速飛翔物体の正体が、輝光石を動力源とする「飛光機」であることを知る
(あっ、いかん。「ラピュタ」入ってる。いかんなあ。どうやっても影響を受
ける)。
父の仇を討つべく、少女は輝光石を手に入れようと決意する。
おいおい、これだけか? という感じだが、これだけだ。ここから話がどう
も進まない。敵は飛光機の代わりに空中要塞でもかまわないという気もするが。
それでもって、敵空中要塞を飛光機で攻撃する訳だ。
余談ながら、「ラピュタ」の元ネタは、「ガリバー旅行記」に出てくる飛び
島ラピュタなのだそうだ(前述の「陸・海・空ビックリ大計画99」より)。
いや、知らなかったなあ。こういう風に、古典(?)からネタを取る(真似で
はない)話は嫌いじゃないので、何かいいのがあればやってみたいと思うのだ
が、今のところ思いつかない。元々筆者は古典的名作には詳しくないので。
2−3に続く