#3150/7701 連載
★タイトル (KCF ) 93/ 5/24 21:38 (196)
掲示板(BBS)最高傑作集53
★内容
(「掲示板(BBS)最高傑作集52」からの続き)
もちろん、E男、M男、Z男は、A子やB子とカップルになれる可能性などま
ったくありません。
ここまでは、男の側から考えてみましたが、女についても上記とまったく同じ
ことが言えます。
つまり、A子は一番かっこいいA男を指名し、B子、C子はそれぞれ、B男、
C男で妥協してカップルになることができます。
また、E子はダメでもともとと思いA男やB男を指名します。M子は何かの手
違いが起こってほしいと期待しながらA男やB男を指名します。Z子は自分でも
女の中で一番ブスだという自覚があり、やけになって、A男やB男を指名します。
もちろん、E子、M子、Z子は、A男やB男とカップルになれる可能性などこ
れぽっちもありません。
以上の説明で、ねるとんパーティーではどうしてカップルが必ず複数組できる
かが分かったと思います。
やがてスタッフが、「第1印象カード」を手に持って参加者のいる方にやって
きました。スタッフが、みんなから集めた「第1印象カード」を、指名された人
に配り始めたのです。
スタッフは、まず最初に、一番端のテーブルに腰掛けていた女に「第1印象カ
ード」を10枚ほど渡しました。その女は、私が「第1印象」で指名した女では
ありませんが、指名しようと思った2人の女のうちの1人です。その女も美人と
はほど遠い存在でしたが、醜女だらけのこのパーティーにおいてはかなり際立っ
ていました。
次にスタッフは、その女から5メートルほど離れたところにいた男に近づき、
「第1印象カード」を1枚だけ渡しました。つまり、たった1人の女がその男を
「第1印象」で指名したのです。1枚しかもらえないなんて情けないと思うかも
しれませんが、実際には1枚ももらえない人も大勢いるのであって、1枚でもも
らえてよかったと考えるべきでしょう。
続いて、スタッフは、各参加者の胸につけられた番号札をじっくりと見ながら
歩き続け、私の6メートルほど右にいた女の所で立ち止まりました。私が「第1
印象カード」で指名した女です。その女はどういうわけか、ぶすっとした表情を
していました。スタッフはその女に20枚ほど渡しました。やはり、他の男もそ
の女が一番かわいいと思っていたのです。その女はそれほどたくさんの「第1印
象カード」をもらったにもかかわらず、相変わらず不満げな表情をしていました。
やがて、スタッフは私の方へ向かって歩いてきました。私は思わず緊張してし
まい、胸がドキドキしてきました。スタッフは私の目の前で立ち止まったので、
私はニヤッと微笑んで右手を前に差し出しました。
スタッフは私に言いました。
「すみません。あなたの番号札は下を向いていて、よく見えないので、確認させ
てください。」
私はセーターに番号札をつけていたため、番号札が前に倒れて他の人からはよ
く見えない状態だったのです。私は差し出した右手をすぐに引っ込め、スタッフ
によく見えるよう番号札を立てました。
スタッフは私の番号を確認すると、何も言わず、何もくれずに次のテーブルに
歩いて行ってしまいました。
つまり、私を「第1印象」で指名した女は1人もいなかったのです。私はすぐ
にむっとしたのですが、私を指名した「第1希望カード」が1枚もなかったにも
かかわらずスタッフに「カードをください。」と手を差し出してしまったという
恥ずかしさのため、私は努めて冷静なふりをする以外ありませんでした。
やがてスタッフは私の約10メートルほど左にいた「ハンサム(このパーティ
ーにおいて)」な男の前で立ち止まりました。スタッフはその男に「第1印象カ
ード」を20枚ほど渡しました。
それを見た友達らしき男が、
「いいなあ、お前。こんなにもらいやがって。」
と大声で言い、その「ハンサム」な男をおもいっきり冷やかしていました。大量
のカードをもらった男は、照れながら頭をかいていました。
次に、スタッフはその男から左に7メートルくらい離れたところに座っていた
男の前で立ち止まりました。スタッフはその男に「第1印象カード」を5枚ほど
手渡しました。その男は、カードを受け取っても表情は変えませんでしたが、口
元がかなり緩んでいました。
「嬉しいくせに平静を装いやがって。」
カードを1枚ももらえなかった私は、嫉妬からか、このような言葉を思わずつ
ぶやいてしまいました。
スタッフが口元緩み男に「第1印象カード」を配ったところで、スタッフの手
にはもうカードはありませんでした。ということは、スタッフはこれで「第1印
象カード」をすべて配り終えたことになります。
つまり、52人も参加者がいて、「第1印象カード」をもらったのはたったの
5人だけだったのです。要するに、26人の男達の「第1印象」での指名は、た
った2人の女に集中し、26人の女達の指名は、たった3人の男に集中してしま
ったのです。私を含めた他の47人は、「第1印象」では誰からも気に入っても
らえなかったのです。
これからの話を分かりやすくするために、今後は「第1印象カード」を20枚
ほどもらった女をA子、10枚ほどもらった女をB子、20枚ほどもらった男を
A男、5枚ほどもらった男をB男、1枚もらった男をC男と呼ぶことにします。
スタッフが「第1印象カード」を配り終えたのを確認すると、司会者はマイク
で再び話し始めました。
「『第1印象カード』の配付が終了しました。カードをもらった人は、指名して
くれた人に必ず話しかけてください。」
「誰が自分を気に入ってくれているか、もう分かったはずです。話がしやすくな
りましたね。」
「それでは残りのフリータイムの時間、お食事と異性とのおしゃべりを再び楽し
んでください。」
私は、仕方がないので、A子が私に話しかけてくれるのをじっと待つことにし
ました。ところが、A子は20枚も「第1印象カード」をもらったにもかかわら
ず、相変わらず不満げな表情をしており、誰にも話しかける様子はありません。
しばらくすると、A男がA子の所へやってきました。A男は、A子の隣に座り、
何やらA子に話しかけ始めました。A子はさっきまでのぶすっとした表情から一
転して笑顔になり、A男と楽しそうに話を始めました。
その後、A子は、A男とずーと2人きりで話を続け、司会者のお願い(「第1
印象カード」で自分を指名してくれた人には必ず話しかけるように、というやつ)
をA子は完全に無視しているようでした。私同様、「第1印象」でA子を指名し
た多くの男も、A子から話しかけられるのをしばらく待っていたのですが、A子
はA男と話を続けるだけで、他の男には話しかけようとしません。A子を気に入
った男達は、A子がA男と楽しそうにツーショットになっているため、どうする
こともできませんでした。この歯がゆさは、「第1印象カード」でA男を指名し
た多くの女達も同じでした。彼女達も、A男がA子とべったりくっついてしまい、
ただ指をくわえて見ているだけでした。
しばらくすると、勇気ある男がA男とA子が座っているテーブルに強引に座り、
A子に話しかけ始めました。しかしながら、A子はその男を無視し、A男と話を
続けていました。その勇気ある男は、がっくりと肩を落とし、ばつが悪そうにA
男とA子のいるテーブルから去って行きました。
私はA子は完全に駄目だとあきらめ、第2希望のB子を探し始めました。とこ
ろが、ホールを片っ端から見て回ったのですが、B子はどこにも見あたりません。
「おかしいなあ。」と思い、バイキング料理の所へ顔を出してみたら、B子は
そこにいました。しかしながら、B子はすでにB男と2人だけになり、何やら楽
しそうに話をしていました。ときおり、B子とB男のいるテーブルにも、B子を
気に入った男が何人か近づいて来たのですが、B子があまりにも嬉しそうにB男
とおしゃべりをしているのを見て、結局はB子に話しかけずに去ってしまいまし
た。B子も、もう駄目です。
ふと横に目をやると、「第1印象カード」を1枚もらったC男がいました。C
男も1人の女とすでにツーショットになっていました。C男の相手の女は、A子
やB子と比べるとかなり見劣りする人でした。C男のテーブルは、A男とA子、
B男とB子のテーブルと異なり、外から邪魔が入るということはありませんでし
た。つまり、誰もC男とその相手の女には興味がなかったということでしょう。
ここまで見てきて、どうして「第1印象カード」でカップルが1組もできなか
ったのかがはっきりしました。
A子はA男を「第1印象カード」で指名したのです。ところが、A男は別の女
を指名したため、A子とA男が「第1印象」でカップルになれず、A子が非常に
不満だったのです。男は全員、A子かB子を「第1印象」で指名したので、A男
が指名した女というのはB子です。A男は、受け取った20枚ほどの「第1印象
カード」を見て、B子よりもかわいいA子が自分を指名していたことを知り、
「司会者のお願い」に従いA子に話しかけ、ツーショットになれたのです。
以上のことから、B子は「第1印象カード」でA男を指名しなかったことが分
かります。もし、B子がA男を指名していたのなら、「第1印象」でB子とA男
のカップルが生まれていたからです。これで、B子が「第1印象カード」で指名
したのはB男かC男のどちらかということになります。しかし、B子が指名した
男は間違いなくB男でしょう。というのは、もし、C男を指名したたった1人の
女がB子だったとしたら、C男は自分を「第1印象」で指名してくれたB子に話
しかけるはずで、現在一緒にいる女とツーショットになっているわけがないから
です。B子が指名したのは間違いなくB男です。とすると、B男は「第1印象カ
ード」でB子を指名しなかった、つまりA子を指名していたということが分かり
ます。C男とツーショットになっていた女は、間違いなく「第1印象カード」で
C男を指名したのでしょう。
何はともあれ、この3組のカップルはもう決定済みで、どうすることもできま
せん。他の男達にとって、この地点で、このねるとんパーティーは完全に白けた
ものとなってしまいました。なにしろ、「美人」の、と言うより一番「ましな」
A子とB子がいなくなったも同然となったからです。でもまあ、これは、男達だ
けでなく、A男やB男とカップルになれる望みが完全に消え失せた女達にもまっ
たく同じことが言えることではあります。
そんなわけですので、この2回目のフリータイムの時間中、3組のカップル以
外の参加者は、一緒に来た同性の友達とおしゃべりしながら、あるいは1人でぽ
つんと無言のまま、食事をしていたのです。つまり、ほとんどの人は、ねるとん
パーティーのフリータイムだというのに、異性とまったく話をしていないのです。
でも、みんながこういう行動を取るのはよく分かります。
「第1印象カード」はスタッフにより指名した相手に配られましたので、ほと
んどの人は気に入った異性に「愛を告白した」ようなものです。つまり、ほとん
どの参加者は、「愛を告白した」異性に話しかけてもらえなかった、つまり無視
された訳で、「愛を告白した」異性に「振られた」ような気分を2回目のフリー
タイム中は味わっていたのです。しかも、世間並の美人、ハンサム男に「振られ
た」のならまだ納得がいくのでしょうが、この会場を一歩出ればどうでもいいA
男やB男、A子やB子に「振られた」のですから、みんなが白けてしまうのは当
り前です。
私は、この白けた雰囲気を打破するために、
「こんなの、ねるとんパーティーじゃない!」
と大声で叫び、醜女でも構わないからと、近くに座っていた女に、片っ端から声
をかけてみました。
全員に片っ端から無視されました。
たちまち、このねるとんパーティーの会場内は、参加者が、火事でもないのに、
消火器の安全ピンを外して、一斉にレバーをおもいっきり握って中の白い泡を辺
り構わずまき散らし始めたような、そんな白けきったムードに包まれてしまいま
した。
やがて司会者の男女がマイクで話し始めました。
「そろそろ時間ですので、2回目のフリータイムを終わりにいたします。」
「みなさん、気に入った異性と話ができたでしょうか。」
「まだいくつかイベントがありますので、2回目のフリータイムで駄目だった方
もまだがっかりしないでください。」
「そうです。みなさん。まだこれからですよ。」
参加者の中で、司会者のこの励ましの言葉に、首を大きく上下に振って、うな
ずいている人は誰ひとりとしていませんでした。
司会者は言いました。
「それでは、これからゲームを行います。」
「女性の方は全員、踊り場に集まってください。」
司会者にこのように言われても、女達は誰も踊り場に行きませんでした。彼女
達は自分達の周りにいる女の出方をうかがっているようでした。つまり、誰か他
の女が踊り場に行かなければ自分も行かない、ということでしょう。
司会者は困った顔をして、再び女達に踊り場に来るよう呼びかけました。
「どうしたんですか、女性のみなさん。さあ、こっちへ集まってください。」
「今日は、恥ずかしがり屋の女性が多いみたいですね。」
「女性の方がこちらへ来てくれないとゲームを行うことはできません。女性のみ
なさん、お願いです。どうかこっちへ来て下さい。」
「お願いします。」
(「掲示板(BBS)最高傑作集54」に続く)