AWC 【いちゃもん突撃隊】その3 ワクロー3


        
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★タイトル (AKM     )  93/ 5/24   4:33  ( 67)
【いちゃもん突撃隊】その3    ワクロー3
★内容

 【いちゃもん突撃隊】その3

 買ったばかりのCDを、中古CDとして、たたき売ってやる。
 考えは明解でしたが、思わぬ障害が生まれてしまいました。店の
おやじがすっかりいこじになってしまったからです。

 『どこが気に入らないか説明します』
 『ええ、聞かせてください、うちの品揃えにけちをつけられたの
で店長として聞いておきます』

 まず交響曲1番からだ。

 『管楽器が全然なっていない。ホルンだ。彼の交響曲でホルンが
いかに重要な存在か、あなた知っていますか。それが、常にばらけ
ているんです。他のどうでもいいウゾウムゾウのつまらない作曲家
のありふれたくだらない曲ならそれでもいいでしょう。でも、この
人の曲ではそれが許されません。そうしたオーケストラ自身の基本
的な部分ができていない。録音までするくらいのオーケストラが、
このていたらくである。しかも指揮者は、ホルンが乱れても構わな
いという態度で、この曲を演奏させた張本人です。これがまず許し
がたいことです。なんだ、この指揮者は楽器の演奏さえ調教できな
い指揮者なのか。くだらねえ、1からやりなおしてこい。そう思っ
たんです』

 僕は息を吸い込んだ。こんなことはまだホンの序論に過ぎないの
だ。

 『しかし管楽器が乱れただのどうだの、どうでもよいように思わ
れるかもしれん。それは実際些末なことでもある。それは分かって
いる、朝比奈隆が大阪フィルを指揮した実況録音盤であっても、チ
ェリビダッケの昔の録音でも、聴いているとホルンは乱れているこ
とがある。それとどう違うのか。あんたのような、ど素人はそうい
うだろう。ところがこのオーケストラときたら、まったくもって全
然だめなのです』

 僕は前にも増して息を吸い込んだ。大量に息を吸い込まなければ、
怒りとともに吐き出す空気の量が多いのだから酸欠で失神してしま
う。

 『このオーケストラとそれを指導して録音に臨んでいる指揮者に
は、この交響曲全体を解釈する力がないのが1楽章を聴いただけで
はっきりするのです。それはもう許しがたいほどです。最初の主題
が盛り上がって行く1楽章の終わり、主旋律がバイオリンが増幅し
ていってそれをチェロで響かせて、そうして次にトロンボーンが堂
々と響かせるところがあるのです。そこがここの聴きどころなんだ。
そいつをなんだ。このくそみたいなオーケストラは、ぐにゃぐやん
ぐにゃぐにゃ演奏して、なにもかもぶち壊しにしているではないで
すか』



 『お客さん』

 店長が、ぼそっと僕につぶやいた。

 『それは、お客さんが、そう受け取っただけでしょう。みんなが
みんなこの録音を聴いて、そう思うわけがないですよ』

 き、き、き、貴様。せん滅してくれる。


僕は暗い決意をますます強固にした。


       (以下次回)





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