AWC お題>雨   金剛寺 零


        
#665/1336 短編
★タイトル (ZWN     )  96/10/20  20: 1  ( 58)
お題>雨   金剛寺 零
★内容

             「雨」

                      金剛寺 零

「母さん。今日、降るっていってた?」
 私こと隆治が、母に向かっていった。私は、中学3年で、再来月
から受験を控えているものである。
「大丈夫って言ってたわよ」
 母がベランダから言った。外は雲が少しはあるが晴れていた。
 私は、「言ってきます」と言うと、玄関を空けて、学校へと向か
った。学校までは徒歩で20分くらいの距離である。私はその道の
りを少し速いスピードで歩いていく。
 学校についたて、全ての授業が終わるまでは晴れていた。部活中
から徐々に雲行きが怪しくなってきた。
「降るんじゃないの?」
 私の友だちが言う。私もそう思っていた。
「母さんめ。よくも嘘を・・・」
 私は腹の中でそう思っていたが、言葉には出さなかった。
 部活に熱中しているうちにそのことを忘れていて、帰りぎわに傘
を持っていないことに気がついた。
 外は真っ暗になっていて、思った通り降っていた。それも、とて
もひどい降り方である。濡れて帰るにも、それ相当の覚悟が無い限
り無理である。
 私はしょうがなく、少し弱まるまで、ここにいることにした。時
間を見ると、外の暗さからは考えられない時間だった。まだ5時で
ある。いくら秋が深まってきたからと言って、これほど暗くはなら
ないと思った。
「参ったなぁー」
 私はそう言うしかなかった。本当にそんな気持ちだったからであ
る。  
 それから1時間くらい経ったであろうか。ある程度は弱まったが
それでも、返るのには決心が必要だった。私は、それでも、もう帰
ろうと決心して、1歩外へと踏み出した。その時、私の後ろから瑞
希と言う同級生の女子が声をかけてきた。
「こんな中を傘無しで帰るの?」
「あぁ、もうここにいてもしょうがないからね」
 私はそう答えた。瑞希は後ろに腕を回していた。以下にも何かを
隠しているといったようだった。
「瑞希こそ、何で残ってるんだよ?」
「えっ、私。生徒会でちょっと残ってただけ。今、帰ろうかなぁっ
て思ってたと頃よ」
 瑞希は少しあせっていた。そして、
「私、傘もっているんだけど、中、入ってく?」
 瑞希はそう言った。
「いいのかよ。俺と一緒で、誰かに見られたら困らないか?」
 私はそう言った。本当はクラス1の美人と一緒に帰れることを喜
んでいるのに。
「うん。私、前から隆治君のこと好きだったから」
 瑞希はそう言った。
「おっ、俺も実を言うと、瑞希のこと好きなんだ。だけど、言えな
かった・・・」
 私はそう言った。そして、瑞希の傘に入りながら学校を出た。
「母さん。ありがとう」
 私はそう心の中で思った。
 いつの間にか空は晴れ渡っていた。が、私と瑞希は家に帰り着く
まで傘を閉じなかった。二人の愛のを実らせた傘を・・・。   
    




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