AWC お題>チョコレート  $フィン


        
#554/1336 短編
★タイトル (XVB     )  96/ 2/18  15:21  ( 34)
お題>チョコレート                       $フィン
★内容

 優しそうなおねえさんが君を機械じかけの椅子に進める。これから君のサイボ
ーグ手術の始まりだ。
 君はいくぶん足をふらつき、顔が青ざめ、サイボーグになるために電気じかけ
の椅子に座る。
 同年輩のものがすべてサイボーグ手術を行ったというのに、君だけがまだ手術
を受けていなかったのだ。健康だった器官がぼろぼろにやられ、君の母親が気づ
いたころは、その器官はもう駄目になって死にかけていた。このままでは、他の
臓器にまで影響が出てくるだろう母親はそう判断し、君を手術されるためにここ
までつれてきたのだ。
 これも皆、君のためなのだ。君を産んでくれた母親は嫌がる君を叱りつけて、
嫌がる君をここまで連れてきたのだ。
 君は唯一母親から買って貰ったお守りのハンカチを握りしめ、手術台に座る。
医者は白衣をきて、君が来るのを心持ちにしていたように、君を見つめている。
恐ろしさのために、君は震える。
 ががが・・・ドリルの音がどこからか鼓膜に響いてくる。あ〜ん、あ〜ん、嫌
だよぉどこかで泣いている同胞の声が聞こえる。君はここから逃げ出したいのを
我慢している。
 さあ、白衣を着たドクターがやってきた、いよいよ君の番だ。君は悲鳴をあげ
ることなく、ドクターの指示に従う。麻酔を効かしたが、君の意識は保ったまま
だ。意識を無くさないことがこの手術の特徴だ。君はぼろぼろになった器官が、
ドリルでぼろぼろと削られていくのが分かる。きーん、きーん、きーん、耳ざわ
りな音が耳に響いてくる。手足はときどきぴくんぴくんと動き、そのたびに医者
が痛くないか、痛くないかと君に尋ねる。君は、ううううと痛さのために、うま
い返事を返すことができない。早く終わってくれいと君は心の中で念じる。だが
そうやっているうちにも、サイボーク化は進んでいく。君の数パーセントが人造
のものに替えられようとしているのだ。
 どれぐらいたったのだろうか。君は涙をため、サイボーグ化が終わったのがわ
かった。もう自分の身体ではない他のものの身体になってしまったという哀しさ
はあまりなく、やっと手術が終わったという安堵感の方が多い。

 こうして君の手術は成功した。サイボーグになった君は、これからはチョコレ
ートを食べても痛まなくなったのだ。
                                $フィン




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