AWC 「終焉の時」/Tink


        
#440/1336 短編
★タイトル (DRH     )  95/ 4/23   7:49  ( 33)
「終焉の時」/Tink
★内容
「終焉の時」


 私は独り丘の上に座っていた。
 頭上には、異様な程肥大し、どす黒い血で描いたような太陽が登って来る。
 また、眼下には、そこに在ったであろう街並みは、もう既に無く、何処までも続く
風化したコンクリートの砂漠だけが広がっていた。
 すべての破局は、忍び足でやって来て、誰も気がつかない内に蔓延していた。
 昔から、色々と考えられてきたような直接的な破滅では無かったのだが----。
 全ての始まりは、出生率の異常な低下だった。
 色々な要因が重なり、遺伝子情報の欠落や異変。
 肉体的兆候は無くとも、精神的に異常をきたす人々。
 また、異常とも言えるスピードで進んだ太陽の赤色巨大化。
 すべてが一つの方向へ向かう時、各地での集団自殺や集団殺戮が起こった。
 エントロピーは増大し、無限大へと暴走を始める。
 全ては静かに始まり、静かなる終わりの時を迎えようとしていた。
 やがて私は地球と共に太陽に飲み込まれ、意識だけの存在になる。
 ここにいたと言う人間たちの思いだけが残る。
 全ては終焉へ向かい、統べては一つへと統合された。
 神により、楽園を追放されたアダムとイブのように、終末は次なるステップへと進
む為の始まりでしかなかったのだ。
 無意識として繋りを持っていた人と言う存在は、肉体と言う殻を破り私へという存
在になった。
 人と言う存在が残して来た歴史は、私独りにより繰り広げられた茶番劇でしか無か
ったのだ。
 なにもかもが、分かっていたことだった。
 やがて太陽はノヴァへとなるだろう。
 全ての終わりは全ての始まりでしかなく。
 全ての始まりは全ての終わりでしかない。
 私はその間、少し休んでいよう。
 始まりのその時まで----。

                                 (おわり)




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