AWC 星座の話 <さそり>      そあら


        
#369/1336 短編
★タイトル (KCH     )  95/ 1/13  22:51  ( 69)
星座の話 <さそり>      そあら
★内容
「もうすぐつくからね」
 おかあさんはそう助手席のところから後ろに座っているマー君にいいました。
「うん」
 暗くなった空をぼんやりと眺めていたマー君は小声で答えます。
 車の中にはいってくる光といえば、所々に道の居場所を指し示す古い外灯だけ。
 面白みなどは全然ありません。マー君はうつらうつらし始めました。
 ううぅぅぅぅん ぱちっ
「よぉっし、ついたぞ」
 お父さんが大声で、安心したようにいいます。
「マー君、寝てない?」
 お母さんが助手席から顔を出しました。
「う、うん。寝てない」
 眠たそうな声でマー君はいいました。

 車からでると、周りは真っ暗で何も始めは見えませんでした。
 けれど、だんだんと目がなれてくると星が空に瞬いていました。
 今日は月はありません。
 いつもより多く星があるように見えます。
「ね、ね、あの赤い星ってどんなの?」
 空の砂粒の多さに眠気なんて何でもないと行った様子でマー君が近くで煙草を吸っ
ているおとうさんに尋ねました。
「どれだい? ああ、あれはね「アンタレス」っていって「さそり座」の中の星だよ」
「「さそりざ」?」
「そう。あのさそりはね、オリオンっていう大きくて、とっても強い人をやっつけた
から、神様が空にあげてくれたんだよ」
「それじゃぁさ、そのさそりより強いのってないの?」
「うーん。……おとうさんはしらないなぁ。いないんじゃないかな? だって、オリ
オンでさえもさそりにやっつけられたんだからねぇ」
 煙草を下に落として、火を消しながらそうマー君にいいました。
「ほんっとうにいないの?」
 マー君はしぶとく食い下がります。
 おとうさんが困った顔をしていると、おかあさんがきて、
「あ、おとうさん、また煙草吸ってたでしょっ!」
「うん、吸ってたよ」
 マー君は正直に答えました。
 おとうさんはバツの悪そうにうつむいて、いいました。
「……すまん」
「今度やったらお小遣いなしですからね。さ、もう遅いから早く家に入りましょうね」
 マー君たちは玄関の明かりのついた、自分の家に入っていきます。
 ひとつ、流れ星が流れました。

 夢をマー君は見ました。
 オリオンがさそりにやっつけられていました。
 マー君はそばにいたのですが、さそりは見向きもしません。
 いつのまにやら、さそりが倒れたオリオンの上にはい上っていました。
 そして。
 ぱっっ
 さそりがとつぜん消えてしまいました。
 マー君があたりを見回しても、さそりの姿はありません。

 目が覚めるとまだまっくらです。
 おとうさんとおかあさんはまだふとんにくるまっているようです。
 マー君は、ねまきのまま、下におりていきました。
 玄関でおとうさんのサンダルをはいて、外にでると相変わらず星がたくさんいまし
た。
 マー君は空を見回しました。
 昨日の赤い星を探しています。
 あたりが明るくなりはじめました。
 その頃になってようやく「あんたれす」が見つかりました。
 もうすぐ山の中に沈みそうです。
 マー君はだまって「さそり座」を見ていました。
 すると、だんだん星の光が薄くなっていくではありませんか。
 しばらくすると、あれだけ周りにたくさんあった星がすべて消えてしまいました。
 そのあとすぐ、空が青くなって、今までなかった強い光がマー君を照らしだします。
 日の出です。
 マー君はぼそっとつぶやきました。
「さそりより強いのってお日さまだったんだ……」

                                                                  <了>




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