#296/1336 短編
★タイトル (SKH ) 94/ 8/21 10:26 ( 34)
>ケガレ バチャイBROS
★内容
赤い日が沈んでいく。それも海の中へ。赤に染まった海に太陽が接するとき確かに
「ジュッ」って音を聞いた。ハローだ。間違いなくハローだ。もうすぐ夜がやってく
るハローだ。ああ、おバカさん。
「ほらみろ、ジュッていっただろうが」
「ねえ、そんなことより、ちょっと泳がない?」
「今からかよ」
言うが早いか、すでに女の手が男の二の腕をとらえていようとは、ああビックリ仰天
弥勒菩薩。
二人は泳いだ。泥のような夕暮れ時に。血液よりも赤く、何処までもまとわりつく
粘液的なこの「ジュッ」ていった太陽の湯浴みする桶の中で。ねばー納豆、ねばーギ
ブアップ。二人は静かに沈んで行く。どうってことないさ、二人は力つきたのさ。で
もね、人間はね、根性さえあれば海の中でだって呼吸できるんだよ。根性さえあれば
ね。やってみる価値はあると思うね。そうでしょ、たぶん。
「ゴボ、ボガガ、ビグボガボボボボガバグバババ」
「パパ、ポパコパ、パパピカピ、ポポキプクケププパパププ?」
「グバビボボ!」
「クプププポーカポポ」
これはつまり、
「でも、おれは、ジャックマイヨールじゃないからな」
「ねえ、それより、わたしたち、どこにむかってるかわかる?」
「わかるかよ!」
「竜宮城かもよ」
二人そろって無責任だから、言ってることもやってることも何の意味もなかった。ピ
ーとかパーとか言う発信音を出すだけの機械でも良かったんだなこいつらは。でも死
んじゃあいない。二人は海草と小魚を食べ、抱き合い、キスをし、ファックし、眠り、
やがて浜辺にうちあげられた。
男は波打ち際で軽く頬をなでられ目を覚ました。間延びした間抜けなあくびをしな
がら、髪の毛を後ろになでつけようとして、髪の毛はおろか全身の毛が抜け落ちて水
中抵抗のない体になっていることに気がついた。
「おい、おきろ、おれ達毛がねえよ、一本も」
「エッ、ケガレ?」
「ばか、毛がねえんだよ!」
ビンゴビンゴビンゴ。