AWC お題>きみのおもいで>文月去なば 2   永山


        
#4909/5495 長編
★タイトル (AZA     )  99/ 8/18   0:16  ( 74)
お題>きみのおもいで>文月去なば 2   永山
★内容
 山藤はここに至って、ようやく酔いから回復し始めていた。雲の上を歩くよ
うな頼りない口調ながら、問い返すことができた。
「後始末って……その、つまり……君が地球を滅亡させるのかい? うひゃひ
ゃ、そりゃあ傑作だ」
「いかなる人間でも、地球を滅亡させるのは難しい。人類皆殺しならまだ分か
らないがね」
 答える松下は真顔だった。流暢な口ぶりで、粛々と続ける。
「地球を滅亡させるのが無理なら、次善の策を取るべきだ。しかも、なるべく
簡単な策を。考え付いたのは、僕の小四のとき賭けについて知る人間を……分
かるだろ?」
「……分からん」
「賭けについて知る人間と言っても、あのとき賭けに乗ってきたのは君一人だ。
            、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
君以外のクラスメイトは、僕の言葉を冗談だと思ったのだ。そうに違いない。
故に、始末しなければならない人数はたったの一人」
「一人」
 ごくりと鳴ったのが自分の喉だとは、山藤は思いも寄らなかった。今はそれ
どころではない。
「たった一人を殺すだけで、僕の信条は守られる。地球を滅亡させるよりはず
っといい。思わないか」
「お、おもわ」
 言い終わるよりも早く、松下の両腕が近付いてきた。ふわりとした仕種で山
藤の頭を越えると、首に何か触れる感覚があった。ネクタイだ。その布切れの
両端を掴んだ松下の右手と左手とが、山藤の顎先で交差される。
「それでは、理解できたところで、あの世へ旅立ってもらおうか」
 ネクタイに力が込められた。

































 およそ三十年ぶりの再会に、二人は旧交を温め合っていた。
「あのときは真剣に焦ったよ。みっちゃんが本気で僕を殺そうとしているのだ、
そう信じてしまった」
「酔い覚ましに、驚かしてやろうと思ってね。迫真の演技だったろう?」
「だまされたのにはそれもある。しこたま飲んで酔っていたのもある。そして
何より、君の機転だね。参った」
「機転とはあれのことか。チューイングガムを含み綿に見せかけた」
「ああ。あれでてっきり、君が変装をしてきたものと思い込んでしまった。だ
が、ガムよりもっと強烈な奥の手まで披露したよな」
 山藤はにやりと笑うと、松下の頭を一瞥した。
「小四のときの秀才が、三十を前にして若禿に悩んでいたなんて、想像もでき
なかったね!」
「それを言うなよな」

――終




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