#4340/5495 長編
★タイトル (RAD ) 97/12/24 2:20 (188)
『遠い宙のマリア』--Tooi Sorano MARIA--(後書き) 悠歩
★内容
『遠い宙のマリア』あとがき。
如何でしたでしょうか。
悠歩のクリスマス物語第四弾。
四作の中では、最長の物となってしまいましたが、最後まで読んで頂けるのか
不安を抱えたアップとなりました。
このくらい続けると、ようやく「恒例」と言われても恥ずかしく無くなったよ
うな気がします。
さて、これを読んで下さっていると言うことは、本編も読んで頂けたのだと思
います。それとも、これからでしょうか。
とにかく、ここからは過去のクリスマス作品のことや、今回の作品について、
思いつくまま書こくことにします。よろしければ、いましばらくおつき合い下
さい。
『後継者たち』1994年。
悠歩のクリスマス物語の、記念すべき第一弾。
きっかけは前の年の12月、ある雑誌社のネットの小説SIGで出会った作品
でした。未来の世界のサンタクロースを描いた小説。
それを読んで、私も来年のクリスマスには、何かサンタクロースを使った物語
を書いてみようと思い立ったのです。
そして翌年、夏の終わり頃からだったでしょうか、製作を始めたのが、拙作、
『後継者たち』でした。
コンセプトとしては、サンタクロースを使うこと。そして、現実にあるどうに
もならない出来事を折り込んで行こうと言うこと。
当初、四人の子どもたちが目にした四つの出来事。これに対し、全く子どもた
ちは無力のまま終わる予定でした。救いのないクリスマスを描くつもりだった
のです。それが何故かあんな形になりましたが(笑)
『後継者たち』と言うタイトルは、なるべくクリスマス物語を事前に悟られぬ
ようと付けました。
『サンタクロースはヒットマン』1995年。
前の年の『後継者たち』が思いの外、評判がよく二匹目のドジョウを狙ったと
作品と言ってもいいでしょう。
前年同様、クリスマスと結びつきの遠そうなもの、と考え選んだのがヤクザ。
ヒットマン(殺し屋)を中心にした物語、を書こうと思い立った作品。
しかし狙いすぎたのでしょう。前年に比べると不評でした。
特にあのラスト、私としては含みを残したつもりだったのですが、単に夢オチ
としか取れない形になってしまいました。
どうも作品を書く上で邪心を持ってしまったものは、結果が良くないようです。
この作品から、イヴの日に発表する形となりました。
『雪舞い』1996年
前年の不評を受けて書いた、第三弾。
失敗のまま終わるのが悔しくて、書くことだけは決めていたのですが、物語が
なかなか出来ない。
早いうちから、オカルト的な物語にしようとだけ、考えていました。それが春
頃、イメージとして夜の古寺、墓場で踊る妖怪たち、それを見ている幼い兄妹、
そして後ろにはクリスマスのイルミネーションに輝く街。
と言うものが出来ていました。ところが、具体的な物語となると、さっぱり浮
かんで来ない。悩んでいるうちに夏となり、秋となり………
そこでようやく、ホワイト・クリスマス………雪、雪女の物語にしようと、思
い立ちます。
無理矢理サンタクロースと結びつけてしまったことが、少々自分でも心残りと
なりましたが、それなりに私らしさの出た作品になったと思っています。
そして。
『遠い宙のマリア』1997年。
『雪舞い』を書いているとき、既に次はSF的なものをと考えていました。そ
の時はスペース・オペラを想定。
しかし私が本格的なSFを書いたところで、それを専門に書いて来た方々には、
とても太刀打ち出来ない。そこで映画『クリスマス・ツリー』にSF的要素を
加えた物語は出来ないだろうか? それで出来たのが今年の『遠い宙のマリア』
です。結果を見れば、映画『ニューヨーク東八番街の奇跡』みたいな作品になっ
てしまいました。
全体的には、盛り上がりに乏しい作品になってしまったかも知れません。
そう言えば昨年の『雪舞い』の感想でも、薫さんからそうようなことを言われた
覚えがあります。結局私の作風が会話や、独白部分に時間を掛けてしまうところ
に原因があるのかも知れません。
今回初めての試みとしてPC−VANのSIG、AWC(アマチュア・ライター
ズ・クラブ)を中心に活躍されている、寺嶋公香さんの協力を得て、同氏のシリ
ーズ作品、『そばにいるだけで』のキャラクターたちに登場願ったことが特筆さ
れます。
発端は同SIGにアップした拙作【迷昧】の製作。
96年の冬、永山さんから私の作品についてメールで意見を頂く機会がありまし
た。永山さんはこのハンドルの他、幾つかのペンネームを使い分け、精力的に作
品を発表されている方です。そのメールをきっかけに、私が「いつか書く」と言
いながらなかなか手を付けなかった、推理物のジャンルへ、それを得意とされる
永山さんの力を借りながら挑戦することとなりました。
それが【迷昧】ですが、その製作途中、アドバイスを頂くために頻繁にメールを
やり取りしている中、思い切って永山さんへあるお願いをしました。
永山さんが寺嶋公香の名で書かれている、『そばにいるだけで』のキャラクター
たちを、今度のクリスマス作品で使わせてもらえないかと。
以前から、今年の作品には何か特別な事をしてみたい。誰か他の作家に協力して
もらえないだろうか、と考えていました。方法について、幾つか案があり、その
一つが、キャラクターを借りること。
ただこれには難点が有りました。漫画やアニメなど、直接視覚へ訴える媒体なら、
別の作品のキャラクターが登場すれば、すぐに分かります。ところが文字のみで
伝える小説では、誰も気が付かない可能性も高い。
その中で寺嶋さんの『そばにいるだけで』は、現在も進行中の長期シリーズであ
り、AWCの中での知名度も高い。キャラクターたちや、世界観も素直で使いや
すい。何より私自身、このシリーズを楽しみにしているファンであること。
さらにはこのシリーズの番外編としてクリスマス作品を書かれていたこともあり、
そのことで私が秘かにライバル視していたこと(笑)もありました。
そして快諾を頂き、今回の拙作へ涼原純子、相羽信一らのキャラクターが拙作、
『遠い宙のマリア』に登場する運びとなりました。
製作に当たっては、楽しみが無くなると言う事で、物語については寺嶋さんにも
明かさず、『そばにいるだけで』のキャラクター・シーンのみチェック頂く形で
進めていきました。その際、関連シーンのみ先に進めると言うことはなく、私の
通常のペースのまま寺嶋さんにおつき合い願ったため、大変ご迷惑をお掛けしま
した。
寺嶋さんにはこの場を借りて、お礼申し上げます。
『遠い宙のマリア』登場人物について。
マリアと駿については、ほとんど苦労なく設定が作れました。元々、物語を作っ
た時点で同時に出来ていましたから。マリアのネーミングについては、説明する
までもないでしょう。読んで下さった方の、想像通りです。
岡野良太・美璃佳の兄妹。
この兄妹の設定は、先に述べました昨年の『雪舞い』が決まる前の予定。妖怪と
兄妹の話に考えていたものです。
書き始めた当初は、良幸と茜と言う名前でした。けれど「よしゆき」と発音して
みて、幼い子どもを想像しにくいのではないか? と考え良太(りょうた)へ変
更。茜が美璃佳に変わったのは、そのついでです(笑)
それに伴って、そこまで書き進んでいた部分も名前を差し替えるのではなく、最
初から書き直すことにしました。
良太は家庭の事情により、年齢よりもしっかりしたところのある男の子。と言う
設定なのですが、美璃佳に比べて描写不足だったように思われます。
この兄妹こそ、過去三作に於いても私が拘ってきたものを、本作に引き継いだキ
ャラクターと言っていいでしょう。
クリスマスにそぐわない物をクリスマス物語に折り込む。『後継者』では少女売
春や戦争、被爆した子ども。『サンタクロースはヒットマン』では殺し屋。
『雪舞い』では妖怪。そして本作では、親に愛されない子ども。今回、別に何か
を訴えようとしているつもりはありません。ただこういった事もあるのだ、そう
した子どもたちがどんな想いをしてクリスマスを迎えているのだろう。そんな事
をいち素人書き手として物語にしてみたかった。それだけです。
「子どもを愛さない親がいるものか」ドラマや小説ではよくある台詞です。けれ
ど悲しい事に、この台詞は正しくありません。事実この作品が書き上がるまでの
期間、一年ほどの間に何人もの幼い子どもが、実の親の手に掛かって命を失って
います。生まれたばかりの赤ん坊が、母の手で命を断たれています。
私の作品の中の兄妹は幸運にも救われますが、書きながらこれらの報道を耳にす
るのはさすがに心が痛むものがありました。
西崎愛美。
作品を書き出す前、若葉荘の住人について設定した中で一度ボツにしたキャラク
ター。他にヤクザ者とか新興宗教の信者とか、あったんですけど。
愛美がボツになった理由は、良太たち兄妹と境遇に重なる部分があること。とこ
ろが寺嶋さんからキャラクターを借りる話がまとまった時点で、彼女らを本作品
に絡めるための仲介者が必要となりました。作中の美璃佳が迷子になるエピソー
ドは早い時期に決まっていたのですが、それだけでは弱い。良太たちの母親と、
相羽信一の母親が、仕事上の昔なじみだったと言うアイディアを寺嶋さんから提
供しても頂きました。がそれだけでは『そばにいるだけで』のキャラクター、特
に信一が本作に深く関わる理由が少し弱い。で、信一に仄かな想いをよせるとい
う設定で愛美を復活させました。
『そばにいるだけで』のキャラと絡めない、一度ボツにした設定では愛美は小学
生になるはずでした。が寺嶋さんとの話がまとまったとなると、純子たちと同学
年であった方がいいだろうと考えました。当時『そばにいるだけで』のキャラク
ターは小学六年でしたがクリスマスには中学一年生になっている。そんな訳で、
愛美も中学一年生に。
結果として作品がこれ程長くなったのも、この愛美の復活による部分が多い(笑)
けれど私としては愛美の復活も、学年の変更もいい結果だったと満足しています。
その分北原の老夫婦の出番も、削られることになりました。
ちなみにこの愛美のキャラクターは事前に寺嶋さんの『そばにいるだけで8』を
始め、同シリーズに直接的・間接的に登場させて頂いています。或いは同シリー
ズのファンの方は、なかなか本格的な出番のない脇役だと、不思議に思っていた
かも知れません。
北原の老夫婦。
これまで私の描いてきた物語の大半は、若い世代のキャラクター、主に子どもを
中心にしてきました。一方で悠歩は年配のキャラクターが描けていないという意
見を頂くことがあります。これは偏にまだ私が若いから(笑)
時代が変わり、流行りや考え方も変わっても一度自分の通って来た道はなんとか
想像出来るのですが、これから(当分先だけど)迎える道は想像しにくい。それ
を打破すべく用意したキャラクター。当初から登場させる事が決まっていながら、
設定については一転二転、なかなか詳細の決まらなかったものです。愛美の復活
でだいぶ出番を削られる事にもなりましたし。印象の弱い存在になってしまった
ことは否めません。
来年の抱負について(笑)
多少長くなることは予想していましたが、『遠い宙のマリア』は昨年の『雪舞い』
の四倍近い文章量となってしまいました。どうもこのシリーズ、書く毎に長くな
って行く傾向があるようです。
あと一作で五作と区切りのいいところ。ですがいまのところ、五作目を書くかは
未定です。遅筆のくせに、こうも物語が長くなってしまうと一年の殆ど、クリス
マス用作品に費やしてしまうことになります。それにこれだけの長編を無名の素
人が発表したところで、読んで下さる人がどれだけいるのかという不安もありま
す。これは毎回感じていることでもありますが。
とは言え、書くこと事態は好きなので、クリスマスでなくても何らかの形での作
品発表は続けて行くつもりです。
皆様とはまた、次作でお会いできたらこんな嬉しいことはありません。
最後までおつき合い頂き、ありがとうございました。
よろしければ感想・ご意見を下さい。
1997.12.24 悠歩