AWC 代償   第三部  24    リーベルG


        
#4266/5495 長編
★タイトル (FJM     )  97/12/12   2:30  (191)
代償   第三部  24    リーベルG
★内容

               24

 父親に付き添われて、遠藤メンタル・クリニックを訪れた祐子を迎えたのは、
穏和そうな笑顔を浮かべる男だった。
「ようこそ。院長の遠藤です」
「娘をよろしく頼む」
「私どもにお任せください」
 遠藤は自ら二人を、病棟の個室へと案内した。廊下は清潔で明るい照明が灯さ
れている。グリーンの服を着た頑健な体格の看護人とすれ違う。腰の曲がった老
婆に手を貸して、ゆっくり歩いていた。
「ここが祐子さんの部屋です」
 にこにこしながら院長が案内したのは、ホテルのスイートほどもある広い部屋
だった。壁も天井も白いクロス貼りで、大きめのベッド、ワイドテレビ、エアコ
ン、机、本棚、ドレッサーなどが置かれている。
「患者さんの安全のため、トイレと浴室は共同ですがね。不自由はないと思いま
すよ」
「そのようだな」祐子の父親は部屋を見て安心したように言った。「それほど、
長い滞在にはならないだろうが」
「もちろんですとも」
 父親が車で去った途端に、院長の笑みは消えた。
「さて、祐子くん」うって変わって厳格な口調で告げる。「わかっているとは思
うが、ここの規則には従ってもらう。君の父上はこの病院に多額の寄付をしてく
れたが、一人の患者だけを特別扱いすることはできない。いいね?」
「ええ、まあ」
「私に返事をするときは、はい、か、いいえで答えたまえ」
「え?」
 次の瞬間、祐子は力一杯頬を張り飛ばされていた。
「聞こえなかったのかね?」院長の顔にはひとかけらの笑顔も浮かんでいなかっ
た。「はい、またはいいえで答えるのだ。いいかね?」
「ちょっと、さっきとずいぶん態度が……」
 再び祐子は平手打ちを食らった。
「何度も言わないとわからないのかね?私や看護人に対して不敬な態度は許さな
い。わかったかね?」
「……はい」
「よろしい。では、持ち物検査およびに身体検査を行う」
「え?」
 またもや頬が鳴った。祐子は小さく悲鳴をもらした。
「学習しないな、君も」
「は、はい!」
「よろしい」
 ドアがノックされた。院長は振り向きもせずに答えた。
「入れ」
「失礼します」
 入ってきたのは、さきほどすれ違った看護人だった。その後ろに、同じ服を着
た男が二人続いている。
「やってくれ」
 部屋の隅には、スーツケースと2つのボストンバッグが置かれていた。先に送
っておいた祐子の身の回りの品である。一人の男が、祐子の許可を得ようともせ
ずボストンバッグを開いて、中に詰まっていた衣服を絨毯の上にぶちまけた。
「何をするのよ!」
 叫んだ祐子は、残りの二人が自分の方に近づいてくるのを見て、顔を強ばらせ
た。
「身体検査をしますよ、お嬢さん」一人が猫なで声で言った。「服を脱いでくだ
さい」
「すっぽんぽんになってね」
「な、なによ、いや、来ないで!」
 祐子は悲鳴をあげたが、男達は祐子をベッドに押し倒した。一人が両手をしっ
かり抱え込み、一人が手際よく服を脱がせていく。祐子は必死で抵抗し、叫び続
けたが、男達は意に介さず、助けもこなかった。
 あっという間に全裸にされた祐子は、脚を大きく開かされた格好でベッドに押
さえつけられた。
「院長、どうぞ」男の一人がうやうやしくいった。
「よしよし」
 院長はにたにた笑いながら近づくと、指をぺろりと舐めて祐子の陰唇にずぶり
と差し込んだ。
「いやあああ!」
「おやおや、結構慣れた感触だな。お嬢様だと聞いていたが、最近の高校生だけ
あるな」
「早くしてくださいよ、院長。後がつかえてるんですからね」
「慌てるんじゃない」
 院長はズボンを脱いだ。

「身体検査」は、1時間以上かかった。祐子は院長と三人の看護人に交替で犯さ
れた。四人とも避妊具をつけていたが、それは祐子のことを思いやったからでは
なさそうだった。
「これから、毎晩かわいがってやるからな」一人が言った。「楽しみにしてな」
「でも、結構慣れてやがったな」
「根が淫乱なんだよ」
 荷物はばらばらにされていた。下着や衣類が床に散乱している。秘かに隠し持
ってきた携帯電話は、あっさり発見され没収された。本やCDウォークマンやC
Dも取り上げられた。
「お前にこんなものは必要ない」
「父に言いつけてやる!」悔しさに涙ぐみながら、祐子は院長を睨んだ。「訴え
てやるから!」
「お前にそんなチャンスはないんだ」院長が言った。「今にわかるがね」
「そろそろ行きましょう、院長。めしの時間ですぜ」
「そうだな。荷物を片づけておきたまえ。きれいに片づいていたら、食事を与え
よう。合格しなければ、食事はなしだ」
「じゃあな、お嬢さん」
 四人は出ていった。
 残された祐子は、ベッドに顔を伏せて泣き出した。



 それからの数日で、ここが本当に地獄であることを、祐子は知った。
 朝は6時に起床だった。シャワーなどはなく、冷たい水道の水で顔を洗わされ
た。朝食はトースト半分とゆで卵とコップ一杯のミルクだけだった。
 朝食後は、治療の時間だった。拘束具を着せられ椅子に固定され、耳にヘッド
ホンをあてられ、奇妙な音楽をえんえんと聞かされるのだ。それは音楽というよ
りも、雑音に近かった。数分も聞いていると、頭ががんがん痛み出すが、逃れる
術はない。
 その後は自由時間である。ただし、その自由の範囲は、イベントルームと言わ
れる、やや広い部屋の中が全てだった。窓には鉄格子がはまっていたし、ドアに
は看護人が一人座っていた。
 集められた入院患者は20人ほどだった。老人から10歳ぐらいの男の子まで
様々な年齢層の人間がいる。半分は女性だったが、その中では祐子が一番若いよ
うだった。
 最初の日、とまどっている祐子に、一人の患者が近づいてきた。30歳ぐらい
の女性である。顔色が悪く、がりがりに痩せている。
「あんた、新入りだね」
「え?ええ?」
「あたしはナオコ。あんた、あいつらにやられただろ?」
「……」
「あいつらは女が入ってくると、いつもそうなんだ。最初に味見をするのは院長
なんだよ。あの人みたいなお婆ちゃんでもやっちまうんだ」ナオコは、そう言っ
て、祐子の祖母ぐらいの年齢の女性を指した。「あんたは若いから気の毒だね。
一体、何をやってこんなところにきたんだね?」
「わ、私は、ここに長くいるつもりはないんです」
 ナオコの顔に奇妙な同情が浮かんだ。
「あんた、誰かにだまされたんだね。ここはね、病気を直すところじゃない。人
を一生閉じこめておくところなんだよ」
 祐子は目の前が暗くなるのを感じた。
「そんなばかな」
「誰かが邪魔になって消えてほしい。だけど殺すわけにもいかない。そんな人間
が適当な病名つけて放り込まれるのさ。本当に病気なら、絶対に直らないし、正
常な人間でも絶対病気にさせられちまう」
「あなた、何を言っているんですか?」
「ここでうまくやっていく方法はひとつだよ」ナオコは目をギラギラさせて囁い
た。「やつらに逆らわないこと。おかしくなったふりをしてれば、やつらはひど
いことはしないんだ。やつらが好きなのは、普通の人をおかしくすることなんだ
から」
「おれのニワトリを見なかったか?」突然、一人の男が割り込んできた。「赤い
トサカのコッコッコを知らんか?ミミズを探しに出てったきり、戻ってこないん
だ。コケー!」
「こうなっちまうのさ」ナオコが言った。「何を下手に抵抗しない方がいい。さ
もないと、ひどい目に遭う。本当だよ」
 祐子が問い返そうとしたとき、ナオコは振り向いて去っていった。
「なあ、おれのコッコッコを知らないか?」
「あたしの子供が!」別の女が叫んだ。「子供が出てきそうだよ!生まれそうな
んだ!早く医者を呼んでおくれ!早くしないと、耳の穴から出てきちまうよ!」
「耳の穴!耳の穴!」若い男が叫び返した。「ぼくのチンチンは耳の穴に差し込
んで、じょぼじょぼやると、そこから悪い菌が入って腐って落ちちゃった。耳の
穴にはムカデが腐ったふんを溜めてるんだぜ!」
「あたしの子供!こどもおおお!」
 入り口に座っていた看護人が立ち上がった。つかつかと叫んでいる女性の方に
歩いていくと、無造作に腹を蹴りつけた。女性は悲鳴をあげた。
「ギャー!子供がああ!」
「うるせえ。静かにしろ!」看護人は怒鳴った。
「静かにしろ!」さっきの若い男が、その言葉を真似た。「ぎゃははははは」
 看護人は振り向いて男の顔を蹴った。若い男はたちまち顎を押さえてうずくま
った。
「世話を焼かせやがって」そう言いながら看護人は、凍りついている祐子を見て
にやりと笑った。「お前が新入りか。まだ高校生だってな。今夜を楽しみにして
な。おれの太いのでヒイヒイ言わせてやるからな」
 祐子はぞっとした。
 自由時間は、朝食と同様に粗末な昼食まで続き、その後は作業の時間だった。
祐子は古ぼけた作業着に着替えさせらて、机が並んだ部屋に連れてこられた。す
でに何人かの入院患者が座っている。
 祐子の前に箱が3つ置かれた。一つは空で、残りの二つにはそれぞれ異なる金
属製部品がたくさん入っている。祐子は2つの部品を組み合わせて、空の箱に入
れていくよう命じられた。
 作業自体は簡単だったが、問題は部品がざっと1000以上あることだった。
監督の看護人は、全部組み立てるまで夕食を与えないと断言した。祐子はおよそ
4時間にわたって作業を続け、その間、一滴の水も飲ませてもらうことができな
かった。
 夕食は、味の薄いシチューと茶碗一杯のご飯、それに漬け物だけだった。シチ
ューに入っているのは、ジャガイモとニンジンのかけらだけで、肉類は全くなか
った。
 夕食の後は、入浴に時間だった。浴室は狭く、しかも男女の区別はない。祐子
は他の数人の男女と一緒に、シャワーの下に並ばされ、ぬるいお湯で身体を洗っ
た。シャンプーなどはなく、質の悪い石鹸を順番に使い回していく。祐子は隣の
男が性器を直接ごしごしやった石鹸を受け取った。シャワーで石鹸の表面を洗お
うとした途端に、監督の看護人に怒鳴られ、やむなくそのまま身体を洗った。
 その後、まだ8時を過ぎたばかりなのに、消灯の時間となった。これは患者を
ゆっくり休ませるためではないことはすぐにわかった。祐子がベッドに入ると、
待ちかねたように二人の職員が入ってきたからである。
 祐子はできる限り抵抗した。だが、それは男たちの欲望をかき立てただけだっ
た。男たちは祐子をさんざんいたぶり、抵抗が少なくなったところで、順番にレ
イプした。
 その二人が出ていったとき、祐子は屈辱よりも疲労の方を強く感じていた。だ
が、安心するのは早かった。次の二人が入ってきたのだ。
 祐子が疲労困憊して眠りにつけたのは、午前4時過ぎだった。8人の男たちが
祐子を凌辱した後である。

 同じ日々が数日続いた後、祐子はナオコの言った意味を理解した。
 ここは正常な人間をおかしくする病院だったのだ。
 いっそ狂ってしまった方が幸せかもしれなかった。
 冗談じゃない。祐子は怒りをかきたてた。そんなことになっては、橋本由希を
喜ばせるだけだ。絶対に最後まで抵抗してやる。





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