#4261/5495 長編
★タイトル (FJM ) 97/12/12 2:25 (180)
代償 第三部 19 リーベルG
★内容
19
時間の感覚はとっくに消滅していた。何人の男に犯されたのか、それすら憶え
ていない。いっそ気を失うことができれば楽なのだが、そんな贅沢は許されてい
なかった。一度、疲労の極に達して、殴られても水をかけられても、深い闇の底
に沈んだままになったとき、祐子は何かの注射を打たれた。たちまち祐子の思考
は明晰になり、たまった疲労が拭い去られたように消えた。麻薬を打たれた、と
気付いたのはずっと後になってからのことだ。
何本もの男根を出し入れされた膣は、とっくに感覚を失っていた。容赦なく注
ぎ込まれた精液があふれ出しそうだ。途中で苦情があったのか、チューブを挿入
されて精液を吸引され、水で洗浄されたようだった。そのときに、ペットボトル
の水を与えられたことだけは憶えている。
「客」は無限に存在するようだった。そして、無限のヴァリエーションで祐子を
犯した。ある客はわざわざ祐子に学校の制服を着せ、それを中途半端に引き裂い
た段階で挿入した。ある客は祐子のへそを執拗に嘗め回した。ある客は持参した
子宮鏡で内部をじっくり観察した。ある客は挿入した後、結合部分を見ることを
強制した。ある客は長い時間をかけて乳首を嘗め回した後、男根を祐子の乳房で
挟んで顔面に射精した。
肛門性交を強制されたときは、祐子も必死で抵抗した。だが、それは苦しみを
長引かせただけだった。まずクリームを塗った指が突っ込まれ、その後男根をず
ぼりと突き刺されたとき、祐子は激痛のあまり絶叫し、失神しかけた。
SM趣味の客も何人かいた。ある客はろうそくを10本あまり消費し、祐子の
身体を蝋で覆い尽くそうとした。ある客は陰毛を炎で焼いた後、祐子にろうそく
を持たせて陰部に蝋を落とすよう命じた。ある客は祐子を縛り上げると、背中が
真っ赤になるまで鞭で打った。
耐えきれなくなるまで待ってから、祐子は尿意を訴えた。たちまち祐子は床に
座って脚を大きく開かされた。真正面にカメラが据えられ、尿管がふくらみ尿が
ほとばしるのをあますところなく捉えた。
最後の客は、まず祐子を縛り上げると、うずくまるような姿勢にさせておいて
から、太い注射器に水を入れ肛門から注入した。それから自分の性器で肛門に蓋
をし、祐子の性器には太いバイブを挿入した後、祐子の苦痛を楽しむようにじっ
くり時間をかけて射精した。それから、床で喘いでいる祐子の腰を高く持ち上げ
て、上からさらに肛門に水を注入した。祐子は必死で耐えたが、最後には水と便
と凝固した精液を火山のように噴出せざるを得なかった。
客が去ると、男達がバケツで水をかけて、身体の表面に付着した汚れを洗った。
「お客さんたちはみんな満足したみたいよ」由希が言った。
祐子は返事をするどころではなかった。由希への怒りや憎しみさえ、今は重要
ではない。シャワーを浴びて眠りたいだけだった。
「たぶん睡眠を取りたいんでしょう」由希は横たわった祐子を冷たく見下ろしな
がら言った。「今は昼の11時よ。たっぷり24時間以上起きてたことになるん
だから眠いでしょうけど、まだ駄目よ」
「お願い……」祐子は呻いた。「許して」
「そうはいかないのよ、朝倉さん」由希は薄く笑った。「でも、あまりぐったり
しててもつまらないから、少し休ませてあげるわ。部屋に運んで」
男たちが汚れたシーツを床に敷き、その上に祐子の身体を足で蹴って転がした。
両端をつかんで持ち上げると、部屋を出ていった。
「疲れただろう」克也が言った。
「さっき仮眠を取ったから大丈夫」由希は微笑んだ。「例の二人は?」
「刑事の方は喚いてる。榊はおとなしくしてるが、何を考えているのか。油断の
ならない男だ」
「どうしたらいいかしらね」
「始末するのが一番簡単だ」
「刑事さんの方はともかく、榊さんの方はまずいわ。こっちを調査した資料が残
っているかもしれない」
「じゃあどうする?」
「そうね……」由希は少しの間考えた。「……あの二人にも参加してもらいまし
ょう」
「はじめまして……というわけでもなさそうですね。少なくともそちらにとって
は」由希は微笑んだ。「私のことを嗅ぎ回っていたようですから」
榊は自分の置かれている状況も忘れて、由希を観察するのに余念がなかった。
美しく聡明そうな女性だ。穏やかな微笑を見れば、とても冷酷な殺人犯には見え
ない。それだけに危険な相手だといえた。
「おかげさまで」榊は落ち着いて答えを返した。「こちらの調査員がご迷惑をお
かけしたのでなければよろしいんですがね」
「そんなことはありませんでしたよ。ただ、もう少し訓練した方がいいと思いま
すよ。調査をしていることを、調査対象に気付かれるようではプロとは言えませ
んでしょう」
丁重な口調で言われた侮辱を、榊は胸の中にしまいこんだ。
「ところで、私はいつ解放してもらえるんです?」
「あなたを解放することは、とても危険なんですよ。ここから出たら、あなたが
最初にやることは近くの電話に走ることでしょうからね。違いますか?」
「違いませんな。依頼人が殺されるのを黙って見ているつもりはありません」
「どうして殺すと?」
「あなたはそうしてきたでしょう。藤澤美奈代も、天野志穂も」
「立証できますの?」由希はおもしろそうに訊いた。
「できません。残念ながらね。しかし今回は意表を突かれましたよ。本人ばかり
に目が行って、妹にまでは気が回らなかった」
「すでにご存じだと思いますが、私は妹を亡くしました」由希の顔から微笑が消
えた。「朝倉祐子たちのいじめに耐えかねて」
「だから同じ苦しみを、というわけですか。前の二人に妹がいなかったのは幸い
でしたな」
「全くです」由希は同意した。
「私の解放の話をしていたはずですが」
「ここは閉鎖されたラブホテルです。所有者は、ある事件で刑務所に入っていて
売却手続きが遅れています。だから誰も近寄ろうとしません。近くには民家もな
いし。このままあなたをここに放置しておいても、誰も気付かないんです」
「そうするおつもりですか?」
「そうしてもいいんです。でも、これ以上犠牲者を出すのは心苦しいので」
「ほう?」
「そこで考えたんです」由希は再び微笑んだ。「あなたにも共犯者になっていた
だこうと」
「は?」
榊はまじまじと由希の顔を見つめた。由希は振り向いて、無言で待っていた克
也に言った。
「いいわよ。入れて」
数人の男たちが入ってきた。ぐったりした祐子をぶら下げるように連れている。
「お嬢さん!」
祐子は全裸だった。意識はあるようだが、深い疲労が顔に刻まれている。榊の
顔を見たはずだが、何の反応も示そうとしない。
男たちは祐子を床に投げ出すと、ベッドに座っている榊の方に近づいてきた。
「な、何をするつもりですか?」
榊はベッドから立たされると、二人の男に両腕を固定された。三人目が榊のベ
ルトを緩め、ズボンを引きずりおろす。
「ちょ、ちょっと」榊は狼狽して叫んだ。「おい、やめろ!」
男達は構わず榊の下半身を裸にすると、ベッドに座らせた。続いて、祐子の身
体が持ち上げられ、榊の股間に顔が近づけられていく。
「やめろ、やめるんだ!」
「動くな」
静かな声で命じたのは克也だった。いつの間に抜いたのか、リボルバーを手に
している。銃口はまっすぐ榊の額を狙っている。
祐子のぼんやりした顔が男根に触れた。男の一人が祐子の口を開かせ、別の一
人がスパナの先端で男根を持ち上げると祐子の口にふくませた。
「お嬢さん!正気に戻ってください!」
榊はもがいて、意図せぬ口唇性交をやめようとしたが、男たちはそれを許さな
かった。一人が祐子の頭をつかんで、ゆっくり前後に振っている。
「やめろ!」
言葉とは裏腹に、榊は勃起し始めた。何と言っても相手は若い女性であるし、
榊も健康的な男なのだから。ここ一週間ばかりは、祐子の依頼で忙しく禁欲生活
を送っていたこともある。
フラッシュが焚かれて、榊は愕然となった。一人の男がカメラを構えていた。
隣では別の男がハンディビデオで撮影している。
「やめろ!撮るな!」
男が榊の男根を祐子の口から引き抜いた。しっかり固くなっている。男はそれ
を確認すると、榊をベッドに突き倒し、その上に祐子の両脚をまたがせた。
「やめろ!やめてくれ!頼む。こんなことはやめてくれ!」
祐子の腰が沈み、榊のものが深々と挿入された。祐子は少し呻いたが、苦痛を
感じている様子ではない。そのときになって、祐子がおそらく覚醒剤を投与され
ていることに気付いた。
さらに何枚か写真が撮られた。その中には榊の顔や局部のクローズアップもあ
った。
「もういいわ」
由希が言い、たちまち榊と祐子の結合は解かれた。榊はほっとした反面、残念
な気持ちも否定できなかった。
「こんなことをして何になるんですか?」榊は由希を睨んだ。
「まだやってもらうことがあるわ」
由希はそう言って、何かをベッドの上に放った。小さな折り畳み式のポケット
ナイフだった。
「それで、あなたのイニシャルを刻んで下さいな」由希は皮肉っぽく笑った。「
今日の記念に」
「はあ?どこに?」
由希は祐子を指した。
榊はぞっとしてベッドの上で後ずさった。
「じょ、冗談じゃない!」
「冗談じゃありませんよ、もちろん。場所は太腿の内側がいいですね。榊さんの
Sを刻んで下さいな」
「お断りします」榊はきっぱり言った。
突然、室内に落雷のような音が轟いた。榊は文字通り飛び上がったが、その直
後に右耳に焼けるような痛みを感じて、戦慄と共に克也の方を見た。銃口から一
筋の煙が立ち昇っている。
「次は耳がなくなる」克也は淡々と説明した。「その次は反対側の耳。その次は
右手の指だ」
「本気ですよ」由希が付け加えた。
榊はこの窮地を逃れる術を必死で探し求めた。ナイフを取って、由希に飛びか
かり人質にする、という手もある。だが臼井克也について聞いたことが半分でも
正確なら、半分の距離を進まないうちに射殺されるだろう。
「ひとつ訊きたいんですが……」榊は少しでも時間を稼ごうとして訊いた。「こ
んなことをさせてどうするつもりですか?」
「この写真とビデオがあれば、あなたは何もできないでしょう?」
「警察には強要されたのだと説明すれば罪には問われないかもしれません」
「警察に届けるつもりはないわ」
「じゃ、どこに?」
「彼女の父親。朝倉氏よ」由希は榊をじっと見つめた。「父親に向かって説明し
てみます?強要されたので、やむなくお嬢さんを犯し、イニシャルを刻みました
って」
祐子の父親は、国際的な顧客を持つ総合商社の取締役社長である。表向きは、
コンピュータや工業機械を第三世界に輸出することで利益を上げているが、いく
つかのダミー会社を通じて兵器輸出を行っていることを榊は知っている。きれい
事ばかりでは成り立たないし、事実、過去に何人もの競争相手や中間業者を葬り
去ってきた。たとえ事実を報告しても、榊が商売を続けていける確率は1パーセ
ントもないだろう。
「なるほど……刑事さんにも同じことをさせるつもりですか?」
「その子の左脚の太腿の内側を見て」
榊は言われた場所を見てショックを受けた。そこには楕円の形の傷がある。大
野川の「O」に違いない。
「刑事さんは先にやったんです。さあ、あなたもどうぞ」