AWC 代償   第三部  18    リーベルG


        
#4260/5495 長編
★タイトル (FJM     )  97/12/12   2:24  (200)
代償   第三部  18    リーベルG
★内容

               18

 スキンヘッドの男が、満足そうに唸りながら離れていったとき、祐子は苦しそ
うに喘ぎながら考えていた。
 終わった。もう終わったんだ。大丈夫。今日は安全日だ。ビデオを撮られたけ
ど、私だなんてわかるわけがない。
 もちろん、レイプされたこと自体は吐き気がするほどの屈辱だった。だが、今
の祐子はある種の満足感を感じてもいた。妹を守った姉、という役割に酔ってい
たのだ。
 由希が近づいてきた。
「今のビデオは、裏ビデオとして秘かに販売されることになるわ。これのコピー
をつけてね」
 そう言って由希が差し出した物を見て、祐子は叫びだしそうになった。
 祐子の生徒手帳だ。写真入りで、住所と氏名と生年月日が明記されている。
「返してよ!」
「紛失届を出すのね」由希はあっさり答えた。
 思い切り罵ってやりたかったが、さすがにその元気はなかった。祐子はそばに
落ちていた引き裂かれたブラウスをつかむと、それで胸を隠して身体を起こした。
「亜紀と一緒に帰らせてもらうわ」
 その途端、由希が驚いたように振り向き、続いてくすくす笑い出した。
「あなた、まさか、あれで済んだと思ってるの?」
「え?」
「まだお客さんが待ってるのよ。お客さんの一人ひとりに、あなたの身体を味わ
ってもらうことになっているの」
「!」
「そうねえ。一人1時間として、20人だから20時間。お一人様一万円」由希
は楽しそうに笑うと付け加えた。「あなたの身体の価値なんて、それでも高すぎ
るぐらいだけどね」
「い、いや。いやよ」祐子の身体が震えた。「もう、いい加減にしてよ!」
「加代もそう言ったでしょうね、きっと」
「だって……そんな、いやよ、絶対にいやよ」
「最初のお客さんに入ってもらって」祐子は克也に言った。
「私はやらないわよ!」
「いいわよ」由希は優しく言った。「亜紀ちゃんにやってもらうから」
「亜紀は関係ないでしょ!」
「関係あるわ。あなたの妹でしょう?」
 そのとき、ドアが開き一人の男が入ってきた。一目見て、祐子は嫌悪感に顔を
歪めた。40歳ぐらいの、でっぷりと太った男だった。確実に100キロを超え
ているにちがいない。ズボンなど今にもはちきれそうだし、半袖シャツの前はだ
らしなくはだけている。それほど長い距離を歩いてきたわけでもないだろうに、
ぜえぜえと呼吸を乱している。
「最初のお客さんよ」
「あんなのイヤよ!」祐子は拒絶した。「冗談じゃないわ。あんなブタみたいな
デブなんて見るのもいやなの!」
「口にききかたがなってないわねえ。さあ、どうぞ。この生意気なのを少し調教
してやってくださいな」
 デブがのたのたと近寄ってきた。涎を垂らさんばかりに祐子の全身を視線で嘗
め回している。
「いや」祐子は思わず後ずさった。「こないで」
「えらい可愛い姉ちゃんやな。やりまんやない、本物の女子高生や。ほんまに一
万でええんか?」
「ただでもいいぐらいですわ」
「ほな遠慮なく」
「いやああ!」
 祐子は逃げようとしたが、克也の後ろにいた男たちが素早く駆け寄ると、両手
をつかんで床に押さえつけた。
「さあ、どうぞ」
「やめて、やめて!私が誰だか知ってるの?」祐子は必死で叫んだ。「朝倉祐子
なのよ。朝倉総合商社の取締役社長の一人娘なのよ。あんたなんか、首にできる
んだからね!」
 デブは全く聞いていなかった。むしり取るように衣服を脱ぎ捨てると、ぶよぶ
よの腹を突き出しながら、祐子の上に覆いかぶさってきた。
「いやだ!やめて!」
「あんたが苦しめてきた人たちのことを思い出すのね」由希は冷酷に言った。
「いや、いや!どけよ、デブ野郎!」
 不意にデブが容赦なく祐子の頬を張り飛ばした。祐子の顔はものすごい勢いで
床にぶちあたった。
「うるせえんだよ、お高く止まりくさって。お前はおれが買ったんや。黙って、
おめこ濡らしてりゃいいんじゃい」
「やめろ!やめろよデブ!」
 反対の頬が張られた。耳の奥で鐘が鳴っているようだ。目の焦点も合わない。
「ほれ、いくで!」
 短いが太いものが入ってきた。恥辱よりも嫌悪感で呻いたが、抵抗らしい抵抗
はできない。デブは早くも汗をだらだら流しながら、緩慢な動きでピストン運動
を繰り返している。
「はあ、はあ、どうも寝転がっとるとやりにくいわ。バックからやるわ」
 腕を押さえていた男たちが、祐子の身体をひっくり返した。
「いや!こんな格好はいやよ!」
「ほら、もっと尻突き出しいな」デブは祐子の尻をぴしゃりと叩いた。「はよせ
んと、ケツの穴にぶちこんだるで。そっちは処女やろ、ん?」
 祐子は悔し涙をこぼしそうになりながら、腰を突き出した。尻の肉にデブの指
が食い込み、再び男根が入ってきた。
「ああ、こっちの方が具合ええわ」
 デブの動きが激しくなった。祐子は呻いた。顔が床にこすりつけられているの
が屈辱だった。
「ああ、もうイキそうや。中で出してええんやろ?」息を切らしながらデブが確
認した。
「どうぞ」由希は気前よく応じた。「お好きなところに」
「ぐうおお。いくで、いくで!」
 祐子は歯を食いしばった。
 次の瞬間、体内に熱い液体が勢いよく放出されるのがわかった。
 祐子の性体験は数えるほどでしかない。中学のとき、興味本位で家庭教師の大
学生と関係を持ったのが最初だった。家庭教師は大学の講師だったが、祐子の父
親に関係を知られるのを恐れてすぐにやめてしまった。高校に入ってすぐクラス
メイトの男子と付き合い、4回目のデートのときホテルに入った。その男子とは
数ヶ月続いたが、祐子の方が飽きてしまい一方的に別れてしまった。その後、一
年上の先輩と何度か関係を持ったが、これも長くは続かなかった。
 好奇心を満たしてしまった後、セックスに対する興味はやや薄れたが、避妊に
は神経質なぐらい気を使っていた。妊娠を恐れたというよりも、体内に男の精液
を放出させることは、相手に敗北するような気がしていたのだ。
 そして今、立て続けに二人の男の精液がぶちまけられた。敗北感は想像した以
上に大きかった。
「次のお客様をお呼びして」由希が事務的に言った。
「もう、いいでしょう!」祐子は弱々しく叫んだ。「これだけ恥ずかしい目に遭
わせれば充分でしょう!」
「まだ元気ねえ。さすがに若いわ」
 デブはいつの間にか消えていた。代わりに別の男が入ってきた。今度は対照的
にがりがりに痩せた男だった。しかもひょっとしたらハイティーンではないかと
思われるほど若く見える。頬骨の浮き出た顔に、黒縁のメガネをかけていた。
「ああ、その、ぼくはちょっと普通とは……」男はぼそぼそと言いかけた。
「何でもご自由にどうぞ」由希が遮った。「道具がお入り用でしたら用意します
よ」
「ああ、いや、道具っていうか、金を払うとき言ってあったと思うけど……その
他人のやった後は……」
「では口で奉仕させましょう」
「お願いします」男はばか丁寧に頭を下げた。
「聞いたでしょう」由希がにこやかに笑いながら祐子に言った。「唇と舌で満足
させてさしあげるのよ」
「だ、出した後、ちゃんと飲んでくれないと……」
「わかっていますよ」
 自分の意志を無視して成立した商談を、祐子は唖然となって聞いていたが、そ
の行為を想像しただけで嘔吐がこみあげてくるのを感じた。
「それだけはいや……」祐子は男から逃れようとして後ろに下がった。「そんな
汚いものを……そんなことしたことない……」
「何事にも最初があるものよ。さあ、どうぞ」
 男は素早く下半身の衣服を脱ぎ捨てた。
 祐子は悲鳴をあげたが、さっきの男たちに後ろから押さえつけられた。強引に
正座をさせられ、顔を前に突き出される。
「あの……口が開いてないんだけど……」男が申し訳なさそうにいった。
「あら、ごめんなさい」由希が驚いたように謝罪し、克也に合図した。
 克也はつかつかと歩み寄ってくると、歯を食いしばっている祐子の耳の下を、
伸ばした中指で一突きした。祐子は悲鳴をあげた。
 その途端に、固く生暖かい肉棒が奥まで突っ込まれた。
 たちまち祐子は窒息しそうなパニックに陥った。吐き出そうとするが、後ろか
ら顔を押さえつけられているし、痩せた男の方も祐子の顔を抱え込むようにつか
んでいた。
「んぐう!」
 唇の隙間から奇妙な声が洩れる。祐子は耐えきれずに涙を流した。
 男はゆっくり腰を動かしていた。そのたびに口腔内のあちこちに、不気味に暖
かい肉棒の先端が触れる。舌を懸命に動かして、それに触れないようにしたが、
その努力はほとんど実を結ばなかった。唾液が溜まってきたが吐き捨てることも
できない。
「うっ!」
 前触れもなく、男は射精した。祐子が身構える暇もなく、生臭く苦い液体が口
の中全体に放出された。反射的に吐き出そうとしたが、男は祐子の鼻をつまんで
言った。
「全部飲んでね。でないと放さないよ」
 再び窒息の恐怖が襲いかかった。呼吸器系と消化器系が相反する行動を取ろう
としているが、肺が勝利を収めた。煮すぎたおかゆのような半固体が食道を通り
胃に入り込んだ。たちまち胃がねじくりかえるような嘔吐がこみあげる。
 男はようやく祐子の鼻を口を解放すると、何事か呟きながら去っていった。
 祐子は聞いていなかった。そのまま床に倒れ込んでしまった。
「休んでいる暇なんかないのよ」由希が非情に告げた。「次のお客様が待ってい
るんだから」
「悪魔……」まだ精液のかけらが残る唇から、か細い言葉が吐き出された。「お
前は悪魔だわ……絶対、殺してやる……」
「あなたにそんな機会はないと思うけどね」
 次の男が近づいて来る足音が聞こえた。



 榊と大野川は、呆然となって立ちつくしていた。
 空き地の真ん中で、およそ10台以上の車が炎上していた。榊が用意した車で
ある。そこかしこには、ぴくりとも動かない人間の姿も見える。肉の焼ける匂い
が漂っていた。
 一人も生き残っていないことは一目見てわかった。
「やられましたね」榊の声には怒りと敗北感がにじみ出ていた。「敵はわざとこ
こを選んだんですね。あらかじめ罠を張ってあったんでしょう。こっちはまんま
とそれに飛び込んだってわけです」
「橋本先生とお嬢さんはどうしたんだろう」大野川も悔しそうに言った。
「たぶん、混乱に紛れて移動したんでしょうね」
「発信器があるだろう。まだ、後は追えるぞ」
 榊は力無く首を横に振ると、ノートパソコンの画面を見せた。地図は表示され
ているが、発信器からの信号を示す光点はどこにもない。
「最初から気付いてたんですよ、きっと」
 誰かが通報したのだろう。遠くからサイレンが聞こえてきた。
「とにかく、ここを離れましょう。見られたら面倒です」
「そうだな」
 大野川はエンジンをかけようとキーに手をのばした。
 突然、運転席のドアが外から開けられた。仰天した大野川が言葉を発する前に、
二本の腕が大野川の髪と手首をつかみ、強引に車外へと引きずり出した。
「な、なんだ、貴様!」
 地面に転がった大野川は、とっさに上着の内側に手を伸ばした。が、ホルスタ
ーを装着していないことに気付いて青くなった。勤務時間外なので署に置いてあ
るのだ。
 狼狽した大野川の前に、二つの影が立った。上から下まで黒ずくめの服装で、
スキーマスクのようなもので顔を隠している。一人が大野川の腕も脚も届かない
距離からサイレンサーを装着したオートマティックを構えていた。
「お前ら、何者だ!」
 大野川の隣に、榊の身体が転がった。同じ目に遭ったらしい。一か八か、ハン
ドガンを構えた男に飛びかかって形勢を逆転させる、という考えが大野川の頭に
浮かんだが、すぐにそれは消え去った。反対側から現れた二人が、揃ってハンド
ガンを持っていたからだ。
 三つの銃口に動きを封じられている間、一人の男が榊と大野川の手に手錠をか
けた。そして、身振りで立つようにうながした。
「どこへ連れていくつもりだ?」
 大野川の質問に対する答えは、銃口で方向を示されたことだけだった。二人は
やむなく歩き出した。





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