AWC 死霊の都12    つきかげ


        
#3761/5495 長編
★タイトル (BYB     )  97/ 2/19  19:27  ( 82)
死霊の都12    つきかげ
★内容
「何のこった?」
「ケイン、あなたよ、あなたが最後の奥の手」
  私は、開いた口が塞がらなくなった。
「おれ?おれに何しろってんだ」
「出してよ、あれを」
「あれ?」
「ジーク王に、餓鬼玉の卵飲まされたんでしょ、バター茶に混ぜて」
  私は、真抜けな顔で、ジュリを見る。ジュリは、ん、もうっ、と呟くと呪文を
唱え、印を結ぶ。突然嘔吐感に襲われた。
  私は、膝をつく。その口からわらわらと、黒い粒がでる。苦しくて涙が出た。
涙と鼻水をたらし、胃を炎で灼かれるような苦痛に耐えながら、私は黒い粒を吐
き続ける。
  ジュリが印を解くと、黒い粒は止まった。黒い粒は、漆黒の風となり、シュラ
ウトを襲う。シュラウトの光は力を失った。
「ジーク王に飲まされた毒とは、あれのことだったのかよ」
「あと数日すれば、あなたも、食い尽くされるわ」
  私は、うんざりした顔になる。
「トラキアに戻ったら王に祓ってもらいなさい。多分、王しか祓えないはず」
  結局のところ、私はジーク王の手の上で踊らされていたようだ。
 突然、ツバキとシュラウトを覆っていた光が消える。シュラウトは、膝を突き、
ツバキは醒めた瞳で力つき死人の顔色になったシュラウトを見ていた。決着はつ
いたようだ。上方の黒い渦も姿を消している。
「大したものだ」
  ツバキが呆然と呟く。
「私の攻撃をうけ、それに加え、餓鬼玉の攻撃もはね除け、神の召還に成功する
とはな!」
  突然世界が暗黒につつまれる。黒い液体の沈められたように、闇がすべてを覆
う。ぬばたまの闇の中に、私は破壊の意志を感じる。すべてを無に帰そうという
ような、凶悪の意志。それは、邪悪な咆吼のように、あたりを荒れ狂った。私た
ちは、破滅の想念がもたらす、狂乱の嵐の中にいる。
 闇は出現した時と同様に、突然消えた。元の光の塔へ戻る。
  そして、そこに立っているのは、身長4メートルの純白の鎧をつけた、女の巨
人であった。美貌の巨人は青い冴えた瞳で、シュラウトを見る。
「おまえか、私を召還したのは?」
  シュラウトの口からは、苦鳴が漏れる。力つきたように、シュラウトは意識を
失った。
  巨人は肩を竦める。
「そうまでしなくても、呼べばきたんだがな」
  私は、巨人に問う。
「あんたは?」
「フライア神の化身と言っとこうか。何の用だ。呼び出したやつは気絶してるが」
  ジュリが、疲れた声でいう。
「私たちを地上へ帰してください」
「なんだ、そんなことか。私は又、地上の破壊でも頼まれるかと思ったよ」
  フライア神の化身は、けらけら笑った。私たちは、げっそりと女神の化身を見
る。
「じゃあな、人間たち。又来るがいい。言っとくが、死力を尽くして召還するこ
とはないぞ。呼べばくるからな」
  突然、私は目の前が闇に覆われるのを感じる。意識が遠くなっていった。

  私は、トラキアの宮殿で、ジーク王の前にいた。ここは、私がジーク王からシ
ュラウト王子の探索を、依頼された部屋だ。
 ジーク王は、満足げに笑いながら、床の上に座っている。その前に立つ私の手
の中には、水晶剣が握られていた。
「おい、ジーク王、仕事は済ませたぞ」
「おうおう、美しい友情ほど尊いものは無いの、ケイン」
  私は怒りで眩暈を感じたが、必死で自制する。
「祓ってもらおうか」
「何をじゃ?ケイン」
  私の頭の中で、白い光がはじけた。怒りで腸が、ちりちりと灼かれている。私
は怒鳴っていた。
「おれの腹にある、餓鬼玉だよ!」
「おうおう、案ずるな。余が呪文で抑制したから後一ヶ月は大丈夫じゃ。ところ
で、ケイン。頼みがあるのじゃよ。まだ、余に逆らう貴族がおっての。邪術をし
かけて来ておる。おぬしの厚い友情はよく判っておるぞ、ケイン」
  私は、冷静になる。そして言った。
「殺す」
「え?」
「おまえを殺して、私も餓鬼玉に喰われる」
「待て、ケイン、祓ってやる。すぐにじゃ」
「おまえを信用できん。殺す」
「いやいや、ケイン」
「いやいや」
「いやいや」
「いやいや」

  以下、無限反復。

「死霊の都」  完

  一部、黒百合姉妹の詩を引用しました。





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