AWC マリィゴールド@     つきかげ


        
#3745/5495 長編
★タイトル (BYB     )  97/ 2/ 6  18:37  (198)
マリィゴールド@     つきかげ
★内容
 マリィゴールド<まえがき>

 この小説はパトレーバーのパロディになります。
  私は30中の親父ですから、元々さほどアニメに詳しい訳ではありません。
  ただ、友人に生きながらアニメに葬られているんじゃないかという人がいて、
せっせと自分の見たアニメを我が家に運んできて見せてくれます。
 最近ではエヴァンゲリオンとかいうやつの1話と2話を見せてくれたので、
嫁さんと最近のアニメは変わったね、としみじみ話をしました。
  まあ、その中でパトレーバーは劇場公開したものまで見てしまったので、
印象深いものがあります。そうこうするうちに頭の中でパロディを作って遊んで
いたのが、小説になりました。今頃という気もしますが。
 以下・本文

 マリィゴールド

 西の大通りを少し西北に入った所に、その店はあった。白い船のキャビンを想
わせる、瀟洒な造りの店だ。官庁街から少し外れているため、とても物静かな通
りである。
  ダーク・スミスは久しぶりに晴れ上がった真昼の日差しを見上げると、その店
の中へと入っていく。白で統一された店内の装飾が妙に眩しく、ダークは目を細
めた。そしてダークは雪原のように白い店の中に浮かび上がる黒い影を見いだす
「あの」
  ダークに声をかけられ、その黒いロングコートに身を包んだ人は読み差しの本
から顔をあげる。黒くまっすぐな髪のその人は肩にかかる髪を払い、冬の日差し
のようにそっと微笑んだ。
「あなたが未来・明日香さん?」ダークの言葉に明日香は頷く。
「じゃあ、あなたがダーク・スミスさんね。よかった」
  ダークは少し困惑した顔になる。
「よかったって?」
「私の相棒になる人が、とっても愛らしい女の子で」
  ダークは予想外の言葉に頬を紅らめた。その時のダークの姿はアーミーグリー
ンのブルゾンにグレーのシャツ、ブラックジーンズという出で立ちだったし、日
に焼けたショーットカットのその顔は眉間に派手な傷痕があり、少女というより
は不良少年に見える。
「驚いた。そんなこと言われたの始めてや」
  明日香はパタンと本を閉じると、立ち上がった。思ったよりずっと背が高い。
ダークも女性にしては背のあるほうだが、彼女より頭一つ高かった。
「目がね、女の子だわ。まるでサファイアのように真っ青で、晴れ渡る夏の空み
たいな透明な色ね」明日香はハスキーな声で物憂げに言った。「なんの汚れも知
らない乙女の目だわ。じゃ、行きましょうか」
  ダークはいきなり明日香の雰囲気にのまれてしまい、素早く歩き出した明日香
の後を慌てて追う。二人は店の外に出た。
「でも驚いた」
「何に」
「凄腕のデテクティブていうから、きっとごついおっさんやと思ってたのに」
  ダークは少年のようににっこりと笑った。
「こんな綺麗な女の人やったなんて」
  明日香は困ったように微笑む。
「誤解があるみたいね。でも説明してる時間がないわ。迎えが来たわよ」
  その晴れ上がった三月の空に、巨大な獣のような軍用ヘリが姿を現す。明日香
はそのヘリに、手を振った。
「ひよっとして、あれで?」
「時間がおしいの。車でいくと結構かかるから」
  グレーの軍用ヘリは、風を巻き上げ地上近くまでおりてくる。二人はその開い
たボディから中へ入り込み、空へと向かった。

  ダークは空から街を見おろす。東京第24区、東京湾上に一夜にして出現した。
その島は、正式にはそう名付けられている。しかし、エルフやドワーフといった
エピックファンタジーの中の住人が現実に存在し、魔法がただのショウや娯楽の
ねたではなくリアルな力として存在するこの街は、人々からこう呼ばれていた。
東京ネクロマンスシティと。
  ヘリは街から西へ向かい、24区を管轄地区とする警視庁対魔特殊部隊の駐屯
する白虎塔へ向かう。ヘリは街の西方の高級住宅地を越え、白亜山地へと入って
行く。白虎塔はその山の中の盆地に聳える、巨大な高層ビルであった。
  ダークは前方に見え始めた機能的なデザインのビルを見て、ふと思った。
(思ったより普通の街やな)
  来る前はおとぎの国のようなところを想像していたが、案外落ちついた佇いを
持った街である。蒼古より積み重ねられた歴史の重みのようなものを、感じさせ
る街だった。
  ヘリは白虎塔のヘリポートに着く。ダークたちは、風の強いヘリポートを走り
抜け、建物の中へ入った。対魔特殊部隊捜査一課はエレベータで上がった40階
にある。エレベータホールを抜け、フロアへ入ったダークは思わず明日香のほう
を見た。
「何やの、これ」
  そこは、むき出しのコンクリートの床に荷物が散乱しており、まるで空きビル
を不法占拠しているような有り様だった。驚きで空いた口の塞がらないダークに
明日香は少し微笑みかけると、平然とその現代芸術を展示した画廊を思わすフロ
アを歩いていく。その足どりは機能的なオフィスを歩いているかのように、颯爽
としていた。
「課長、未来です。戻りましたよ」
「おう」
 明日香への返事はついたての後ろからした。ダークたちはそのついたての後ろ
へ回る。そこはまるで独身男性の一人部屋のように、散らかっていた。
  一ダース以上の電話が並べられ、その回りに食べかけのスナックや、飲み差し
のパックのウーロン茶が置かれている。書類や、ファイルはやたらと積み上げら
れ、山脈を形成していた。今にも地殻変動で崩れ落ちそうであるが。
  その一角に大きなソファが置かれ、そこに寝ていた背の高い男が起きようとし
ているところだった。
「やれやれ、三日ぶりに寝ちまったもんでだりぃぜ」
  男はそう言いながら、起きあがる。ネクタイをはずし、派手な柄のシャツの衿
を立てたその姿は、刑事というよりはヤクザであった。しかし、その寝起きで焦
点の合っていない顔は、結構優男ふうである。
「課長、ミズダーク・スミスです。挨拶を」
「ああ、西の治安放棄地区からきた、腕利きの人ね」
  男はにっこり笑った。
「課長の石神です。よろしく」
「なんや凄いとこやな。西の事務所かて、もうちょっとましやったで」
「引っ越しの途中で事件がおきてね、片づけてる暇がない」
  そういうと、石神は傍らのウーロン茶を取り上げ、飲み干した。
「この味は四日ものかな」
「課長、私はそろそろ行きますよ」
「おう、じゃあダーク君、明日香のサポートよろしく頼むわ」
「ちょっ、ちょっと待ちいな。ブリーフィングもせぇへんのか。無茶苦茶やな」
「そういうなよ。時間がない。道中明日香が説明してくれるさ」
  明日香は既に歩きだしている。ダークは溜息をつく。石神は宥めるように言っ
た。
「彼は特別なんだ。この街が特別な以上にね」
「彼?誰?」
「明日香にきまってるだろ」
  ダークは石神に顔をよせて囁いた。
「お、男やったんか!」
「あたりまえだ。おい、早くいけ、置いてかれるぞ」
  ダークは慌ててあとを追って走る。明日香の乗るエレベータにかけ込んだ。
(何しに来たんか判らへんな)
  ダークは心の中で呟きながら、来たのと同じヘリに乗り込んだ。さっき街中で
ヘリに乗ってから、10分も経っていない。ダークは大変な相棒と組んでしまっ
たような気がした。

  ダークはヘリの中で思わず明日香を、見つめてしまう。確かに女装している訳
ではないが、その華奢な手足や、清楚な顔立ちをみていると、とても男とは思え
ない。
  明日香は見つめるダークに微笑みかけた。思わずダークは頬を赤らめ、俯いて
しまう。
「何かいいたいことがあるんでしょう」
  明日香はやさしく話かけた。
「い、いや」
「ご免なさい、ブリーフィングもしなくて」
「そ、そんなこと」
「私、チームプレーは苦手なの」
「はは、それは私も同じや」
「へぇ、じゃあ私たち似た者同士でいいチームになるかもね」
「ははは、そうやね」
(どんな理屈や、そんな訳ないやろ)
  ダークは顔で笑ったが、心の中でつっこみをいれていた。

  ダークたちは、ヘリから降りると街の中心の中央大通りへ向かった。この街は
中心を走る大通りによって二分されている。通りの西側が、東京等からやってき
た移住者たちに与えられた区域である。通りの東側は昔からこの島に住んでいた
住民たちの区域だった。
  この島が東京湾上に出現し、東京都の二十四番目の区となったとき、この島の
王ベリアル・フィッジェラルドと区長の間に協定が結ばれた。いわば相互不可侵
条約であり、日本の法律は街の西側でのみ通用するが東側は王ベリアルの定めた
法のみが通用する。ただし、双方の市民が相手側の居住区で犯罪を犯せば、犯し
たその地の法で裁かれることとなった。
  初期のころは原住民と移住者の関係は安定していた。しかし、それは長く続か
ない。
「例の遷都計画がリークしたころからよ。犯罪がテロル化してきたのは」
  明日香は大通りを東に入る。そこは先住民達の世界であった。その曲線を多用
した新ガウディ様式風の建物が立ち並ぶ通りを歩きながら、明日香は話を続ける。
「原住民たちは協定違反と考えたわ。遷都計画を」
  遷都計画はネクロマンスシティプロジェクトという通称で呼ばれており、この
島を日本の首都としようとする計画であった。いわば魔法的列島改造計画であり
かって経済大国とよばれた日本を魔法大国へと再編成しようという計画である。
  このプロジェクトにより先住民たちは事実上経済的に移住者たちに依存せざる
おえない体制が、形成されることとなるはずであった。これは、先住民の居住区
を実質的には観光地と学園都市を融合した街にする計画であり、そのために先住
民たちの市場を日本のハイテク製品で制圧して経済支配より政治支配へと移行し
てゆくという青写真まで出来上がっている。
  極秘のうちに進められていたこの計画は、魔法の力で暴きだされ、猛反対を受
けることとなった。そして移住者の居住区へ、魔法で造られた亜生命体(サブク
リーチャー)によるテロルが行われるようになる。
「対魔特殊部隊の発足はそういう経緯からなの」
  明日香たちはしだいに南東へと向かって行く。奥へ入るにつれ街の造りはしだ
いに複雑化しており、何十もの通りが複雑に交差しているためまるで迷路のよう
であった。
  建物も邪悪な姿の彫像たちに飾りたてられ、まるで異教徒の神殿をみるようだ。
通りを歩く住人はドワーフのような小柄なものや、トロールのような巨人、フェ
ルプールといった獣人や褐色の肌の魔族等々実にバラエティーに富んでいる。
  明日香は平然と歩くが、ダークはとうとう自分がネクロマンスシティへ入り込
んだのを感じ、胸の高鳴りを抑えきれない。
  明日香は話を続けた。
「サブクリーチャーは殺すことができないため、随分手こずったわ。魔法的な生
き物は魔法的に倒すしかない。そこで対魔特殊部隊はベリアルに相談したの」
  街を破壊しつづけ、ミサイルを打ち込んでも生きているサブクリーチャーは脅
威である。それに対抗する兵器の作成を警視庁は、ベリアルに依頼した。ベリア
ルはそれを引き受け、サブクリーチャーを倒すためのサブクリーチャー、ジェノ
サイダーをつくり対魔特殊部隊に売りつけた。そのジェノサイダー一号はコード
ネーム、マリィゴールドと名付けられている。
「ところが、そのマリィゴールドを盗まれたのよ」
  明日香はどんどん路地の奥へと、入り込んで行く。あたりは麻薬と思われる色
鮮やかな煙がただよい、昼間でも薄暗い通りの奥は甘く退廃的な香りに満ちてい
る。明日香は麻薬中毒者が寝そべり、武器を携えたオークやダークエルフのいる
道をまったく足どりを変えず歩いていた。
  ダークにしても、こうしたところは馴染み深いものがあるが、魔法的な紋章や
得体のしれぬ薬品の香りにはさすがに、緊張させられる。明日香は話を続けた。
「私たちはそのマリィゴールドを探しはじめてもう、48時間以上になるわ。こ
の街はそう大きな所ではないから隠すといっても場所はかぎられている」
「例えば?」
「北東の有力な魔法使いたちの住むところよ。彼らの邸宅なら可能ね」
「そいつらの所へ踏みこんだら?」
「あからさまな協定違反よ。それはできない」
  明日香たちは、聞きこみをはじめた。この街の先住民たちは、なぜか明日香に
は従順に応じている。ダークは、石神が明日香は特別といっていた意味が判って
きたような気がした。彼は、街のこちら側に属しているのだ。
  明日香は情報収拾をそれ専門のプロたちに依頼し、その情報をもとに捜査を行
っている。明日香の探しているのは、マリィゴールドが盗まれたのとほぼ同時に
消息を断った情報屋であった。





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