#3606/5495 長編
★タイトル (BYB ) 96/12/13 21:26 ( 77)
雪原のワルキューレ53 つきかげ
★内容
さる。金色の光は形をとり始めた。やがて、それは人の形となる。その光が薄らぎ、人
の形がはっきりしだした。
それは白衣の巨人、フレヤである。フレヤは燃えるような天上の女神の美貌を輝かせ
、暗黒の邪神の前に立つ。
「長い旅だったが、我が場所に戻れたようだ。ただ、これも新しい夢なのかもしれぬが
な」
フレヤの呟きに、ロキが苦笑する。
「戯れごとをいってる場合か、フレヤ」
ゴラースの黒い姿は混沌とした、暗黒星雲のように姿をとどめず、ゆれ動いている。
暗い夜空が凝縮したようなゴラースは、無言のまま輝く瞳でフレヤを見おろす。
冬の乾いた蒼い空のような瞳で、フレヤはゴラースを見つめ返す。その目の中には、
嘲笑があった。
「フレヤ!」
ロキが叫び、金色の剣を投げる。フレヤはそれを、宙で受けとめた。金色の剣は炎を
纏ったように、さらに強くフレヤの手の中てせ輝く。それは闇の終わりを告げる、明け
の明星の光にも似ていた。
「終わりだ、ゴラース」
フレヤは叫ぶと、金色の炎を浴びせるように、ゴラースの身体へ剣で斬りつけた。ゴ
ラースの身体を構成する闇が、夜明けの光を受けた夜のように薄らいでゆく。
空気が蒼ざめ、物体化したような闇は、半透明の霧と化していった。ゴラースの思念
が時折、薄暮を照らす稲光のように、走り抜けてゆく。死を迎えた暗黒の消滅のように
ゴラースの姿は消えていった。後には、ドルーズの死体だけが残る。
轟音が響き、宮殿が揺らぎ始めた。
「何ごとだ」
フレヤの問に、ロキが静かに答えた。
「ゴラースは致命傷を負った。お前に長く、触れすぎた為にな。この次元界を維持し続
けるのは、困難になってきている。元々この宮殿そのものが、ゴラースの身体であると
いってもいい。それが崩壊し始めているんだ」
「だとすれば、我々もゴラースと共に次元のかなたへ消えてゆくわけか?」
ロキは笑みを見せる。
「ゴラースにしても、まだ多少は力がのこっているはず。おい、ゴラース」
ロキはドルーズの死体へ呼びかける。ドルーズの死体が、ゆらりと立ち上がった。
(何か用か、ヌースの模造人間よ)
ゴラースは直接心へ、語りかけてくる。ロキが言った。
「我々を元の次元界へ、戻してくれ」
(よかろう、私はこの次元界から開放されたようだ。礼のかわりに、お前の望みを果た
そう)
ロキとフレヤの足元に、五芒星が出現する。その五芒星は輝いていた。五芒星の輝き
は、夜明けの太陽の光のように、次第に強く明るくなってゆく。やがて、その光が極限
に達した時、フレヤとロキの身体は白い光につつまれ消え去った。
「こりゃ、やばそうだな」
激しくゆれる宮殿の中で、ケインが呟いた。
「出口がないね、ここ」
ジークは、落ちついているのか、諦めているのかよく判らない口調で言った。「出口
がないなら、探すんだよ!」
ケインが叫ぶと、右手を動かす。透明の水晶剣が、宙を飛ぶ。シルフィールドが乱舞
するように、透明の剣が部屋じゅうを飛び回った。
やがて、剣がケインの手に戻り、ケインが言った。
「あったぞ、そこだ」
ケインは壁の一角へ、駆けよる。揺れが激しい為、多少よたつきながら壁へたどり着
く。壁を拳で叩いた。中が中空になっているようだ。水晶剣で切りつけた感触は、間違
っていなかったらしい。
ケインは、左手の闇水晶を構える。
「待てよ、ケイン」
ジークが後ろから声を掛けた。ケインが苛立たしげに、振り向く。
「なんだよ、急いでるんだぞ、おれたちは」
「お前の左手は限界だろう。闇水晶でも無