AWC 雪原のワルキューレ52     つきかげ


        
#3605/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  21:25  ( 72)
雪原のワルキューレ52     つきかげ
★内容
のの混沌としたエネルギーを内包した神の姿は、凶暴なまでに、リアルである。フレヤ

は見上げようと巨大な神を前に、数歩後ずさった。
「次元界に混乱があるのか。私がお前をつくり出したのは、この時空間よりもう少し後

だ。まあ、次元流に閉ざされたこの牢獄の中では、よくある事だがな」
 フレヤは困ったように首をふる。
「私はただの夢だ、見捨てられた神よ」
「ほう」
 グーヌはどこか皮肉な笑みを見せる。
「ここより遥か離れた地の戦いの中で、私の精神は歪んだ時空間の構成する迷宮の中へ

入りこんでしまった。私は自らの記憶を破壊したが、それでも尚、戻るすべがない」
「いっておくがな、フレヤ、我が炎と光を纏う狂乱の娘よ。ここが夢で、戻ろうとする

世界が真実だなどと思うのは誤りだぞ」
 フレヤは天上に浮かぶ女神の死体と同じ美貌で、猛々しく笑った。
「私は私の戦いの場を真実と呼ぶ。ここは、死の統べる場所。私の居場所ではない」
 グーヌは苦笑のようなものを浮かべる。
「私はおまえを産みだしたが、フレヤ、お前は、お前自身を造り上げたようだな」
 グーヌは手を上げた。空から光の塊が落ちてくる。地上に、巨大な闇が口を開けた。

「もどれ、お前が真実と呼ぶ場所へ、我が光の娘、もう一度近いうちに会おう。今度は

、夢としてではなくな」
 暗黒の口からは、蒼ざめた気の流れが立ち昇ってくる。フレヤは優しく微笑むと、そ

の闇の中へ身を投じた。

 そして、様々なものがフレヤの心を駆け抜けた。

 重く暗い神の血の中で最初に目覚めた人間の、放った叫び。

 天使達との戦いの中で乱舞し、凶暴な怒りを持った咆哮をあげる竜たち。

 漆黒の肌をもち物憂げな金色の瞳で、殺戮をくりひろげてゆく魔族たち。

 魔導の生み出す色鮮やかで美しい光景。

 忘却の眠りの中でふれる死の闇。

 猥雑な人間達の街、その片隅で流される美しく赤い血。

 数億年に渡るであろう、フレヤの記憶は、細切れになり、意味のない物語や情念をま

き散らしながら、闇の奥へと飛びさっていく。
 それらは二度と戻らぬ、ひとつの小宇宙である。
 それは、確実に一つの死であった。
 フレヤはその死の闇を超え、地上へと向かってゆく。

 獰猛な笑みに嘲るような色をのせて、ロキを見つめていたゴラース神は、ふっと動き

をとめた。まるで、少し戸惑ったように、首をかしげる。
  ロキは、黒衣の下から剣を出す。それは黄金色に燃え盛るような、ユグドラシルの枝

より造られた剣であった。その剣をゴラースに向かってかざす。
「フレヤを吸収しようとしたのは、失敗であったな」
  ゴラースの顔が、驚愕で歪む。自分の体内に溢れてくるエネルギーが、想像を絶する

ものであった為だ。
「なるほど、我が小さき身体で、死せる女神の血を受けた娘の力を吸収しようとは、愚

かなことだったようだ」
  ゴラースの体内から漏れてくるエネルギーを受けとめているかのように、ユグドラシ

ルより造られし剣は、ますます激しく輝く。
  ロキは、夜空に突如出現したような新星のごとく輝く金色の剣を、闇色のゴラースの

体へ突き立てた。ゴラースの絶叫と共に、その体に金色の穴が出現する。そこから、金

色の光の奔流が迸った。
  黒衣のロキは光に押されるように、後ず




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