AWC 雪原のワルキューレ51     つきかげ


        
#3604/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  21:23  ( 80)
雪原のワルキューレ51     つきかげ
★内容
のとても大切な人、唯一彼女に安らぎを与えるはずの人がいた。しかし、フレヤにはど

うしても
それが誰なのかを思い出すことができない。

 金星の奥深く、次元渦流が荒れ狂う中、虹色に輝く星船がゆっくりと浮上してゆく。

宇宙の最果てのような闇の色と、星々が誕生する瞬間のような原初の赤、太陽が死滅す

る時に発する光のように目映い白、それらの色がからみあい、捻れながら走り抜けてゆ

く。
 フレヤ達巨人族は黄金の林檎の力に守られた星船の中でその様を眺めている。時折、

次元のかなたの風景が垣間みえた。それは巨大な真紅の花であり、蒼ざめた世界を覆い

尽くすような空であり、漆黒の肌をもち物憂げに微睡む竜の姿である。
 フレヤたちは幻覚が乱舞するような、カレイドスコープの中に巻き起こった嵐のよう

な次元渦動を突き抜けていく。そこを走り抜けていく光は様々な波紋を巻き起こし、神

々の啓示を示すように荘厳な景色を演出する。

  フレヤは、真っ白に天使達が覆い尽くした空を見上げている。それはグーヌ神とヌー

ス神の、何億年も続いた戦いであった。ただ絶望だけが心を覆ってゆくような、長く不

毛な戦いであった。
 大地はただひたすらに、焼けただれた荒れ地が広がっている。その赤茶けた荒野のあ

ちこちに、黒々としたぬかるみがあった。それらは、神々が戦いの中で流した血溜まり

と言われている。
  闇の生き物達が、周囲で身構える。魔族に呼び出された竜達が、戦いの雄叫びをあげ

ていた。フレヤは静かに剣を振り上げる。
  そして、灰色の雲から粉雪が降り落ちるのようにゆっくりと、破壊と殺戮の戦闘機械

、天使達が地上へ降臨してゆく。凶悪な戦いの歌を歌いながら。

 紅蓮の炎が渦巻く中、フレヤは微睡んでいた。大地の熱が巻き起こす炎を自らの寝床

としたフレヤは、総てを焼き尽くす凶暴なマグマに身をゆだね、安らぎを憶えている。

 その彼女を、眠りと忘却から引きずり出そうとするものがいた。遠い所から呼びかけ

て来る者が、いる。フレヤは紅く染まった世界から、水面のように澄んだ青空の見える

地上へとゆっくり浮上していく。
  炎の中で立ち上がったフレヤは、自分を見上げる青年を見た。青い瞳に金色の髪、そ

して白い肌の人間である。青年は問いかけるように、フレヤを見ていた。
(そうだな、)
  フレヤは心の中で呟いた。
(私は人間の為に戦うと約束したのであったな、エリウスよ)
  その青年こそ、古にアルクスル王国を築いた初代の王、エリウス・アレキサンドラ・

アルクスルT世であった。

 フレヤの記憶はさらに目まぐるしく、かけぬけていく。

  フレヤは何か広大な世界にいた。そこが彼女の心の中であることは、理解している。

天上には自らの姿とそっくりの死体が浮かんでいた。その胸は空洞となっている。
 (フライア神の死体か)
 フレヤは直感的にそう悟った。フライア神は虚ろな死者の瞳で陰鬱な灰色の雲に覆わ

れた空に浮かんでいる。それは、暗く沈んだ冬の海に浮かぶ、乙女の死体を思わせた。

 淀んだ空は、底のほうでは激しく渦巻いているらしく、金色の閃光がときおり雲の切

れ間を走り抜けていく。フライア神の姿は灰色の世界の中で唯一色を備えているように

、鮮やかで美しい。フレヤはその姿を見つめるうちに、涙が溢れでて来るのを感じた。

「フレヤか」
 突然、背後から声を掛けられ、フレヤは振り向く。そこには、漆黒の肌と金色に輝く

髪を持つグーヌ神がいた。
 この静寂と死滅の世界の中で、生そのも




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