AWC 雪原のワルキューレ50    つきかげ


        
#3603/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  21:22  ( 77)
雪原のワルキューレ50    つきかげ
★内容
「愚かさにも程があるぞ、最も古き巨人よ」
「黙るがいい、闇の獣よ」
  フレヤは暗黒を貫こうとする夜明けの日差しのように光る剣を、ゴラースへ向かって

叩きつけた。全く手ごたえのないまま、フレヤの剣はゴラースの体を突き抜け、地面に

刺さる。
「遊びはここまでだ、最後の巨人」
  ゴラースが叫ぶと、その胴体が縦に裂け、腹部に白い闇が出現した。ゴラースは恋人

を抱くように、フレヤの体を捕らえる。フレヤはあらがう術もなく、ゴラースの体内に

出現した白い闇の中へ飲み込まれていった。
  何事もなかったように、ゴラースの体に出現した裂け目は閉じられる。ゴラースは狼

の顔に、獰猛な笑みを浮かべてロキを見た。
「持ち駒は尽きたのかね、ヌース神の模造人間よ」
「さてね、」
  ロキは全くの無表情で、ゴラースを見ていた。
「そう思うかね、古き神よ」

  フレヤは世界が崩壊する瞬間のような、巨大な白い光の流れの中へ放りだされた。し

かし、その光の流れは一瞬にして消え、再び黒い闇があたりを支配する。
  フレヤはナイトフレイムの礼拝堂へ戻ったのかと、一瞬あたりを見回した。しかし、

ただ闇が広がっているばかりで何も見ることはできない。
  フレヤの白いマントを纏った姿は、暗黒の地底に降りた立った天使のように、闇の中

で薄く輝いている。フレヤはゆっくりと、歩き始めた。どこへ向かうともなく。
  やがて、視界の中に白いものが出現した。それに向かって、フレヤは進む。白いもの

は次第に形を整え始める。それは、僧衣であった。
  フレヤの目の前に、白い僧衣をつけたクラウスが姿を現す。クラウスは哲学者のよう

な瞳で、フレヤを見上げる。クラウスの背後には、漆黒の扉があった。その扉はあたり

の闇よりも、さらに濃くさらに深い闇に覆われている。
  クラウスは、祈りをあげる僧侶のように静かに、そして厳かに言った。
「あなたの封印を解くことができなかったが、ここにあるのがあなたの封印だ、フレヤ

殿」
  フレヤは優しい笑みを見せて、言った。
「そこをどくがいい、死せる魔族よ」
  クラウスは悟りを得たもののように、静かな笑みを浮かべて首を振る。
「やめたまえ、私にしか封印は解けぬ。しかし、私はすでに」
  フレヤは無言でクラウスの体を、押し退けた。実体化した闇のような扉の前に、フレ

ヤは立つ。
「無理に破壊すれば、永遠に記憶が破壊されるぞ。無茶をするな、巨人よ」
  フレヤは笑った。
「一度捨てた記憶ならば、二度と得る必要はない。我が望みは再び地上へ戻ることだ」

「馬鹿な」
  クラウスが呆然と呟く。フレヤは拳を振り上げ、扉へ叩きつける。二度、三度と。闇

にひびが入り始めた。
  フレヤは体ごと扉にぶつかる。甲高い音と共に、闇が砕け散った。光の奔流がフレヤ

を包む。フレヤの意識が薄らいだ。

  フレヤは様々なものが、自分の中を駆け抜けるのを感じた。それは、自らの記憶の断

片であると、判っている。多彩のイメージの切れ端が心の中に浮かんではては、消えて

ゆく。

  深い地底の闇の中で、漆黒の肌に黄金に輝く瞳を持った神が、静かに自分を見おろし

ているのを感じる。そこは、次元渦流に閉ざされた金星の地下の牢獄であった。黄金の

瞳の神は、グーヌ神であり、そここそ、自分の産まれた場所であるとフレヤは理解した

。
 闇の底、その邪神の牢獄の中で、フレヤは何かとても大切なものを失ったような気が

している。彼女の傍らには、失ったはず




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