AWC 雪原のワルキューレ54     つきかげ


        
#3607/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  21:27  ( 73)
雪原のワルキューレ54     つきかげ
★内容
理だと思うぞ。ここは、おれに任しとけって」
  ケインは、心配そうにジークを見る。確かに、ケインの左手はブラックソウルとの戦

いで酷使しすぎた為、動かせる状態では無かった。といってもジークに任すには不安が

ある。
  ジークはケインの想いをよそに、不逞不逞しい笑みを見せた。その左手は、剣の形と

なっている。
「黒斬手か」
  ケインの問に、ジークが頷く。剣と化した左手を意身術で動かし、鋼鉄の鎧すら断ち

斬る技である。極度の精神集中を必要とし、反動で肉体に過負荷が発生する為、実戦で

はめったに使えない。しかし、壁相手であれば、役に立ちそうだ。
「やれ、ジーク」
  激しく揺れる宮殿の地下で、ジークが静かに気を凝らす。ジークの口から気合いが迸

った。漆黒の左手が風となり、壁を斬る。
「やった!」
  ケインの歓声と共に、壁の一角に丸い穴が開く。ケインはその穴へ飛び込む。通路が

続いていた。どこへ行くかは判らないが、とりあえず今のまま留まっているよりは、ま

しに思える。
「いくぞ、ジーク!」
  ケインがジークに声を掛ける。ジークは、うずくまったままだ。激しく嘔吐している

ようである。ジークの肉体も、フレディとの戦いで、極限状態になっていたようだ。
「もうだめだ、ケイン」
  ジークが力なく言った。
「一人で行ってくれ」
「馬鹿野郎!」
  ケインは、素早く考える。このまま先へ進んでも、何があるかわからない。魔族とば

ったりの可能性も、十分考えられる。ジークをつれていけば、戦力にならないにしても

、おとりくらいにはなるかもしれない。
  ケインはジークを背負った。あまりの重さに、数歩よろめく。
「すまない、ケイン」
「太りすぎだぞ、どう考えても」
  ケインはジークを背負って、通路を歩きだす。けっこうきつい道中になりそうだ。
「ケイン、もし助かったらお前の言う事何でもきくよ」
「本当だな」
  ケインは、歯を食いしばりながら言った。
「まず、馬鹿喰いはやめろ。もう少し痩せることだ」
「判ったよ」
「それと、めったやたらと人を殺すのもよくない。やめろ」
「判ったよ」
「それと、女を見るととりあえず犯すというのもよくない。やめろ」
「判ったよ」
「それと、強盗は程々にしとけ。ある程度は法も守るべきだ」
「判ったよ」
  こうして二人は暗い通路へと、消えていった。

  ロキとフレヤは、古の神殿の廃虚に立っていた。東の空は朝焼けで、薄い紫色に染め

られている。その空の下に、ノースブレイド山が黒く聳えていた。
  ノースブレイドの南側、ジゼルの城があったところは、崩れ落ち廃虚と化している。

ナイトフレイム宮殿が崩壊した衝撃で、ジゼルの城も破壊されたようだ。
  フレヤは、朝日をうけ燃え上がるように輝く金色の髪を靡かせ、静かに言った。
「クラウスが死に、封印を強引に破壊した今、私の記憶はもう戻らないはずだ。お前と

の契約は無効だな、ロキよ」
  フレヤの背後に立ち、未だに昏い西の空を背負った黒衣のロキは、答えた。
「方法はあるぞ、フレヤよ」
「ほう…」
「星船へゆけば、記憶を取り戻す術がある。それを俺は知っている」
  フレヤは苦笑した。                 
「いいだろう、ロキ。ではどこへ向かう?」
「西だ」
  フレヤは、消えつつある夜の闇が留まった西の空を見る。その青い瞳が、冬の海の




前のメッセージ 次のメッセージ 
「長編」一覧 つきかげの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE