#3591/5495 長編
★タイトル (BYB ) 96/12/13 21: 5 ( 76)
雪原のワルキューレ38 つきかげ
★内容
のブラックソウル」
「あいにくとね、」ブラックソウルは、うんざりとした顔になる。「あんたに任せられ
ないんだ。あんた、みつけた黄金の林檎を、トラウスのユグドラシルの根元にある、ヌ
ース神が造った結界の中へ戻す気だろ」
「いかにも」
ロキが頷く。ブラックソウルはやれやれと、首を振った。
「あれは、オーラが持ってないと、まずいんだよ。なにせオーラは正当王朝を名乗って
、トラウスを占拠しようとしている。黄金の林檎は、その為にいるんだ」「愚かだな」
ロキは、疲れたように言った。
「同感ではあるが、しかたない。手を引いてくれよ」
「折り合いがつかなければ、死んでもらうしかないのだぞ。巨人族は、完全な戦士だ。
おまえでも、かなう相手では無い」
「そいつは、どうかな」ブラックソウルが、皮肉な笑みをみせる。「ジゼルに捕らえら
れた巨人というのは、あんたなんだろ?」
フレヤの瞳が凶暴な光を宿し、ブラックソウルへ向けられる。ブラックソウルは、何
も感じないように、笑った。
「図星だね。怒るこたぁない。ただ、ジゼルにできて、おれにできない訳は無い。そう
思わないかね、ロキ殿?」
フレヤは、剣をブラックソウルへ向ける。
「試すがいい、小さき者。自分の命を賭してな」
ブラックソウルは、低く笑った。そして背後のクリスへ、声をかける。
「クリス!」
女魔導師が聖壇の上で立ち上がり、ブラックソウルを見る。
「こちらの巨人戦士に、夢を見せてやれ。とびっきりのやつをな!」
蒼白の冬の帝王が、地上を支配する時のように、白いマントを靡かせゆっくりとフレ
ヤは歩む。そして、聖壇上のクリスと向き合った。
クリスは銀色の髪を乱し、聖なる白痴のごとく虚ろな青い瞳をさまよわせ、天上の美
神を迎え入れるように、両手を高く掲げる。開かれた口から、天使達が降臨する時に鳴
らされる喇叭のように、叫びが放たれた。
フレヤは見る。クリスの掲げられた両腕の間に、空に輝く太陽も薄らぐような、凄ま
じい光が出現するのを。フレヤは真夏の幻惑のように、視界を覆った白い光に目を眩ま
せ、数歩下がる。瞳を閉じ、死のような暗闇を見つめた。
そして再び、フレヤが南国の海のように青く輝く瞳を開いた時、熱く激しく渦巻く蒸
気が立ち昇った。フレヤは、思わず顔を腕で覆う。
フレヤは、ゆっくり踏み出す。あたりは白いメイルシュトロオムのような蒸気と、乱
舞するサラマンダのような炎に包まれている。そこは、混沌の王が支配する地のように
、暴力的な熱気と破壊に満ちていた。
空を見上げると、ビロードの天蓋のような黒い夜空に、砕けた宝石のような星々が煌
めいている。フレヤは漆黒の夜空の下の、白い闇の中を歩む。それは紛れもなく、どこ
かで見た光景であった。
(まさか…)
フレヤは、自らの肉体を見おろす。美の化身のように輝く肢体が、破壊神の抱擁のよ
うな、熱気の中に曝されている。彼女は、一糸纏わぬ裸体であった。
突然、混沌の神の領土から抜けでて、雪原と針葉樹が目にはいる。そこは、渓谷のは
ずれであった。フレヤの確信は、高まる。
「予言の通りだ」
星灯に輝く真白き雪原に、一人の老戦士と、屈強の戦士が立っていた。白い総髪を、
風に靡かせている老戦士は、フレヤに語りかける。
「あなたこそ、我らラーゴスの民の守護神、フレヤ殿だ」
老戦士は、遠くを見る瞳をして、語り続ける。フレヤの、広壮な冬の蒼い空を思わす
瞳が、静かに老戦士を見つめていた。
「あなたは三千年前、魔族の魔導師クラウスと共にこの地を訪れ、氷土の中で眠りに就
かれた。しかし、予言では三千年後、天