AWC 雪原のワルキューレ32     つきかげ


        
#3585/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  20:11  ( 76)
雪原のワルキューレ32     つきかげ
★内容
鱗に身を覆った竜、完璧な美を備えた真人である巨人達、そして、漆黒の肌に輝く黄金

色の髪を持つ魔族がいた。それは、ノスタルジィと憧憬、そして夢見るような安らぎに

満ちた世界である。そこに描かれた世界こそ、原初の黄金時代といえた。
「ここか、魔族最大の魔導師といわれる、クラウスの眠る場所は」
  ブラックソウルが、呟くように言った。聖壇を登り、棺の前に立つ。その口元は、不

遜な笑みを浮かべ、瞳は挑むように、煌めく。かつて人類を家畜として支配した魔族に

対する畏れは、微塵もなかった。
  ブラックソウルは、棺に足をかける。そして、言った。
「クリス、頼むぞ」
「は?」
「クラウスに、起きてもらわねばな。そうしないと、黄金の林檎を、どこにやったのか

教えてもらえまい。クラウスの精神へ呼びかけて、目覚めさせてくれ」
「はい」そう応えたクリスの顔は、蒼ざめている。クリスは、蒼白の、しかし決意に満

ちた顔で、聖壇のブラックソウルの横へ、上がった。
「ここは、任せる」
  嘲るような笑みをクリスに投げかけ、ブラックソウルは聖壇をおりた。
「さて、我が友人たち、ケイン君に、ジーク君」
  ブラックソウルは、ケイン達に向かい、言った。
「ここで我々の旅は、終わりだ。幸い何事も起こらず、君達の手を借りることもなかっ

た。そこでだ」
  ブラックソウルは、邪悪な笑みをみせる。
「選ばせてあげよう、君達に。私がこれからクラウスから聞き出す話は、君達に聞いて

欲しくない。どちらがいいかね、ここで我々と戦って死ぬか、この上の階で魔族と戦っ

て死ぬか?」
「そういうことなら」ケインは獣のように笑う。
「あんたらを殺して、そのユグドラシルの枝から作った木刀をいただくよ。そして、こ

の先へ進む。どうだい?」
「残念だったね、ブラックソウルさん」ジークが朗らかに言った。「おれ達は、無敵な

んだよね、人間相手なら」
「さて、どうかな」ブラックソウルは無言で、フレディに合図を送る。フレディは、ジ

ークの前に立った。フレディは、入れ墨で隈どられた魔神のような顔に、笑みをみせる

。
「嬉しいね、無敵を名乗る強い男と戦えるとは」
  そういうと、腰の木刀をはずす。もう一方の腰につけた、通常の長剣はそのままだ。

木刀を傍らに置くと、フレディは構えをとる。
「始めようか、無敵の男よ」
  ケインは、アニムスを見て言った。
「ということは、おれの相手はあんたかい」
「いや」ブラックソウルが、楽しそうに言った。「アニムスにあんたの相手は荷がかち

すぎる。おれが相手になろう」
「ほう」ケインは、値踏みするようにブラックソウルを見る。どの程度の実力かは判ら

ないが、ケインの技を見抜いているようだ。おそらく、魔族のいた広間で、闇水晶剣を

手にしているところを、見られたのだろう。
  ケインがユンク流の剣技の使い手だと知り、なお戦いを挑んで勝てると思っているの

なら、相当な技の持ち主のはずである。ケインは、間合いを測りながら、ゆっくり歩く

。
「おっかないね、あんたは」ケインは、ブラックソウルに向かって言った。普通、戦い

が始まる前というものは、独特の緊張と不安があるものだ。命のやりとりをやるのであ

れば、どんなに場数を踏もうと、気持ちの昴ぶりは抑えきれない。しかし、目の前のブ

ラックソウルは、緊張のかけらも感じさせない、リラックスした笑みを見せている。
  もしそれが、見せかけだけで無いのなら、ケインは、とてつもない怪物を相手にして

いることになる。
(こりゃあ、いきなり本気だすしか、無い




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