#3584/5495 長編
★タイトル (BYB ) 96/12/13 20:10 ( 75)
雪原のワルキューレ31 つきかげ
★内容
と隠される。後に残ったドルーズは、力つきたように、膝をつく。その顔は死者のよう
に青ざめ、消耗しつくしていた。
さすがに、ドルーズにとって魔族以上に古く、邪悪な存在といえる竜を操るのは、凄
さまじい労力を必要とするようだ。ドルーズはうずくまり、体力の快復をじっと待った
。
それは、巨大な吹き抜けであった。円筒の吹き抜けが、遥かに深い奈落の底から、ノ
ースブレイド山の底部に向かって突き抜けている。
ブラックソウルの一行は、その吹き抜けの周辺を、螺旋状に下ってゆく階段にいた。
ジークが階段から身を乗りだし、地下を眺める。巨大な砲身の中に、いるようだ。
その、定かに見ることのできない暗く深い地底には、確かに何か居る。その邪悪な気
配は、まるで火山の火口から、立ち昇ってくる熱気のように、ジークの顔をうつ。
「あまり、覗きこまないほうが、いいわよ」
灰色のマントに身を包んだクリスが、声をかける。
「この奈落の底には、あの邪神ゴラースがいるわ。ゴラースは、目覚めようとしている
。へたをすれば、魂を引きずり込まれるわよ」
ジークは晴れた空のように青い瞳を輝かせ、笑った。
「おっかないところだね。でも、おれは魂なんてないから平気さ」
「馬鹿いいなさい」クリスがあきれ顔になる。
「本当だよ。おれ唯物論を信じているから」
「この馬鹿は、ほっといていいです」
ケインが口をはさむ。
その時、背後から人の近づいてくる気配があり、一番後ろにいたクリスが振り向く。
アニムスであった。
「ブラックソウル様」
声をかけられ、ブラックソウルが振り向く。
「ドルーズは、魔族の魔導師をしとめました。ただ、体力を使い果たし、動けませんが
」
ブラックソウルは、少し微笑んだ。
「まあ、いい。帰りにひろうさ」
「ブラックソウル様」クリスが言った。「ドルーズは、ここで片づけておくべきでしょ
う。今が彼を倒せる、唯一の機会かもしれません」
ブラックソウルの瞳が、くらく煌めく。
「おれに指図するのか?」
クリスは無言で、ブラックソウルを見つめる。ブラックソウルは、クリスに微笑みか
けた。
「我々の目的は、黄金の林檎だ。ゴラースにもジゼルの野望にも興味はない。やつらが
、たとえオーラを魔力で蹂躙したとしても、どうでもいいことだ。この手に黄金の林檎
があればな」
「判りました、ブラックソウル様」
ブラックソウルはクリスに頷いてみせると、先へ進み出す。ブラックソウル達の一行
は、巨大な縦穴の周囲を回る階段を、下へ下へと降りてゆく。
あたりを覆う薄闇がしだいに濃くなり、冷気と瘴気が合わさったような、闇のものの
気配が強くなってきたころ、階段の終着点にたどり着いた。そこには、巨大な鉄の扉が
ある。その扉には、半神半獣の姿が、浮き彫りにされていた。
フレディとアニムスがその扉に手をかけ、開けようとする。その巨大な扉は、悲鳴を
おもわす、甲高い軋み音をたてて、ゆっくりと開いていった。
重々しい音が響き、扉は止まる。そこは、清浄な青い光に満ちた、礼拝堂のような場
所であった。ブラックソウル達は、そこへ、足を踏み入れる。
緩やかな曲線を描く円柱が二列に並び、真っ直ぐ奥へと続いていた。ブラックソウル
達は、その円柱の間を進む。正面には、聖壇の上に棺が置かれており、その後ろには荘
厳な壁画が描かれている。それは、かつて黄金の林檎の光が地上に満ち溢れていた時代
の、光景であった。
金色の光を放つ黄金の林檎の回りには、歪んだ体を持つキメラや、青銅の色に輝く