AWC 雪原のワルキューレ12     つきかげ


        
#3565/5495 長編
★タイトル (BYB     )  96/12/13  19:42  ( 80)
雪原のワルキューレ12     つきかげ
★内容
斬り馴れているようだ。特に中心にいる長身の男は、それなりに剣の技を学んだことが

あるらしく、構えが様になっている。
  ジークは左半身を前に出し、包帯を巻いた左手を腰のあたりで曲げ、ゆっくりと揺ら

し始めた。右手は、顎の下に構えている。ほぼ直角に曲げた左手を振り子のように揺ら

しながら、ジークはフットワークを使う。
  3人の男達は、丸腰のジークにかえって警戒しているようだ。正面の長身の男は左手

で、片刃の剣を下段に構えている。左右の男達は、両刃の剣を突く体勢で、構えていた

。
  ゲールは座ったままのケインに声をかける。
「君は、見ているだけのつもりかい」
  ケインは少し口を歪めて、言った。
「まあ、やつが調子にのりすぎたら、後ろから尻をけって止めますから、ご心配なく」

  ゲールは戸惑ったようにケインを見たが、視線をジークのほうへ戻す。ジークは左手

を揺らしながら、楽しげにいった。
「こいよ、こっちはいつでもいいぜ」
  ジークは、粒らな瞳を輝かせてあどけない笑みをみせる。
「恐いかい、丸腰の相手が」
  正面の長身の男が動いた。裂帛の気合いと共に、下段から剣をきり上げる。素早く激

しい踏み込みであった。
  突風のように、剣がジークの顔を掠めて上方へ振り抜けられる。いわゆる見せ太刀で

あった。一太刀目を相手に見切らせておいて、二撃目で初めて間合いに入る。一撃目を

かわしたと思い、攻撃に入ろうとした所を斬る手であった。
  しかし、長身の男の手は、ジークに読まれている。上方へ抜けた剣は、刃を返して上

段よりジークの頭上へ向かった。ジークはその剣に向かい、退かずに、間合いを詰める

。包帯を巻いた左手が、疾風のように動いた。
  キン、と甲高い音が響き、長身の男の剣がへし折られる。剣をへし折ったジークの左

拳は、そのまま長身の男の顎へ叩き込まれた。
  カウンターで拳を受けた男は、跳ね飛ばされる。仰向けに、床にダウンした。と、同

時に左右の男達が、ジークに向かって剣を突く。避けようのないタイミングと、スピー

ドだった。
  左右の男達は、その時、信じられないものを見た。ジークの丸いでっぷりした体が、

軽々と宙を跳んだのだ。ジークの巨体は空中で一捻りし、さらに一回転する。左右の男

たちの剣は、宙を斬った。
  ジークは、仰向けに倒れている男の腹の上に、着地する。男の絶叫が響き渡った。ケ

インが顔を、しかめる。
「内臓をやったな。一撃目で殺してやったほうがよかった。楽には死ねんぞ」
  ジークは男の体から降り、その体を蹴飛ばして残りの男達の前に転がす。二人の男は

、身を折って苦悶する仲間が足もとにいるせいで、踏み込みが止まった。  ジークはそ

の隙に、左手の包帯をとる。そこに現れたのは、闇であった。漆黒の闇、星のない夜空

のような闇が左手の形をとって姿を現す。
「あれは、」ゲールが呆然と呟く。「黒砂掌か。そんな……」
  残った男達は、苦悶する仲間を跨ぎ越え、ジークの前に立つ。ジークは再び左半身の

体勢をとり、黒い左手を振り子のように揺らしていた。
「待て!」
  ゲールの制止よりも一瞬早く、二人の男達は、踏み込んでいた。その時、ジークの左

手が黒い鞭のようにしなり、疾しる。
  二人の剣は二本共、へし折られた。ぬばたまの闇が凝縮したような左手は、鉄の剣を

木刀のように楽々とへし折る。ジークは、楽しそうに舌なめずりした。
「さて、」
「調子にのるな、ジーク」
「そこまでだ!ラハンの弟子」
  ケインとゲールが同時に叫び、ジークの動きが止まる。部屋の周囲の布が揺れ、十人

以上の剣を持った男達が現れた。ゲールは立ち上がり、男達の間へ入る。  3人の男

達が、ゲールの前へ出る。男達は、火




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