#3556/5495 長編
★タイトル (BYB ) 96/12/13 19:26 ( 76)
雪原のワルキューレ3 つきかげ
★内容
フレヤは右から左へ、剣を薙いだ。それは凄まじい竜巻のように、右端の騎馬兵をそ
の馬ごと宙へ跳ね飛ばした。そのまま馬は隣の騎馬兵へ激突し、鉄槌に撃たれたように
、3騎の騎馬兵は崩れ落ちる。
フレヤは立ち上がろうともがく騎士を、文字通り、踏み潰した。骨の砕ける音が響き
、血が雪を染めていく。
騎士達は、体勢を整え直し、巨人に向かって殺到するが、フレヤの大剣は草を刈るよ
うに、騎士と馬を薙ぎ払う。雪原に怒号と馬の悲鳴が、満ちあふれた。
再びフレヤとの間に距離を置いたジゼルは、激しく罵る。
「怪物め、手を焼かす。キース!」
ジゼルの呼びかけに、一人の長身の兵が進み出た。
「キース、お前の出番だ。見事あの怪物をしとめてみせろ」
兵士は頷く。その手には細長い筒が、あった。
「退け!」ジゼルは、剣を振り上げ叫ぶ。兵士達はフレヤのそばから、退いた。
フレヤは冷たい怒りを潜ませた瞳で、ジゼルを見つめる。
「観念したか、虫の女王」
「それは、こっちの台詞だ、妖魔の首領め」
ジゼルは、傍らのキースに合図する。キースは円筒型の砲弾を筒に入れると、狙いを
定め、引き金を引く。
轟音と、黒煙がキースを包み、火の矢かフレヤへ向かい飛んだ。
炎と爆音が、フレヤを飲み込んだ。爆煙か立ちこめ、フレヤの姿か消える。
「退がれ、退がれ」
ジゼルの言葉に騎士達はさらに距離をあける。やがて煙が晴れ、フレヤが姿を現した
。
「仕損じたか」ジゼルの言葉にキースは2弾目の用意に入る。
フレヤはゆっくりと、ジゼルに迫る。その大剣は頭上高く掲げられ、美しき瞳は青く
輝いていた。
「これで終わりだ、小さき女王」
「ああ、終わりだ」
フレヤの剣がジゼルへ届く所まで来た時、キースの筒が再度火を吹いた。爆煙がフレ
ヤを再度包む。
「そろそろ、弾にしこんだ麻薬が効くころです」
「で、あればいいがな」
フレヤはついに、膝をついた。息が荒い。風に流れた煙を吸い込んだ、馬と騎士が風
下で倒れてゆく。ジゼルのほうは風上であるため、影響はでない。
「この怪物を縛るぞ。鎖を持て」
ジゼルが叫んだ時、フレヤは剣を振るった。ジゼルの乗る馬の足が切断され、ジゼル
の身体は地面に叩きつけられる。
キースは3発目の麻酔弾を撃った。フレヤは剣でうける。爆煙に包まれながらも、フ
レヤは剣を振るった。キースの首が飛び、雪の上に転がる。
ジゼルは血塗れの地面から、煙を通してフレヤを見上げた。美しかった。燃え盛る黄
金の炎のような髪と、サファイアのように輝く青い瞳。白いマントに身を包んだ死の女
神は、ゆっくりと剣を振り上げる。
ジゼルは死を覚悟した。奇妙な陶酔が心に溢れてくる。再度爆音が響き、フレヤは煙
に包まれた。
振り降ろされた剣はジゼルをそれ、地に突き刺さる。
ジゼルは這いずって、倒れて来るフレヤの身体を避けた。ジゼルは霞む意識の中で、
美しい白い巨人が雪の中へ倒れるのを見る。あたかも巨大な白い鳥が、雪原に舞い降り
るように、フレヤは雪の中に倒れた。
黒衣に身を包んだ男装の女王、ジゼルは自室に魔導士ドルーズを招き入れていた。ジ
ゼルの部屋は、いかにも北方の辺境国らしく、様々な国の品が寄せ集められ飾られてい
る。
壁に飾られたタペストリは東の国クワーヌのものらしく、独特の幾何学模様を描いて
いた。片隅に置かれた陶器の壷は、さらに東方のカヤンの地からもたらされたものらし
く、見事な色彩と艶をしている。
また中央におかれた神獣の彫像は、南の