#3555/5495 長編
★タイトル (BYB ) 96/12/13 19:24 ( 93)
雪原のワルキューレ2 つきかげ
★内容
い火花を発して、折れた。兵士は魅いられた表情のまま、頭部を粉砕され、死んだ。
兵士達の死体は、あたかも子供が紙人形を切り刻んだ後のように、切断されころがっ
ている。身を守る鎧は、全く役に立たず、紙のように巨人の剣に切断されていた。
最後に残ったコーウェンは、自分自身の死を見上げた。彼女は天上に住まう女性戦士
、ワルキューレのごとく美しく微笑んでいる。
青く輝く空の下で、燃える太陽のように美しい金髪が舞い、蒼ざめた剣は天を貫くが
ごとく、高く高く振り上げられた。
(ああ、俺は伝説の中で死ぬんだ)
コーウェンは脈絡も無くそう思った。目の前の美しい巨人はまさに、伝説の詩歌の中
の存在である。
ごっ、と風が鳴いた。コーウェンの首は宙を舞い、コーウェンは陶酔の中で死んだ。
巨人は、死体の輪の中から、歩みだす。
巨人は聞いた。風の中に、さらに大きな部隊が移動する音が混ざっているのを。 彼
女は血塗られた剣を納めぬまま、走り出す。新たなる生け贄達をもとめて。巨人の動き
により風が動いた。
雪原を雪を蹴立てながら、騎馬部隊が移動している。百騎以上はいるその部隊の先頭
には、漆黒の鎧に身を包んだ女戦士がいた。彼女がライゴールの王、ジゼルである。ジ
ゼルは白銀の雪原の向こうに、散らばる死体を認めた。そして、その中心に立つ白い影
、巨人戦士も。
巨人は、待ち受けている。ジゼルは、彼我の距離が約10メートルに近づいた所で、
右手を上げた。百騎の騎士達は散開し、幾重にも巨人を囲む。騎士達はクロスボウや、
槍を持ち、巨人に狙いを合わす。
いかに巨人が無敵の戦士であれ、この重包囲は破れそうになかった。しかし、巨人の
美しき笑みは、静かな怒りを潜ませ、端正な顔に浮かべられたままである。 ジゼルは
面頬をあげ、浅黒く雪焼けした顔をみせた。その顔は、凍てついた荒野に生きる狼のよ
うに研ぎ澄まされていたが、野性的な美を存分に備えている。 ジゼルは嘲るような笑
みを見せ、美しい巨人に叫んだ。
「剣を捨て降伏するがいい、蛮族の首領、ラーゴスのフレヤよ。お前の命はとらんよ。
お前が従順であればな」
美しき白い巨人、ラーゴスのフレヤは、聞き馴れぬ冗談を聞いたというように、笑っ
た。
「小人の女王が私に降伏しろと?踏み潰されたくなければ、お前にふさわしい巣穴へ帰
れ、蟻の女王。地べたを這いずるものが、二足で立つ者に命令するとはな」 神のごと
き美貌のフレヤの言葉は、傲慢さすら感じさせない。彼女は侮辱ではなく、当然のこと
を言っているのだ。ライゴールの騎士達は怒りに蒼ざめ、ジゼルに攻撃の許可を求める
。ジゼルは逸る兵士を、片手を挙げて抑えた。
「フレヤよ、では、死ぬ覚悟をするのだな。まぁいい。どちらにせよ、お前は、お前に
ふさわしい見せ物小屋へ送ってやる。あわれな女トロールよ」
ジゼルは剣を抜き、空に掲げた。
ジゼルが攻撃命令を発する瞬間、巨人フレヤが跳躍した。白い竜巻のように宙へ舞っ
たフレヤは5メートル近い上空から、鋼鉄の柱のような剣をジゼルに向かって振り降ろ
す。
ジゼルは馬を捨て、地面に飛んだ。ジゼルの乗っていた馬の悲鳴が、響き渡る。馬は
胴体を切断され雪原に倒れた。
「ジゼル、お前はここで死ぬ!」
フレヤは叫ぶ。馬たちの間に、混乱が走る。騎士達は自分の馬を抑えるのに精一杯で
、攻撃どころではない。ジゼルは怯える馬たちの蹄を避け、地面を転がり回る。
「ジゼル、お前はここで死ぬ」
フレヤは剣を振るう。馬の首と一緒に騎馬兵の胴体も、両断される。湯気のたつ血と
内臓が地面にまき散らされ、雪原に赤茶色のぬかるみができた。
フレヤは車に剣を回す。その剣に馬達の胴体が切断され、死体が転がる。その様に怯
えた馬たちが、逃げようとし混乱が起こった。フレヤの前に包囲の裂け目ができる。
神であるフレヤの怒りにふれた獣たちが、恐怖のあまり作った道であった。その道の
向こうに地面に墜ちた、ジゼルがいる。
「ジゼル、お前はここで死ぬ!」
フレヤは再度叫んだ。
ジゼルは、乗り手を失って暴れている馬を一頭捕らえ、跨る。そして、フレヤに背を
向け、走りだした。
巨人は、ジゼルを追って走ろうとする。その前に、三体の騎馬兵が立ちふさがった。
「邪魔な」