AWC 月光4   金剛寺 零


        
#3523/5495 長編
★タイトル (ZWN     )  96/11/ 7  18:25  (200)
月光4   金剛寺 零
★内容
 女中は山荘を出てすぐの所を右に曲がった。そこには昨日晋太
郎が話していた東道が地面に横たわっていた。頭から血を流して
いて、とても生きているとは言える状態ではなかった。
 晋太郎は女中たちの間を割って東道に近寄った。そして、色々
な角度から東道の姿を見ていた。
 「警察に連絡を」
 女中にそういうと、山荘にかけていった。
 晋太郎は東道のポケットの中に何か入っているのを見つけた。
そこには月光塚が写っていた。そのほかには、何か影らしきもの
が三つ写っていた。
 晋太郎はそれをもとの位置に戻して警察の到着を待っていた。
 少し霧が出ていて、昨日よりも肌寒く感じ、また、朝日は暖か
く地面を照らさなかった。
 晋太郎は軽く手を合わせ黙とうをささげた。そんな事をしてい
るうちに警察が到着した。パトカーは1台だけで、天井では忙し
そうに赤い光がグルグルと回っている。中から人が出てくると晋
太郎はその場に立って敬礼をした。
 「これはこれは、手塚さんではないですか」
 晋太郎に声をかけてきたのは孝太郎の知り合いの染谷浩二であ
った。
 「染谷さん。この頃会わないと思ったらここに来ていたんです
か」
 「まぁ、そんなとこです。それで、被害者は?」
 「カメラマンの東道喜一というもので、昨日、温泉で知り合っ
たばかりなので詳しいことはわかりませんが」
 染谷は孝太郎と違って、1つのことに一所懸命になる性格の持
ち主である。
 染谷は東道の死体を丁寧に調べた後、県警に運ぶための手配を
した。
 「それでどういう状況だったんだ?」
 「朝方早く、ここの女中がここに来た時にはもう、東道がこの
位置に倒れていたらしく、中に入って他の女中たちを呼んできた
らしい。
 そこに私が朝風呂に入るために部屋を出ていくと、何か騒がし
いので後をつけてみると、このような状況だったのです」
 晋太郎は一通り説明すると染谷はパトカーに乗って県警に帰っ
ていった。
 そんな朝のゴタゴタも、いつの間にかなくなっていて、昨日と
同じ雰囲気に戻っていた。
 晋太郎はそんな中、さっきの出来事で1つだけ気にかかること
があった。それはあの写真のことである。あの写真は何のために
東道が持っていたのか?あの3つの影は何なんだろうか?そんな
ことが頭の中をグルグルと駆け巡っていた。
 晋太郎は孝太郎の所に電話をかけた。
 「もしもし、お父さんですか?」
 「ああ、晋太郎か。また何か,起こったのか?」
 幸いにも孝太郎は非番だったらしく家にいた。
 「ええ、東道と言うカメラマンが今さっき死体になって発見さ
れたんです」
 「東道?どこかで聞いたことがあるような気がするが」
 「思い出したぞ。東道喜一。俺の大学のときの同級生だ」
 晋太郎はまずい事をしたと思った。 
 「同級生ですか、そうとも知らず・・・」
 「いや、いいんだよ。それで、どういう状況なんだ?」
 「僕の推測だと、他殺だと思うんです。
ただ、実際の状況からだと、自殺の線がとても濃いような気がし
ます」
 「そうか、まぁ後々わかっていくことだから、あまり詳しくな
くてもいいんだが」
 「じゃぁ、詳しいことがわかったらまた、電話するから」
 「ああ、わかった」
 晋太郎はそういわれると電話を切った。何となくだが、いつも
の親父ではない口調だった。
 そして、”あいつ”をこの部屋に呼んだ。
 
 「コンコン」
 ドアがノックされた。晋太郎は自らドアを開けて、”あいつ”
を部屋の中に入れた。
 「一昨日のことなんだが、もう1度詳しく説明してほしんだが
・・・」
 ”あいつ”は眠い目をこすりながら首を立てに振った。
 「まず、死体を発見したときのことを」
 「私と剛が、パットの後を追って草むらに入っていくと、足元
に何か、硬いものがあって、光を当ててみたらその”木戸”さん
て言う人だったの」
 「それからどうしたんだ?」
 「それから、剛がその場に残って、私が皆を連れに行ったの」
 「そのあとは?」
 「たき火の場所まで戻ると、稔と美香が起きていたの。で、少
し経ってから残りの1人がその場に戻ってきて剛のいる場所へ行
ったわ」
 「”木戸”の死体がある場所まで戻ると?」
 「剛がその場に倒れていて、側にあったはずの”木戸”さんの
死体が無くなっていたの。
 地面には、何かを引きずった跡がついていて、死体は崖下に落
ちたんだと思ったわ」
 「そうか、わかった。朝早くにすまんなぁ」
 「いいえ。また何か会ったら、いつでもどうぞ。
 でも何かあったの、今日朝早くにサイレンの音がしたけど」
 「ああ。この山荘に泊まっていた東道という人が死んでいたん
だ」
 ”あいつ”はそう聞くと静かに部屋を出た。何かを考えている
雰囲気だった。 
 晋太郎も”あいつ”が部屋を出た後、東道の部屋を調べるため
に席を立った。
  
 晋太郎はロビーに立ち寄ると、訳を話してスペアキーを借りて
きた。東道の部屋はちょうど晋太郎の部屋の真上にあたる。
 東道の部屋には1度ロビーに出て、それからでないと上がれな
いようになっている。2階のどの部屋に行くにも、同じ経路をわ
たらなければならない。
 晋太郎は東道の部屋の前まできた。そして、一息入れてからス
ペアキーを入れカギを外し、ドアのノブに手をかけた。静かにノ
ブを廻しドアを開けた。
 中は荒らされてはおらず、綺麗に片づけられていた。晋太郎は
中には入りドアを閉めた。
 晋太郎はまず、カメラを探した。しかし、肝心のカメラはどこ
にもなかった。晋太郎は東道のカバンを開けて、ネガを探した。
 ネガはカバンの奥底に眠っていた。晋太郎はそれを太陽の光に
照らしながら覗いた。そこには、山々や森、この山荘などの風景
が写されていた。
 晋太郎はそのネガをあったようにしまい、今度は写真を探した。
 写真として現像されていたものには、さっき見た影は映ってい
なかった。晋太郎はそろそろ東道の部屋を出ようとしてドアに歩
み寄ったとき、1つの入れ物を発見した。
 それは取り立てのフィルムだった。晋太郎はそれをポケットの
中にしまいこんで部屋を後にした。
 晋太郎が部屋を出ていった後、東道の部屋の押し入れがそっと
開いた。中からは1人の人物が出てきた。そして、畳を「ドン」
と殴りつけて窓から外へと出ていった。

 祥子はその時、晋太郎から聞いたことを考えていた。カメラマ
ンの東道が何かをとったために殺された。祥子の脳裏にはそんな
原因が考えられた。
 しかし、何をとったのだろうか。祥子にはわからなかった。し
かし、木戸と東道には何かつながりがあるのかもしれないと思っ
た。
 祥子は頭の中を空っぽにするために温泉に入ることにし、その
支度をし始めた。

 「プルルルル、プルルルル」
 晋太郎の電話が鳴り響いた。
 「もしもし」
 「ああ、晋太郎か」
 「親父、何かあったのか」
 「”木戸”の周辺を捜査していると妙なことがわかったんだよ」
 晋太郎は孝太郎からその話を聞いた。そして電話をきって部屋
に入った。
 そして晋太郎は”あいつ”たちの部屋へと向かった。

 祥子は準備が整うと、部屋を出て温泉に向かった。
 女性用に温泉は、晋太郎が入った温泉の向かい側にある。大き
さなどは全て同じで、何1つ変わりが無い。
 祥子が温泉につくと、何かいやな匂いが漂ってきた。それは前
にも1度嗅いだことのあるいやな匂いだった。
 祥子は温泉内をそっと覗いた。
 そこには水全体が真っ赤に染まっていて、水の中心には見るも
無残な理恵の姿が浮かんでいた。  
 真っ赤に染まった水の中心に浮かぶ理恵は服を着ていた。昨日
着ていた服の姿のままで。
 理恵の周りの血の色は、他の場所に比べると濃かった。
 祥子はすぐにその場をはなれ、山荘内の晋太郎の所へと向かっ
た。 
 「おじさん。ねぇ、おじさん」
 ”あいつ”は「どんどん」とドアをたたく。
 そして、ドアがゆっくりと開いた。
 「どうしたんだ。こんなに早く」
 「りっ、理恵が死んでるの」
 「ほっ、本当か」
 「うん。温泉の仲に浮かんでいて、水が赤く染まっていたの」
 晋太郎はそれをきくと、祥子をおいて現場に向かった。
 ”あいつ”は自分たちの部屋に戻り他の皆を呼んでから殺人現
場に向かった。額には小さなしずくが何粒も付いていた。それは
暑いのではなく、冷や汗である。
 晋太郎は浴衣姿のままで走っていた。浴衣の裾は大分はだけて
いて、何か生き物のような動きをしていた。”あいつ”は普段着
ているようなラフな格好で晋太郎の後を追っていく。まるで、パ
チンコ玉が次から次へと押し出されている情景の一部のようであ
る。
 外は徐々に陽が高い位置に昇っていく最中で、眩しい7色の光
線が2人の目を晦ましていた。昨日までの風も今はなくなってい
る。そして、鳥達のさえずりが朝をかもち出している。
 ”あいつ”以外の3人は、まだ起きたばかりで直ぐには来なか
った。
 現場となった温泉に着いたのは、”あいつ”が発見してから5
分後だった。
 水はさっきよりも明度を増し、逆に黒々となっていた。そこに
陽が当たり、鮮やかな赤い血の水の表面が銀色に輝いている。血
の匂いはあまりせず、ただ目の前に見える理恵の死体だけが、吐
き気を作り出す原因となっていた。
 「”おまえ”。ちょっと手伝え」
 晋太郎は”あいつ”にそういうと、浴衣の裾を上げ、水の中に
入っていった。”あいつ”もその動作を見ると、ズボンの裾を折
り曲げて入った。
 「足をもって、外にだすんだ」
 「わかったわ」
 晋太郎は理恵の脇に手をかけて持ち上げ、もう一方を”あいつ”
が持ち、外へと運んだ。
 死体となった理恵は、温泉につかっていたせいもあってかまだ、
生暖かかった。
 「”おまえ”。警察を」
 そういわれて”あいつ”はロビーへと走った。

 晋太郎は理恵の体を観察していた。死因は多分、出血多量であ
ろう。刺し傷が背中に2カ所ある。服は昨日のものだろうか、白
地なので血の鮮明さがよくわる。
 お湯につかっていたせいで死亡推定時刻に誤差が少し出るであ
ろう。晋太郎は理恵の手に何かがあるのを見つけた。それをハン
カチでとってしまった。





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