AWC 月光5   金剛寺 零


        
#3524/5495 長編
★タイトル (ZWN     )  96/11/ 7  18:27  (196)
月光5   金剛寺 零
★内容
 警察が着いたのはそれから10分後のことであった。
 「やぁ、染谷さん。また、こんな所で」
 晋太郎は立ち上がって染谷に言う。
 「まぁ、職業柄、こんな所で会うのが多いからねぇ」
 染谷はポケットから手袋を出して手にはめ、晋太郎のそばで横
たわっている理恵の死体を触った。
 「こちらの仏さん、晋太郎君はしっているのか?」
 染谷が調べながら晋太郎への質問言う。
 「えぇ、まぁ。”あいつ”の友だちでして」
 「”あいつ”の。それは可哀相に。で、第1発見者は?」
 「”あいつ”本人です」
 晋太郎は染谷にやや暗い声で言った。
 「そうか」
 染谷は手袋をとり立ち上がった。
 「染谷さん。ちょっと気になるものを見つけたんですよ」
 晋太郎はそういうと、昨日見つけたフィルムを渡した。
 「これは?」
 「東道さんの部屋から発見したものです」
 「それと”あの女性”の検死の結果は?」
 染谷は手帳を出していった。
 「それともう一つ話しておきたいことがあるんだ」

 理恵の死体を警察がもって帰ったのは、それから30分後のこ
とである。しかし”あいつ”はその場に一行として姿を現さなか
った。場合が場合のだけにと晋太郎は思い、部屋へと引き上げて
いった。
 晋太郎は部屋の前まで行くと後ろから声をかけてくるものがい
ることに気づいた。晋太郎は振り返るとそこには”あいつ”の姿
があった。晋太郎は”あいつ”を部屋の中にはいるように進める
と、自分も中には行っていった。
 「一つ”おまえ”にききたいことがあるんだ」
 晋太郎はあまり傷つけないように気をつけながら言った。
 「”あの女性”の死体を発見したときの皆の行動をもう1度教
えてくれないか」
 「まず、理恵が後からきて、剛が倒れていて、あとの2人は私
が行くとその場にいたわ」
 晋太郎は自分の想像が当たっていることを確認しながら次にき
いた。
 「他の皆には、”あの女性”の名前を言っていないか?」
 「うん。まだはっきりとしてないから・・」
  これは運がいいと、晋太郎は思った。そして、
 「”峰岸裕子”と言う女性をしっているか?」
 晋太郎は言うと、すぐに”あいつ”は、
 「その子は剛の彼女よ」
 晋太郎は自信に満ちあふれていた。あとはあの写真の結果次第
だった。
 晋太郎は自分の考えを全て”あいつ”に話した。
 「まさか、そんなことって・・・」
 「まだはっきりとはしないんだが、多分・・・」
 ”あいつ”は悲しみを隠せなかった。しかし、すぐに立ち直っ
て、
 「で、どうするの?」
 「まだ、結果が出ないから、もう少し黙っていてくれないか?」
 「いいわ」
 ”あいつ”はそういうと、部屋から出ていった。
 その後ろ姿は、何とも暗く悲しみをにじみ出していた。晋太郎
はこれでも結構気を使ったつもりだったが、これほどにまでショ
ックを受けるとも思わなかった。
 
 晋太郎は父親孝太郎に電話をかけた。
 「もしもし、親父か」
 「晋太郎か、何か」
 「昨日言っておいたことはどうなってる?」
 「ああ、今そっちに向かってもらっているよ」
 「ありがとう。それともう一つ頼みがあるんだけど・・・」
 晋太郎は孝太郎にその頼みを話し、自分の事件についての考え
と、理恵について話した。
 「わかった。明日までにそうしておく」
 「ありがとう」
 晋太郎はそういうと電話を切った。
 そして5分くらいたったとき部屋の電話が鳴った。
 「はい」
 「染谷さんと言う方から、電話ですが」
 「つないでください」
 晋太郎がそういうと女中の声は消え、染谷の声が聞こえてきた。
 「晋太郎君か。例のフィルムのことだけど」
 「何か写っていましたか?」
 「それがある2人とあの女性が写っているんだよ」
 晋太郎はこれで事件解決だと思い、
 「”あの女性”の死体ですけど何型でした?」
 「O型だが。何か?」
 「いえ、ちょっと染谷さんに相談したいことが・・・」 
 晋太郎は染谷にも、孝太郎に言ったことを言った。
 「わかった。全て、晋太郎君に任せるよ」
 「ありがとうございます」
 晋太郎は受話器の前でお辞儀をしている。
 「じゃぁ、そういうことで。しっかりやれよ」
 「はい」
 晋太郎はそういわれて受話器を置いた。
 そして、”あいつ”に電話をかけた。 
 「あぁ、”おまえ”か。明日の午前9時に、おまえ等5人を月
光塚に集めてくれないか?」
 「どうして?」
 「事件の謎解きをするのさ」
 「謎解き?」
 「そう。この事件の犯人を暴いてやるのさ、明日、あの場所で」
 ”あいつ”は驚きを隠しながら、晋太郎の言うことに相づちを
打っていた。
 「わかったわ、9時ね」
 「ああ、それじゃぁおやすみ」
 「お休みなさい」  
 晋太郎は電話を切って、明日のための事件整理を始めた。
 そして朝がきた。
 昨日の夜は月も姿を見せてはくれなかった。星の1つや2つは
見えたが・・・。雲の一部が少し明るくなっていただけの寂しい
夜であった。
 今朝も鳥の鳴き声は健在だった。昨日よりもうるさいと晋太郎
は感じている。朝日は晋太郎の部屋を輝かしいほどライトアップ
しいくれている。
 晋太郎はそんな清々しい雰囲気の中、目を覚ましたのである。
腕時計を見ると7時半をさしていた。晋太郎は布団から出ると顔
を洗って気持ちを引き締めた。
 そして、昨日まとめたメモにもう1度目を通すと、いすに座っ
て自分の中の事件の真相に照らし合わせて、シュミレーションし
てみた。
 「物的証拠も事実も全てが揃っているんだ。これで事件は解決
するんだ」と、自分に言い聞かせていた。
 そして少し早めの朝食をとることにした。
 朝食をとって少しの時間が余った。晋太郎は一足早く駅にある
人物を迎えに行った。
 その人物は”木戸真理子”である。 
 午前9時、”あいつ”は晋太郎に言われた通り月光塚に他の3
人を連れてきた。月光塚と言っても、祥子が1日目にキャンプを
した高台に集まっていた。
 晋太郎は1、2分遅れてその場に表れたのである。
 「まず、皆さんにここへ集まって貰ったのは、あの山荘で悲劇
的に起こった2つの殺人事件の謎と、皆さんがここで見つけた”
女性の死体”についてお聞きしたいことがあるのです」 
 晋太郎がそういうと、ある1人のものはあたふやとした。それ
は自分に対して警告をしているようにそのものには聞こえたのか
も知れない。
 晋太郎はそれをよそ目にさっきの続きを話した。
 「まず、カメラマン東道さん殺害事件について。これからお話
することにしましょうか」
 晋太郎はそういうと一歩また一歩と歩みながら話の続きをし始
めた。
 「何故、東道さんが殺されたのか?この疑問は真っ先に崩れま
す。それはカメラであるものを写したのです」
 祥子たちはただ黙って晋太郎の話を聞いている。”あいつ”は
この話を1度聞いている。しかし、そんな仕種も表に出さないで
晋太郎の話を聞いている。
 ほかの3人はただ漠然と立っている。手を後ろで組んでいたり、
前で手を擦り合わせたり、腕を組んで話を聞いていた。
 「それはあなたたちが発見した女性と2人の人物が争っている
所が写っていたんだよ。
 そのうちの一人は後から殺された理恵さんこと高藤理恵本人だ
ったんだよ」
 「それは本当なの、おじさん」
 ”あいつ”は思わずそう言った。他の3人は思わず目を丸くし
た。目の前にいる刑事と自分たちの同級生の祥子が、親戚であっ
たことに。そして、それに今まで気づかなかったことに。
 「あぁ、本当だよ。引き伸ばしてみたら理恵さんだったよ。そ
こで皆さんに、1つ尋ねたいことがあるのですが、よろしいです
か?」
 祥子達はまわりの顔色をうかがって縦に小さくうなずいた。
 「この写真何ですが、見覚えありのせんか?」
 晋太郎はここで発見した女性の死体の顔写真を見せた。晋太郎
は始めこの女性の死体こそが”木戸真理子”だと思っていた。し
かし、その後の解剖などの結果からこの女性の死体は”峰岸裕子”
のものだったのである。
 ”あの時の女性”と、祥子は写真を剛たちに渡しながら言った。
 ”剛の彼女”と答えたのは、他の3人だった。
 「そう、”あの時の女性の死体”であり、剛君の彼女、”峰岸
裕子”さんなんだよ」
 晋太郎がそう言うと、真っ先に意見を述べたのは言うまでもな
く、祥子だった。
 「そんな・・・。そんなことって・・・」
 「いや、これは解剖の結果わかったことなんだ。ただし、1つ
面白い事もわかったんだ。
 それは、祥子に言った”木戸真理子”さんのことなんだ。あの
時、子にはこの女性の死体が”木戸真理子”さんのものだと言っ
たね?実はそれが間違っていたんだ。
 何故なら、”木戸真理子”さんと”峰岸裕子”さんは一卵性双
生児だったからさ」
 慎太郎はそう言うと手を挙げた。すると木の影から、さっき迎
えにいった”木戸真理子”が晋太郎に向かって歩いてきたのだ。
 そして、祥子達の目の前までくると慎太郎は丁寧に説明した。
 「木戸真理子さんは5日ほど前からこの近くにある友人宅へ家
出をしていたそうなんだ。それを知らずに母親が捜索願を出した
んで、こんな大きなことに発展してしまったんだ。そして、何故。
姓名が違うかは、2年前に離婚をして、別々の親に引き取られた
ということさ」
 真理子はすみませんという気持ちを込めてちょこんと頭を下げ
た。そして、来た道をそそくさと帰っていった。
 「さて続きだが、ここまで言った所で、皆さんの中で誰が犯人
であるか察しはついたでしょう。
 峰岸裕子および、藤堂喜一ならびに、高藤理恵殺しの犯人が。
 写真に写っていたもう1つの影、そして、3人を殺害した犯人。
それは三上剛君、君だね。君がこの事件の真犯人だね」
 慎太郎はそう言うと剛に目をやった。同じく他の3人も同じよ
うな動作をした。
 「そっ、そんな。剛、うっ、嘘だよねっ。そんなの、嘘だよね」
 祥子は目から涙が溢れていた。心から思っていた人が犯人だっ
たと言うのだから。
 「なっ、何を証拠にそんなことを言っているんですか刑事さん」





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