AWC 彼女は彼女 6  永山智也


        
#2978/5495 長編
★タイトル (AZA     )  95/ 2/21   8:32  (184)
彼女は彼女 6  永山智也
★内容
「さすがに気になりましたので、受話器の戻される音を聞いてから、健治に電
話のことを聞いてみたんです。が、相手にしてもらえません。あの子は、その
まま電話をかけ始めました」
「どこにかけたんでしょう?」
「分かりません。とにかく、慌てた様子でした」
 苦しそうに、飯島の母は語った。やや言葉を詰まらせたが、また話を再開さ
せる。
「かけた先につながらなかったらしく、無言のまま、健治は乱暴に受話器を元
に戻しました。
 どうしたのと、もう一度聞いてみたんですが、答えてくれません。こちらが
どう言葉をかけていいのか戸惑っている内に、あの子は学生ズボンをはき、学
生服を羽織り始めました。出かけるのと聞いたところ、『すぐ帰るから。学生
服着てないと、先生に見つかったらうるさいからな』と言っただけで、慌ただ
しく出て行きました」
「あの、健治君はよく夜遅く、一人で出かけることがあったんですか?」
「たまにありました。でも、それまではいつも、午前〇時までには戻ってきて
ましたから……あの日も大丈夫だと思ったんです。しっかりした子でしたし」
 再び言葉を詰まらせる飯島の母。感情が抑えきれなくなった様子で、目から
涙をこぼした。
 香苗の目からも自然に涙が出てきた。止めていれば……そんな後悔の念が、
どうしても沸き起こってしまう。
 赤くなった目をしばたたかせながら、やがて飯島の母は口を開いた。
「自転車を出す音が聞こえましたから、少し遠くまで行くんだなと感じました。
それからは、あまり気にしないようにしていました。いつものように帰ってく
るものだと信じて、待っていました。
 ですが、〇時を過ぎてもかえって来ません。連絡もありません。とうとう、
朝になってしまいました。学校が始まる時刻になったら、先生に連絡して、ど
うすべきか相談しようと思っていたんですが……。それより先に、事故の連絡
があったんです……」
「事故の連絡ですか」
 つらいだろうとは思いながらも、香苗は質問することにした。飯島健治の死
が、どのように見なされているのか、ほとんど何も伝わってこなかった。状況
を知りたくて、ここを訪ねたのだから、少しばかりの図々しさは許してほしか
った。
「警察からは事故だと言われているんでしょうか?」
「いえ、それがまだ、はっきりしたことは聞かせてもらっていないんです。そ
の、死因は溺れ死んだこととなっているようなんですが……」
 言いにくそうに答える飯島の母。
「あの夜の電話のことは、警察にも話したんですよね?」
「はい」
「それだったら、電話をかけてきた人が怪しい、何か事件に巻き込まれたと考
えるんじゃないでしょうか?」
「そうだと思います。刑事さんが来て、『高校の方で聞いてみたんですが、当
日の夜、お宅に電話をかけた人は見つかりませんでした』とおっしゃっていま
したから、少なくとも電話の件を調べてもらっているのは間違いないんです」
「あの、お母さんは電話の声に、聞き覚えはなかったんですか?」
「刑事さんにも答えましたが、全く聞き覚えありません。くぐもったような、
男性の声というだけで……」
 今の時点になっても必死に思い出そうとしているのだろう、飯島の母は首を
傾げながら言った。
「そうですか……大変なときにお話ししていただいて、どうもすみませんでし
た」
 香苗はいっとき、判断のために時間を要してから、辞去の言葉を述べた。警
察に直接聞いて教えてもらえるかどうか、不安に思いながら。


         4

>#793/797 ウェルトーク
★タイトル (XAM95037)  89/12/26  10:10  ( 22)
亥龍寺さんが……      ひろみ
★内容
 亥龍寺音さんがお亡くなりになりました。どこまで明かしていいのか分かり
ませんが、とりあえず、今朝の新聞(東京版だけではないと思います)に載っ
た記事を次に抜き出してみます。

<大阪の会社員、列車にはねられる
          **線・**
 二十五日、午後九時十五分頃、東京都**、**線**駅のプラットフォー
ムから、男性が線路へ転落。入ってきた**行き列車にはねられ、全身を強く
打って死亡した。警察の調べで、男性は会社員、諸井祐一さん(二四)と分か
った。転落した状況は、目撃者が少ないために、まだはっきりしていない。諸
井さんは知り合いと会うために大阪から出てきていたという。>

 この諸井祐一という方が、亥龍寺さんなんです。
 ご存知の方もおられると思いますが、私・ひろみは亥龍寺さんとおつき合い
を始めていました。一昨日、亥龍寺さんは私に会いに、東京に出てこられまし
た。その日と昨日の二日、私と亥龍寺さんは一緒にいたんです。それまで一緒
だったのに……。別れてほとんどすぐに、事故に遭われたことになります。何
て言っていいのか、分かりません。ずっと私が一緒にいて、駅まで見送ってい
ればと思うと……。

 まとまりのないことを書いてすみません。とにかく、お知らせしておきます。
亥龍寺音さんのご冥福をお祈りします。


>#794/797 ウェルトーク
★タイトル (FIO79396)  89/12/26  12:38  (  7)
え!       あかつき
★内容
 亥龍寺さんが亡くなったって、本当なんですか? 信じられない……。
 慌てて新聞を見直しましたけど、顔写真がないから、最初に読んだときは何
も思わず斜め読みした記事でした。
 今後、このシグ全体で何かするのでしょうか。とにかく今は、故人のご冥福
をお祈りいたします。

 では。


>#795/797 ウェルトーク
★タイトル (ABL77701)  89/12/26  18:23  ( 14)
亥龍寺さんが!       CAIN
★内容
 ひろみさんが言われた新聞記事を見ました。確かに、諸井祐一さんは亥龍寺
音さんの本名です。氏がひろみさんとおつき合いしていることを知っていたの
は、私の他にあと二人ぐらいでしたかね。このシグで、初めてオンラインカッ
プルが誕生したのを喜んでいたのに……信じられません。
 ひろみさん、お気になさることはないと思います。亥龍寺さんが不幸な事故
に遭われたのは悲しいことですが、その責任が自分にあるなんて思っちゃいけ
ませんよ。気休めでしかないでしょうけど、気落ちせず、元気を出してくださ
い。

 当シグとしてどうするか、ですが……。詳細がはっきりしてからになります
が、大阪の亥龍寺さん宅を訪ねたいと考えております。亥龍寺さんと面識があ
る人もない人も、考えておいてください。

 それでは。ご冥福をお祈りします。


>#796/797 ウェルトーク
★タイトル (KIN45031)  89/12/26  23:40  (  9)
亥龍寺氏       金猿
★内容
 謹んでご冥福をお祈りいたします。安らかに……。

 私も、亥龍寺氏とひろみさんのことを知っていた一人なんですが……。考え
てみたら、クリスマスの日、私とオペのCAINさん、そして倉成さんの三人
で集まって飲んでいたんですが、ちょうどその時刻、亥龍寺さんは事故に遭わ
れたことに……。そして、三人全員がお二人のことを知っていました。お二人
の話題も少なからず上がっていただけに、何とも言えない気分になります。

 ひろみさん、元気だしてください。


>#797/797 ウェルトーク
★タイトル (XAM95037)  89/12/27  10:04  (  7)
少し元気出ました     ひろみ
★内容
 皆さん、心配かけしてまったようで、すみません。何とか元気になろうと努
力しています。でも、どうしても事故のこと、亥龍寺さんのことを考えてしま
いそうです。

 短いですが、元気だってことだけお知らせしておこうと思って。

 それでは。


         6(5に先んじて)

 高見は恋人を殺した犯人について、確信を持った。そしてそいつを葬ろうと
心に決めた。

 ひろみは恋人を殺した犯人について、確信を持った。そしてそいつを葬ろう
と心に決めた。

 香苗は恋人を殺した犯人について、確信を持った。そしてそいつを葬ろうと
心に決めた。


         5

「えーっと、高見さん?」
 探偵は、依頼書に書き込まれた名前を確かめてから、正面に座っている女性
に目をやった。
「はい」
 小さい声が返ってきた。それは、初めて訪れた探偵事務所の雰囲気に圧倒さ
れ、おどおどしていると言うよりもむしろ、自分の身にふりかかっていること
に対する不安感のためらしい。
「ここに書いてもらったことに嘘はありませんね?」
「もちろんです」
「それはよかった。とにかく、依頼するからには私を信用してください。個人
のプライバシーは必ず守ります。さあ、話していただきましょう」
 探偵は、いつも繰り返している言葉を口にした。台詞のせいか、それとも探
偵自身の喋り方のせいか、たいていの依頼人はリラックスして話を始められる
ように感じる。
「はい……。実は、少し前、新聞にも小さく載ったはずなんですけど、ある火
事のことについてなんです」
「ははあ、火事」
 まだよく分からない依頼だったので、探偵は気のない返事をした。意識はし
ていないつもりなのだが、つい、心に感じただことをストレートに表現してし
まう。
「どのような火事だったんでしょう? なるべく詳しく話してください」

−−続く




前のメッセージ 次のメッセージ 
「長編」一覧 永山の作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE