AWC 司法神官ドラクーン(4)   みのうら


        
#2686/5495 長編
★タイトル (ARJ     )  94/ 7/10  21: 4  (101)
 司法神官ドラクーン(4)   みのうら
★内容

注 突然ですが、まことに勝手ながら、今回より「」の終わりのまる(。)を、省略さ
せていただきます。


 そりゃあそうだろう。
 エルフは大抵、どこの神殿でも奥深くしまい込んでしまう。彼らは長寿だが、決して
不死ではない。
 風にも耐えぬ、なよやかな風貌のものがほとんどだ。身体も、決して強靭とはいえな
い。
「噂には聞いてたよ。司法神殿に、書記じゃない、一角獣の神官がいるって。一角獣っ
てのは、こんなによく動く種族だったかね」
 まさか。一般に、エルフと呼ばれくくられている、特殊能力を持って生まれる人間の
、一つの分類にすぎない一角獣種の、僕が一人であるわけがない。
 帝都の主神殿には、どこでも書記や史学神官に一角獣種をあてている。
 長寿と、優秀な記憶力と、頭に小さな角が生える事だけが、一角獣種の特徴だ。
「さあ、言いな。なんで、おまえたち、あたしを狙う。普通の盗賊相手だったら、おま
えたちは出てこないはずだ。さあ!」
 もう一撃加えられたいかとナイフを突きつけてくる。
 微弱に触れてくる、感情の波が強くなった。
 どうやら、本心で言ってるらしい。なんてことだ。
 僕の期待は見事に外れた。
 僕とおなじもの、または僕に近いものならば、僕に触れ、瞳をのぞき込み、その正体
に気付かないはずがない。
 こいつは、長い螺旋の歴史の中で、偶然生まれた、多少エルフの能力を残す、ただの
人間だ。
 気配も存在感も感じられない、空気みたいな。
 すばやいのと、殺気を全く持っていないので、他人より有利にコトが進められた、た
だそれだけなのか。
 ああばからしい。期待して損した殺してしまえ。
 後の手続きは面倒だが、今この時の方が面倒だ。
 額に触れる。死人に口無し。見られたってかまわない。
「ほら、答えろよ!」
 頭を思いっきり捕まれた。それも、角を支柱に、親指をかけられて。
 ぼろ、とあっけなく角が取れた。
「おっ・・・とおっ!」
 さすがにティシュタルも驚いた。
 とっさにこぼれる灰色の小片を受けとめようと手を伸ばす。変な奴。
 うまくひっくり返った。油断してるからだ。
 ねばつく血のおかげで大して破れなかったが、それでもメダルを出すには充分な裂け
目が生まれた。右手をつっこむ。
「黒いティシュタル!」
 気合い一発、大声で叫ぶ。が、声に力が込められない。
 快調な時なら、相手の動きを止める事だってできる。今はだめだ。
「ティシュトリヤ大公家の依頼によって、おまえを逮捕する。大公家の守護祖神たる、
ティシュタルの名を使って働いた盗賊行為が、その理由だ。司法神アストレイアの名に
おいて、」
「馬鹿なことを!理由はそれだけか!」
 ナイフが光る。だめだ、まだ、手のひらの真ん中に、石が合っていない。
 胸を薙ごうとした切っ先が、銀の鎖を引っかける。
 じゃりんとメダルが滑って、偶然にもぴたりと位置に納まった。
「名前だってえ!そんなつまらん理由で、あたしを追いかけ回したのか」
「そうさ。それがお貴族さまってものだろう。神殿さえも、逆らえない」
「殺してやる!・・・わあっ」
 ぱあっと光る、メダルに視界を奪われて、ティシュタルがひるむ。
 にわかにみなぎる力まかせに、鎖を引く。よろけた足を、強風を起こしてはらう。
 砕けた骨が、元の位置に納まろうとうごめきまわる。
 胸が熱い。
 痛覚をオフにしていても、感触が痛い。
 熱をおびた身体が、少々重い。
 今ティシュタルが、僕を見た。油断のない視線。月並みな言い方だが、野生動物のよ
うな鋭さがある。ナイフを
 大きな目を細め、視線が動く。
 額で止まった。
 さあ。
「なんだ、その、赤いのは」
「角が取れて、血が出たのか。見た目だけだって解ってても、子供を殺すのはいい気分
じゃないな」
 そうじゃなくて。
「だが、おまえを帰せば、また来るだろうし」
「違うだろう!」
 目にも止まらぬ勢いで詰め寄る。血まみれの右手で相手の喉を締め上げ、いやもっと
も手が小さいから締め上げきれないが、左手で自分の前髪をつかみ、額を突きつける。
「もっと、他に、言うことがあるだろう!身喰い蛇とか、ドラクーンとか、ブラッド・サ
ークルとか、ユニットとか・・・」
 身体が宙に舞った。まだしゃべってるのに、なんて奴だ。僕を払い飛ばすとは。
 くるりと回って着地。
 鉄杖が近い。勢いで飛びつく。小石が飛んできた。いい勢いだ。
 拾った小石を、親指で弾いている。昔なつかし指弾てやつだ。
「変な奴だな、おまえは!」
 ナイフの打ち込みが来る。だが今度は肩では受けない。鉄杖の輪で受け、払い、突い
た。
 この程度なら勝てそうだ。いや、勝てて当然。
 自分が速くなったからか、相手が妙に鈍く感じる。打ち込みに鋭さがない、ような気
がする。考え過ぎか。
 相手武器の歯をこぼすように受け続ける。いい感じだ。
 奇妙な絶叫を上げて、敵は地に伏した。充分なショックだ。しばらくは立ち上がれま
い。
 身体を抱いて転げ回る獲物に、最後の一撃を加えるべく、足を踏み出す。やはり、頭
を割るか。身体が死ぬだけでは、安心できない奴も時々いることだし。
 風に乗って、ざわめきが聞こえてくる。森の方も始末がついたらしい。
 胸のメダルに手をやり、額の印を消す。普通の力で充分だろう。傷も、流れた血が怪
しまれない程度に回復していることだ。
「気の毒だけど、死んでもらおうか」
 月並みな台詞とともに、凶器を振り上げる。殺人に対して特に感慨はない。心に、禁
忌とするものもない。
「なんとおっ!」
 眼前に、石つぶてが来た。まさかの反撃!計算違いのタフさだ。
 その上。
 転がりざまに、僕の頭くらいの石を振りかざし、僕の頭めがけ振り下ろした。
「あ・・・わあああっ!」..




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