#2632/5495 長編
★タイトル (FJM ) 94/ 6/ 4 2:42 (186)
ヴェーゼ 第1章 リエ 2 リーベルG
★内容
2
30分後、特殊部隊の兵士たちは、目標の村落の包囲を完了していた。
----レポルト!
またもや作戦指揮官の口からパスワードが伝達され、リエは自分が眼前の村落のマ
ップを、家屋一軒一軒から通りに立っている木の高さに至るまで熟知しているのに気
付いた。
村の名前はガーディアック。人口は107人。農業と近くの森での狩猟で生活が成
り立っているようだ。数カ月に一度の割合で、商隊がやってくる他はほとんど出入り
する人間はいない。最も近い町でも20キロ以上離れた所にある。
アンストゥル・セヴァルティの科学技術文明のレベルは、地球に当てはめるなら、
ようやく十字軍の時代でしかない。もちろん電気どころか簡単な蒸気機関すら存在し
ないし、これからも決して発見されることはないだろう。もっとも地球からの移民が
本格的に始まれば、その限りではないかもしれない。
「そもそも人類が科学を発達させてきたのは……」アンストゥル・セヴァルティの
調査をまとめた科学者の一人が言ったことがある。「……人間の肉体だけでは大した
ことができないからだ。我々は自分の3倍の岩を持ち上げることはできないし、素手
で大木を切り倒すことはできない。ところが、レヴュー9の人間なら、ちょっと訓練
すれば、それぐらいのことを容易にやってのけるのだ。特に複雑な道具を使うことな
しに。科学技術が発展しなくても不思議ではない……」
今までに分かった限りでは、アンシアンはその魔法を使って戦争をしたことがない
らしい。だが、アンシアンは決して無知な原始人などではないし、魔法は無限の応用
がある。地球人が銃や爆薬でアンシアンを制圧することは、一時的には可能であって
も、決して長くは続かないだろう、という点で専門家の意見は一致している。
なのに、何故かあたしたちはアンストゥル・セヴァルティの村のひとつを全滅させ
ようとしている……
リエはそう考えた。考えただけであって、それが深刻な疑問へと発展することはな
かった。深層意識にかけられたブロックがそれを妨げたのだと知っていた。だが、自
分の心を操作されている不快感も怒りもわき上がっては来なかった。
----装備の最終点検をせよ。
命令が下りた。今度の命令は小隊長にのみ伝達された。リエは指揮下の小隊員に指
で合図を送った。兵士達は音も立てずに素早く装備の点検を行った。全員が目に入れ
ている特殊コンタクトレンズは、真の闇の中でも昼間と同様の視界をもたらすので、
不自由はない。もっとも兵士達はたとえ両目を完全にふさがれていても、銃を分解し
点検し、また組み立てることぐらい平気でやってのけるのだが。
リエも自分の装備を確認していた。武装といえばサブマシンガン一丁とオートマチ
ックが一丁、それに野戦ナイフを2本だけである。サブマシンガンとオートマチック
の弾丸はそれぞれマガジン一本分のみで予備マガジンは支給されていない。特殊部隊
の兵士ならば、最初の一発で相手に致命傷を与えるべく訓練を積んでいるが、それに
しても弾薬が少ない。
----ということは、この作戦は銃よりナイフの方が主体に考えられているのね。
自分の推測が正しかったことを、すぐにリエは知ることになる。
ただ一つ、まだ兵士達に知らされていなかったことがあった。支給された装備の中
に今まで見たこともない装置があり、それに関する知識はまだ甦っていなかった。直
径5センチ、長さ30センチほどのセラミック製の円筒で、片方の先端は丸くなって
いた。反対側は握りになっていて、親指の部分にコントロールらしいボタンがいくつ
か生えている。同じ装置をリエは2本支給されていた。
----軍研究部門の新兵器かしら?これの実験が今回のミッションの正体では……
その装置をはじめて見たとき、リエはそう考えた。だが、それならばわざわざ特殊
部隊など使う必要は全くない。それに実験にしては一個中隊は多すぎる。第一、研究
部門の人間らしい姿はどこにも見えないではないか。
リエは装備の点検を何度も繰り返しながら、コントロールされた意識で許される限
りの疑問を追いかけた。だが、あいにくそのための時間は短かった。
----点検やめ!戦闘準備態勢!銃器をロック!別命あるまで発砲を禁ずる!
リエは小隊に合図を送りつつ、自分の銃のセイフティをロックした。できるかぎり
銃声を響かせたくない作戦であるらしい。
数秒の間、闇と静寂が完全に辺りを支配していた。冬なので虫の鳴き声も全く聞こ
えない。兵士達はベッドの中でまどろんでいるのと変わらないぐらい冷静に次の命令
を待っていた。
----ア・レ!
闇を引き裂いて出現した彗星のように放たれた命令が全員を激しく叩いた。兵士達
は一糸も乱れることなく無言で飛び出し、全方向からガーディアック村へ静かに殺到
した。
よほど事前に綿密な調査が行われたらしい。リエは自分がどこの家の誰を殺せばい
いのかはっきりとわかっていた。周りを駆ける兵士達もそれは同様であるらしく、迷
うことなくそれぞれの目的へと突進していく。これだけ多くの人間が走っているにも
かかわらず、住民の睡眠を妨げるような騒音は全く聞こえなかった。
リエは目標の家の前に立った。木のドアに耳を押しあて内部の様子を窺う。この家
の住人は3人。夫婦とその娘だ。リエの担当は男である。リエの後ろに2人の兵士が
待機している。残りの女達をやるのは、この2人なのだろう。
ナイフを抜く。ドアには簡単なカギが掛かっていたが、リエは素早くそれを解除し
た。これも植え付けられた記憶の中にあったのだ。同時に後ろに待機していた兵士の
一人がドアの半分錆びついた蝶番に手際よくシリコンオイルを指している。
片手でそっと押すと、ドアは音もなく中に開いた。リエはするりと闇にまぎれるよ
うにしなやかな身体を滑り込ませた。中は完全な闇だったが、暗視レンズのおかげで
リエは十分な視界を得ていた。慎重に、だが敏速にリエは目標の農夫のベッドへと移
動した。
農夫はリエの記憶どおりの場所で小さく短い鼾をかきながら熟睡していた。50歳
を幾つか過ぎているぐらいだろうか。長年の農作業で鍛え上げた身体に逞しく筋肉が
ついているのは、毛布の上に投げ出した太い腕からもわかった。隣のベッドでは少し
太った女が同じように寝息をたてている。
リエは一瞬の逡巡もなく農夫に近付いた。右手でナイフを構えると、左手で農夫の
口をぐっと押さえつけた。男が驚いて両目を開け、わけがわからないままリエに視線
を合わせる。逞しい腕が動いて、自分の口を塞いでいるリエの手首をつかもうとした
が、一瞬早くナイフが農夫の喉に走った。
ナイフはバターのようにやすやすと農夫の喉を切り裂いた。最初の一振りで気管と
頚動脈を切断された農夫の口から驚くほど大量の血液があふれ、特殊繊維グローブに
包まれたリエの左手を朱に染める。男はなおも弱々しくナイフをはねのけようとした
が、リエが第2撃を外科医のような正確さで肋骨の間に滑り込ませると、ばたりと手
を落とした。農夫は苦痛よりも驚きの光を宿した瞳でリエを見つめていたが、数秒後
に絶命した。
リエは入隊してからCTSS(対テロ特殊部隊)として5年、特殊部隊の兵士とし
て3年間訓練を積み、同時に実戦に参加してきたが、武器を持たない無抵抗の民間人
を殺傷したことは一度もなかった。しかし、今リエは自分が命を奪ったばかりの男の
死体を平然と見下ろして、微塵の後悔も感じていなかった。
農夫が完全に絶命したことを確認すると、リエはそれまで目もくれなかった隣のベ
ッドに視線を移した。ベッドの上に覆い被さっていた兵士が身体を離したところだっ
た。農夫の妻が身動き一つせずに静かに横たわっている。だが、リエはすぐに女がま
だ生きていることを知った。
ベッドの脇に立った兵士は、ナイフではなく液体噴出式の皮下注射器を手にしてい
た。この兵士が受けた命令はリエとは異なり、女の意識を奪うだけだったらしい。リ
エの心の一部が疑問を感じたが、もっと冷静な部分は当然のことのようにそれを受け
とめていた。
隣の部屋から別の兵士が現れた。肩に若い娘をかついでいる。同様に薬物で意識を
奪われているらしく、床に降ろされても小さくうめき声を上げただけで目を開こうと
はしなかった。
リエは自分よりずっと若い少女を冷静に観察した。まだ14にもなっていないだろ
う。寝間着に包まれた身体には、ほとんど第二次性徴が現れていなかった。かすかに
胸がふくらみかけてはいるものの目立つほどではない。
兵士は娘を下ろすとすぐにそれを短い言葉で報告した。それが終わると、次の命令
を待ってじっと立っている。リエともう一人の兵士も同じだった。リエは待つ間、と
りとめのない思考に身をゆだねた。
----あたしは男を殺し、彼らは女を眠らせた。この違いはどこにあるのだろう?今
のところ違いと言えば性別しかないわね。他の家でもそうなのかしら。男は殺され、
女は生かされているのかしら。だとしたら何のために?
その問いに対する答えはすぐにやってきた。リエの耳に鋭い命令が届いたのである。
----フェンス!
パスワードによって甦った記憶は、リエ達が次に何をすべきかを明確に示していた。
リエの心の一部が激しい驚愕と嫌悪感に揺れ動いた。だが、身体の方はすでに行動に
移っていた。
リエは例の正体不明の器具を取り出して、熟練した手つきでスイッチを入れた。丸
くなった先端が小刻みに振動を開始する。同時に握りのパネルに赤いLEDが点灯し
た。
2人の兵士は農夫の妻と娘の両手を背中に回し、捕虜拘束用のプラスティックロー
プで固定していた。数秒で女たちが固定されると、兵士達はその上体を起こし、口に
箝口具を押し込んだ。それから小さなカプセルを取り出して、鼻の真下でカチリとひ
ねる。ツンと鼻を刺激する薬品の匂いが立ちこめ、女達は強引に睡眠状態から覚醒し
くぐもったうめき声をあげた。もっとも箝口具のせいで、ほとんど声になっていない。
女達は一瞬、自分たちの置かれた状況が理解できずに、きょとんとした視線を動か
した。だが、すぐに自分の両手が固く拘束されていることと、声を出せなくされてい
ることに気付いて、恐怖の表情を浮かべた。反射的に暴れようとした女達を、後ろに
いる兵士達が苦もなく押さえつける。
リエは頷いて、農夫の妻を押さえている兵士に合図を送った。兵士は後ろから手を
伸ばして女の寝間着を引き裂いた。女は何をされるのかわからず、弱々しく暴れたが、
兵士はたくみに抵抗を封じつつ、女の両脚を左右に大きく拡げた。下着をつけていな
い陰部がさらけ出され、女は必死に身体をよじり両脚を閉じようとしたが、兵士は完
全に女を羽交い締めにしていた。
リエが振動を続ける器具を手に近寄ると、女は涙を流しながら哀願するような視線
を向けた。リエの心は相変わらず抵抗していたが、ブロックをかけられた中枢神経は
忠実に任務の遂行を続けた。
太い器具が性器に挿入された瞬間、農夫の妻はびくんと身体を硬直させた。強引に
侵入した冷たい男根を排除しようと、豊かな肉に包まれた腰がぶるぶると震える。リ
エは女の抵抗を意にも介さず、ずぶりと根元まで器具を埋めた。LEDがグリーンに
変わったのを確かめると、リエは2本目の器具を取り出してスイッチを入れながら、
少女の方へ向き直った。
すでに少女は下半身を裸にされ、両脚を大きく開かされていた。リエは冷静に少女
の陰部を見つめた。哀れなほど薄い恥毛は最近やっと生え揃ったばかりらしい。固く
閉ざされた桜色の陰唇は、少女にまだ性体験がないことを推測させた。
少女はリエが母親にしたことの一部始終をはっきり目撃していたらしい。同時に自
分が数秒後の運命も、正確に推測したに違いない。大きな双眸には見間違えようのな
い恐怖が浮かび、全身が震えていた。口が自由であったら大声で絶叫していたに違い
ないし、手足が自由であったら死にものぐるいで暴れていたに違いない。だが、どち
らも禁じられた今、少女に許されているのは頭の中で狂乱状態になることだけだった。
リエはかがみこむと、指でで少女の膣を軽く開いた。少女の下半身にぐっと力が入
るのが分かったが、躊躇いなく器具を挿入した。明らかに処女であるらしい娘の抵抗
は激しかったが、リエが力をこめて器具を押し込むと、少女は全身に走った激痛のた
めに息を呑み、それ以上の痛みを惹起するのをおそれるかのように身体の震えを止め
た。LEDがグリーンになるまで押し込んだとき、鮮血が一筋、器具を伝って流れて
きた。
リエが懸念していたのは、少女にどのような魔法の力があるのかわからないことだ
った。この点までは事前の調査も及ばなかったらしく、少女の力は未知数だったのだ。
アンストゥル・セヴァルティの子供は、7歳ぐらいから魔法の勉強を始める。大抵の
学問がそうであるように、学ぶ年齢が低ければ低いほど吸収が早い。14か15であ
れば、ある程度の力をつけているとみなければならない。
死んだ農夫とその妻に関しては調査が行われていた。二人の魔法の力は、農業に関
することばかりで、訓練を積んだ兵士達に抵抗できる類のものではない。少女が学ん
でいる魔法も同じようなものであると推測されていた。
もっとも、少女の魔法がどんなものであるにせよ、それがこの場で発揮される心配
はなさそうだった。苦痛に顔を歪め、びっしょりと汗をかいた少女は、とても精神集
中ができる状態ではなかったからである。
リエは二人の女を交互に観察しながら、様子が変化してきたのに気付いた。それが
最初に顕著になったのは農夫の妻の方だった。苦痛に歪んでいた顔に、次第に別の表
情が浮かびつつある。それはこんな状況としては奇妙なことに快楽を感じている表情
だった。
----微電流による快楽中枢の直接刺激……とリエは考えた。たぶん脳内麻薬物質の
分泌も活性化されているんだわ。でも、何故?この器具によるレイプは、何の意味が
あるの?
女は無意識のうちにくねくねと腰を動かし、悦楽に喘ぐように豊かな胸を上下させ
ている。娘の方は強制的に発生させられた未体験の感覚にとまどっていたが、やがて
腰をもじもじさせ始めた。頬には涙が流れ続けていたが、箝口具の隙間から洩れる吐
息は苦痛から陶酔へと変化している。
変態的な性的嗜好を持つサディストが大喜びするような光景だった。もちろん正気
のリエなら一目で顔を背け、嘔吐感をこらえるに違いない。だがリエは解剖中のカエ
ルに対する程度の感情しか抱いていなかった。それは二人の兵士も同様だった。