#3087/3137 空中分解2
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少年少女読物「あらら三人組、なぞを解く」(2) 浮雲
★内容
5
「1月、2月の゛月゛は意味がないと思うの」
「そうね、数字が問題よ」
道枝の考えに、浩子が同意した。
「数字か」
ユキ子が額を曇らせた。
「でも、どうして10から始まっているのかな」
「そうよ、ユキちゃんいいところに気がついた」
浩子はユキ子の手をとらんばかりであった。
「う−ん。わたしは、これはワナだと思うの。1から12までの数字の並び方に
何かある、と思わせようとしているだけだと思う」
道枝は、そんなことを言いながらメガネを外した。
それを見て、
「ははあ、道枝はだいたい見当がついているね。ねえ、そんなら早く言ってよ」
浩子が甘えるように言った。
ユキ子の顔にも明るさが戻っている。
「当たっているかどうかわからないけど。まず、それぞれを横に足してみるね」
10+11+12=33
1+ 2+ 3= 6
4+ 5+ 6=15
7+ 8+ 9=24
「う−ん、ぴんとこないね」
浩子が残念そうに舌を鳴らした。
「じゃあ、こんどは縦に足すわ」
10+ 1+ 4+ 7=22
11+ 2+ 5+ 8=26
12+ 3+ 6+ 9=30
「あれ、これもなんか変」
ユキ子が声を落とした。それでも、道枝はメガネの奥の小さな眼を光らせて
いた。
「とにかく、この二つのグル−プの数字から答えを見つけていくしかないよう
ね」
浩子が気を取り直すように言った。
「もうひとがんばりすっか」
こうなるとユキ子は不思議に燃える。
6
「どっちのグル−プにしても、まず手がかりは何か共通の数字を見つけ出すこ
とよ。考えられるのは、最小公倍数か最大公約数ね」
それから道枝は、二人に次のようなことを説明してくれたのだった。
まず、最小公倍数だが、どちらのグル−プにしても数字が大きくなりすぎる
ので、これは考えなくてよいだろう。では、最大公約数をみてみよう。横のグ
ル−プは、33,6,15,24だから、それぞれ次のようになる。
33=3×11
6=3× 2
15=3× 5
24=3× 8
縦のグル−プは、22,26,30だから、
22=2×11
26=2×13
30=2×15
こうして、「3」と「2」が候補してあがった。しかし、浩子に依頼してきた
明地探偵社の大林という青年の話しでは、キイワ−ドは「ある一つの数字」とい
うことだから、「3」か「2」のどちらか、ということになる。
道枝は、それは「3」だ、という。なぜなら、最大公約数3で約した後の数字
をよく見ると、11,2,5,8となっている。この数字をどこかで見なかった
か。「ほらね」と言って道枝が指さしたのを見て、浩子もユキ子も「あっ」と声
を上げた。
10 11 12
1 2 3
4 5 6
7 8 9
まん中に縦に並んでいる数字と、まったく一致しているではないか。しかも、
これを小さい順に並べ変えると、2,5,8,11となるが、これは2に「3」
を足して5、5に「3」を足して8、8に「3」を足して11、という具合いに
なっていることが分かる。ここでも「3」が現れる。
*
「やった!」
ユキ子が、ガッツポーズをしながらとびあがった。
「さあーすが、道枝だわ」
浩子は、なんどもあごをひいた。
「でさ、ひひひ」
ユキ子が、よだれでもたらしそうに舌なめずりしながいった。
「お礼には、なにをもらおうか。やっぱり食べ物がぶなんかなあ」
「これだぁ」
道枝と浩子が、同時に顔を見合わせ、首をすくめた。
−おわり−
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