#3085/3137 空中分解2
★タイトル (AKM ) 93/ 4/ 6 23:59 ( 75)
●楽戦楽勝ごりら男● その10 双子兄弟抜きの巻 ワクロー
★内容
◇楽戦楽勝ごりら男◇11 双子兄弟抜き
相手は2ラウンド目と同じように『バルログ』を激しく飛び跳ね
させて幻惑する作戦に出ました。
知人Rは、今度は先制攻撃で。ときめていたのでしょう。激しく
動きます。これほどの動きは今までみたことがありません。空中技
に優れているものの、動きの点ではブランカに劣るバルログ。たて
つづけにパンチを浴びて倒れます。これまでとパターンが変わった
早い攻撃にめんくらったのでしょう。
『バルログ』は気絶。そこをさらにたたみかける知人R。相手の
方にコントローラーを傾け、強ボタンを連打、連打、連打。
ものにとりつかれたように一心不乱に連打の嵐です。これはもの
すごい光景でした。知人Rの指が、道路掘削機にでも変化したか。
すざましい勢いです。1分間に800回近くの大痙攣的なボタンタ
ッチでもって連打を続けます。このままほうっておくと、指の皮が
破れて指先から骨が飛び出すまで連打を続けるのではないかと思い
たくなるくらいでした。
知人Rの必死の形相を見ていると、彼はごりら男そのものになり
きってしまっているのではないかと、どきっとしました。
これまでの対戦では、苦戦していてもこんな風には感じませんで
した。しかし、いまは違います。双子の兄弟の二人がかりの攻撃に
怒りが爆発したとき、Rの精神は全霊を込めてゲーム画面のなかの
『ごりら男』に乗り移っていたとしか言いようがありません。
それほどの迫力を感じました。凄みを感じたのです。
懸命に逃れようと双子兄もボタンを狂ったように連打しているの
ですが、及ばないのです。
ああ〜 っと『バルログ』は絶命の悲鳴をあげました。完勝です。
Rの必死の攻撃の前に兄弟まとめて破れ去った二人は、そそくさ
とゲーム機の前を立ち去りました。とてもかなわんとみたからでし
ょう。続けて挑戦する意欲も失せたようです。
ゲーム機の前を離れた兄弟は、小声で兄弟げんかを始めています。
『最初の動きが甘かったんじゃないのか』『おまえ1ラウンドもと
れなかったくせにえらそうなこと言うな』
Rが見せた『本気』の迫力に恐れをなしたのでしょう。あるいは
これはとてもかなわないと、逃げに入ったのでしょうか。これまで
とちがってすぐには挑戦を挑んで来るものがいません。
喧噪に包まれているゲームセンターですが、Rの周囲の空気は水
を打ったように静まり返っているようです。
Rはといえば、一気に『ごりら男』の霊がひょういしたかとでも
いいたげに血に飢えたブランカのように、相手を待っています。さ
あ。もうこのゲームセンターには、誰も相手がいないのか。Rはち
らちらと背後を見渡します。その鋭い形相に思わず周囲のゲーマー
はあとずさりします。
背後でひそひそ声がしました。5人抜き。無敵の快進撃を続ける
Rに、街のゲームセンター常連の威信をかけての連勝阻止作戦が、
このときひそかにまとまり始めていたのです。
すでに有力メンバーの大半を斬られ『互角に戦えない』と判断し
た常連ゲーマーたちは、無敵のRを集団の力で打ちのめしてやろう
と手早く策略を練ったようです。
5人抜きをするまで、すでにボタン連打を重ねているR。当然で
すが指がつかれているはずです。相手は入れ違いたちかわりだが、
それでもすぐに代わりが出ないということは、有力なゲーマーは
このゲーセンに、もう何人もいないとみるしかない。
彼らが作戦を練ったとすれば、切札的な彼らの最強のゲーマーを
どの時点でRにぶつけるか。その一点だったはずです。時間をつな
いで知人Rの体力を消耗させ、その間に最強ゲーマーを準備する。
そういう作戦に出たのかも知れませんでした。
(以下次回)