AWC 場所固定>月面  G船上のアリア 上     木村ガラン’


        
#2320/3137 空中分解2
★タイトル (AJC     )  92/10/28  22:46  ( 69)
場所固定>月面  G船上のアリア 上     木村ガラン’
★内容

を創作する ←ここまで題です。        木村ガラン


 G戦場でもいいかな。

 アメリカ下院議員が演説している。

 −−であるからして、莫大な宇宙開発予算を認めるわけには、断じていかない
のである。むしろ、その予算は地上に振り当てるべきではないだろうか。わが国
には解決しなくてはならない内政問題が山済みになっているのである。福祉問題
一つにしても非常に深刻である。我々は宇宙よりもこの地上に目を向けるべきで
はないのか。ホームレスの問題すら解決できていないのになにが宇宙開発か。月
面にコロニーを造る前に、我々がやるべきことは沢山あるのだ。仮にアメリカ国
内の諸問題を解決できたとしても、地球的見地に立てば、やるべきことは無数に
ある。アフリカでは今日、依然として何万もの子供たちが餓えで死んでいるので
ある。彼らを見殺しにしてなにが希望あふれる宇宙開発であるか。そして、両者
は平行して進められるほど簡単な事ではないのである。

 まあまあ、そんなに青筋たてるなよ。体に悪いぜ。あんたにも家族がいるんだ
ろ。家庭は大切にしろよ。そんな遠くの国の不幸なんてどうでもいいじゃん。ア
フリカで子供たちがどんなにむごたらしく死んでいっても、俺たちは痛くも痒く
もないだろ。

 それから何十年か後のある夜。ここ月面有明の海では天文同好会「銀河ステー
ション」による天体観測会が開かれている。望遠鏡で木星を覗いていた少年が振
り向いてガランに言った。

―― シャトルがやってくるよ。

 月面は天文ファンにはこたえられない場所だ。大気のゆらぎがないから、地球
よりも格段にクリアーな状態で星が鑑賞できるんだ。三百光年離れたプレアデス
星雲もすぐ隣にあるようだよ。
 シャトルは木星を背景にこちらに直進してくる。こんなに近くに見えるけど、
ここまで来るのにあと半月はかかるんだよなあ。ああ、深遠なる大宇宙。


みんなどうしてる
んだい。元気で暮
らしてるかい。俺
はここにいるよ。
ここで小説を書い
てみたりしてるよ。
ここはいいよ。こ
こには好きな人が
いるんだ。

 Gシャトルは惑星間を結ぶ定期シャトルの総称だ。とても巨大な宇宙船である。
月の鉱物資源を使って宇宙空間で組み立てられたシャトルは、地球では考えられ
ない形状であることが可能になった。どのGシャトルも、重力に縛られないとは
こんなにすごいことか、と唸るようなアバンギャルドな形をしている。その代わ
り、大気圏に入ることはできない。ちなみに木星と月を結ぶこの木星Gシャトル
は日本がスポンサーとなって建造された、都庁を七つくっつけたこんぺいとうの
ような形をしている。まあ、日本政府の仕事とはこんなものだ。
 イタリアが造った冥王星Gシャトルは、さすが芸術の国のシャトルだ。サグラ
ダファミリアの塔が三十六本ほどくっついた形をしている。まあ、人間の想像力
なんてこんなものだな。新しい芸術は次の世代に期待しよう。宇宙で生まれ育っ
た子供たちに夢を託そう。

 −−きみも覗いてみろよ。

 少年は隣の幼い会員に自分の望遠鏡を譲った。少年は覗き口に目を押しつけ、
歓声をあげた。

 −−すごいや。窓の中で人が動いてるよ。

 少年は手を延ばし空間をつかむような動作をした。ガランたちはその動作がお
かしくて笑った。そこにはなにもないのにね。少年はそんなことにおかまいなし
で、ファインダーを覗き続けている。




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