#2285/3137 空中分解2
★タイトル (TEM ) 92/10/18 17:33 ( 67)
ラストキッス・2 うちだ
★内容
〜 Blue Blue Rose〜
私が明くんと付き合っていた時期は、実質5カ月間で終了している。ずっと
連絡が途絶えてから、後になって明くんの友達から聞いたんだった。
「あいつー?東京行ったよ」・・・その頃の明くんの友達ってゆーのが、シン
ナーで歯がちょっとばかし欠けてるよーな子だった。・・・我ながら意外にく
だらない事まで覚えてる。
私が公園に着くと、もう明くんがいた。20歳の明くんが。今日、彼が待ち合
わせ場所に指定したのは、昔よく一緒に来てた公園だった。自然とまた、話は
付き合っていた頃の事になった。
「加奈子さー、伊豆にドライブに行った時のこと、覚えてる?」
「ああ。サイトーと、たしか・・・・久保くんとかと行ったんだよね。」
そう。夏に、久保くんの車で。明くんは19歳で車の免許を持っていると言っ
たので、交替で運転してたのだけど、ペンションについた後、彼はまだ免許を
持っていない18歳というのが判明して、私たち、(特に久保くん)は真っ青
になったのだった。
「そうそう。俺、めちゃくちゃだったけどね。」
「でも、すっごく楽しかった。」
「ペンションも、良かったしね。」
「そうそう。」
沈黙。
変な言い方だけど、明くんは今度こそ口先だけじゃなく、本当に大人になった
なぁと思う。明くんは東京での事は、あんまり話さなかった。どうも、けっこ
う苦労したみたいなんだけど。以前の彼だったら、ちょっとイヤなことがある
と誰にでも愚痴ってたからね。
「サイトーさんは、まだあの彼氏と付き合ってるの?」
「まーさか。2年半も経ってるんだよ。今はフリーだって」
「そっかー」明くんは吸っていた煙草を足で踏んで消した。おっ、来るかー?
「俺たちやり直そうよ。」
やっぱりね。「・・・またあの頃みたいに?」
「いや・・そうじゃなくって、俺、心入れかえたんだ。今度は加奈子を泣かせ
るようなマネしない。今なら、加奈子の気持ちに応えられるよ。」
〜 瞳の奥でまばたくな〜
「俺、どーしよーもない奴だったけど、加奈子は特別なんだ。・・・あんなろ
くでなしだった俺を、呆れずにいつも見ていてくれた。」
「それは・・・」
違う、違う、違う。間違えてる。私は思った。明くん、間違えてる。思い出を
全部、恋と間違えてる。ちょうど昨日電話を受けた直後のわたしみたいに。だっ
てさ、でなけりゃ何で、帰ってすぐ連絡をくれなかったの?ねぇ、何で???
?????????????
何てね。わざわざ会うっていったら、こーいう展開になるって、どこかで知っ
ている私がいる。・・・それは、以前の私じゃない。間違えてるよ、明くんは。
2年半の間、私にだって何にもなかったわけじゃない。それなりに場数踏んで
いて、昔みたいな恋愛は絶対出来ない。だてに女子大生やってたわけじゃない。
間違えてる。黙ったままの私を明くんが覗きこむ。
「何?加奈子。言ってよ。」
「・・でももう終わっちゃったんだよ。」
〜目を閉じておいでよ〜
終わっちゃったんだ。今、この公園で口をきいているのは、高校生の加奈子と
ろくでなしの明くんの2体のゾンビだ。ここは、高校生の加奈子とろくでなし
の明くんの二つの死体が横たわる墓地。たぶん、私と明くんの気持ちは1回ず
つ終わっている。それももう2年半も前に。
「だから、さよならしよう。高校生の加奈子と、ぐーたらだった明くんのお別
れ。」私が言うと、明くんはちょっとうなずいた。
「そういえば、俺って加奈子に何も言わないで上京しちゃったんだっけー。」
「そーだよ。けじめってもんが大切だよ。」とえばって言うのは私。明くんも
そりゃそうだとコクコクとうなずきつつ、私の腕をぐいと引いた。
「えー?ちょっと、やだー」
私たちはキスをした。まるで昔みたいに。昔と違う私たちは・・・これ、お別
れのキスだって言うんだろうな。でも実際に触れている部分は、高校生の加奈
子やぐうたらの明くんのものじゃなく、21歳になる私と20歳の明くんのも
のだった。ねぇ、こんなのラストにならないよ。
THE END