#1934/3137 空中分解2
★タイトル (LYJ ) 92/ 7/ 7 19:38 ( 33)
南総里見七犬伝 やまもも
★内容
猟師が洞窟のほの暗いあかりの中に見たものは、白き女体とそれに覆い被さ
る獣の大きな黒い影であった。鳴呼、なんという浅ましくも淫らな獣姦絵巻で
あろうか。猟師は火縄銃の狙いを定め、ぐっと引き金を引いた。轟音が洞窟い
っぱいに響き渡った。妖犬八房の巨体が跳ね上がり、そしてどさっと倒れた。
伏姫もまたその白き裸身を鮮血で真っ赤に染めた。そのとき、不思議なことが
起こった。伏姫の首にかけられた数珠の玉が閃光を放ってぱっと四方に飛び散
り、そのまま大空の彼方に消え去っていったのである。
伏姫の首から離れて大空に飛び散った数珠玉、それは仁、義、礼、智、忠、
信、孝、悌の八つの玉であった。これら八つの数珠玉を持つ剣士が力を合わせ
たとき、初めて里見家を再興することが可能となる。運命の不思議な糸は彼ら
のうち、犬塚信乃、犬飼現八ら六人までを一つに結び付けた。だが、どうした
ことであろうか、残りの人物がどうしても捜し出せない。困り果てた犬塚信乃
は夜空の三日月に祈ることにした。彼は、氷のように冷たく輝く三日月に一心
不乱に祈り続けた。そのとき、流れ星が夜空に一つ大きく輝いて東の山の端に
すーっと消えた。流れ星の落ちたあの方向にこそ我らが求める剣士がいるがい
るに違いない、そう犬塚信乃は確信した。
犬塚信乃が辿り着いたのは野中の一軒家。板戸を叩いたが、誰も出てはこな
かった。思い余った犬塚信乃は、板戸をこじあけ、真っ暗な家のなかに足を一
歩踏み入れた。殺気!刃風三寸にサッと身を沈ませてかわし、持った刀で相手
の腰のあたりを鋭く薙ぎ払った。二つの玉が閃光を放って左右に飛び散った。
犬塚信乃が切った相手は犬野玉之助という人物であった。彼は、信乃を扇谷
定政の手の者と間違えて切りつけて来たのであった。玉之助は傷が癒えた後、
犬野玉千代と名を改め、里見の剣士たちの仲間に加わった。こうして、八つの
数珠玉を持つ七剣士が力を合わせて活躍し、里見家は再興されたのであった。
めでたし、めでたし。えっ、八つの数珠玉を持つ剣士が集まったら八剣士にな
るんじゃないかって。いや、間違いなく八つの数珠玉を持つ剣士が集まったら
七剣士になったのです、はい。