#1933/3137 空中分解2
★タイトル (TEM ) 92/ 7/ 6 22: 7 ( 44)
BABY!逃げるんだ うちだ
★内容
門限10時。11時以降の電話と、男の子からの電話は取り次いでくれなかっ
た。届く手紙はチェックされた。博子は自由になりたかった。ずっと逃げたかっ
た。きっかけが欲しかった。
良幸は博子の同級生だった。
「博子みたいな家も今時珍しいけどさ。それだけ厳しい分、守られてる部分も
多いんだよね。何にも規制を受けない人は自分で管理をしなくちゃならないし、
何からも自由でいることなんて出来ない相談だよ。」
そんなのは博子だって分かっていた。思いっきり干渉されるかわりに、面倒は
見てもらってることとか。両親に愛されている事も痛いほど分かっていて、そ
れでも手にしたいと思ったことなんだもの。自由!
FREEは「自由な」って意味だけど、2つめの意味には「〜を免れて」って
意味があるって。高校できいたのかな。
良幸は他の人みたいに同情したり、一緒に嘆いたりはしてくれなかったけど、
もっと具体的なきっかけをくれた。
「分かってて、それでも逃れたいなら・・・俺が連れて行ってあげる。」
昨日の真夜中2時、博子は置き手紙をしてそっと家を抜け出た。国道で待ち合
わせて、良幸のトラックに乗った。運転席の良幸は言った。
「俺、しがないトラックの運転手だけど、博子のこと大事にする。・・本当は
俺、高校の頃、おまえのこと好きだった。今度は離さない。」
朝5時。今頃家では父と母が青くなったり赤くなったりしている頃だろう。ま
だ始発の電車も入って来ない、無人駅の隣にトラックを止めて休憩する。
「私、コーヒー買って来る。」
博子はトラックを降りて、改札のそばにある自販機の前に立つ。まいっちゃっ
たなあ。振り向くと良幸と目が合う。博子はにっこりする。良幸がさっき言っ
たことは嘘じゃないと思う。胸がどきどきする。でも・・「自由でいることな
んて出来ない相談」なんて口にする男の子との生活なんて、枷の種類が変化し
ただけになっちゃう。胸がどきどきする。100円入れた後、博子はしゃがん
で靴紐を直す。ごとん、と熱いコーヒーの缶が落ちる音。あと1分。電車がホ
ームに入って来る音。
缶を手にして、トラックに戻る。のはやめて。
博子は無人の改札に走り込んだ。トランクの着替えはもういいや。バックの中
には通帳とカードもあるしさ。つらい仕事をすることになるかもしれないし、
連れ戻されるかもしれないけど。それでも今この瞬間は、この瞬間だけは、そ
れこそ何からも自由(FREE)だ。彼女が走り込むと同時に電車のドアが閉
じた。