AWC 「メクソ、ハナクソを笑う」  たにぐちさだお


        
#1908/3137 空中分解2
★タイトル (AAA     )  92/ 6/28  16: 2  ( 71)
「メクソ、ハナクソを笑う」  たにぐちさだお
★内容

 「おぅ、メクソやないけぇ」
「あ、ハナクソ君・・・ぎゃははははははははははははははははははははは」
ハナクソはメクソにつかみかかり、力まかせにパチキをかました。
「な、なにするんだよぉ、痛いじゃないかぁ」
「われ、なに笑ろてけつかんねん、こら。なめとったらイテまうぞ」
「だって、僕が君のことを笑わないと物語が始まらないんだもの」
その通り。タイトルをもう一度見てみよう。この程度の理由で笑われてしまったハナク
ソの立場はどうなる?ハナクソは作者に激しい憤りを感じた。
「でも、ハナクソ君っておかしいよ。ハナクソのくせに威張ってさ、僕をバカにしたと
ころで君は所詮ただのハナクソじゃないか。笑っちゃうよ、うげっ!!」
今度はハナクソの強烈な蹴りが飛んだ。どうやらハナクソが笑われた理由はタイトル以
前にここにあったらしい。
「ハナクソのくせにやとぉ、こらぁ。ワシはおどれみたいになぁ、東京弁でもの言うや
つ見たらムカツクんじゃ。気色悪い言葉しゃべりやがって、おどれはオカマか!」
「な、なんだよ、君のその汚い大阪弁は。まるでヤクザじゃないか。僕はねぇ、そうや
って言葉で他人を威嚇するような野蛮なことが大嫌いなんだよ」
今度はメクソも負けてはいなかった。ちなみに大阪の名誉のために言っておくと、ここ
でハナクソが話している言葉は大阪弁の中の「河内弁」であって、大阪弁の全てではな
い。
 ハナクソは非常に血の気が多く気が短いやつで、頭で考える前に先に手が出てしまう
やつである。生まれてこのかた「口喧嘩」をしたことがない。いや、口喧嘩が出来ない
のだ。相手が最初の売り言葉を言おうとする前に三発は殴ってしまう。彼は自分でこれ
を「喧嘩の先物買い」と呼んでいる。しかしハナクソは考えた。いつまでもこんなこと
でいいのだろうか?暴力で向かってくるやつには暴力で相手をしてやればいいが、理屈
をこねるやつに暴力で立ち向かったら、いくら相手が陰険で卑劣なやつでも、手を出し
たこっちが悪者になってしまう。最近やっとハナクソにも社会の仕組がわかってきた。
ハナクソも少しは成長したようだ。
 「どうしたんだい?君は暴力でしか自分を表現出来ないんだろ?さぁ、殴ったらいい
じゃないか」
メクソはハナクソの前にドンと腰を降ろしてハナクソをじっと見据えた。「ほぉ、メク
ソもやる時はやるじゃないか」と感心された読者の方々、それはメクソの思う坪だ。メ
クソのまわりを見渡してみよう。いつのまにかギャラリーが集まっている。メクソはハ
ナクソに対して「正義を貫く自分」を訴えたかったのではない。集まったギャラリーに
「ハナクソの狂暴さ」と「乱暴者にいたぶられている哀れな自分」を最大限に表現した
かったのだ。メクソはハナクソと違って世渡り上手なのだ。
 「なのなぁ、ワシ思うんやけどなぁ、メクソとハナクソには決定的な違いがあるで。
ハナクソはただのクソやない、ちゃんと役に立つんや」
メクソは驚いた。意外な展開になった。暴力至上主義のハナクソが論述で戦おうとして
いるのだ。しかも「ハナクソが役に立つ」などと・・・
「一体、それはどういうことなんだい?」
メクソはなぜか緊張していた。そしてギャラリー達もハナクソの次の言葉を待っていた。「ハナクソちゅうのはなぁ、小学生のオヤツになるんや」
「・・・」
ハナクソが自信を持って答えたその言葉に誰も返す言葉がなかった。たたア然とするし
かなかった。ハナクソよ、確かに小学校の時にクラスに一人は必ずハナクソを食べるや
つはいたが、社会がそれを慣習として認めた事実は無いぞ・・・
「はっはっはっはつ、バカじゃねえの?こいつら」
ギャラリーの中にメクソとハナクソを笑うやつがいた。
「なんや、おどれは!」
「オレはアイドル歌手のノグソさ。言っておくがアイドル歌手のノグソだぞ、おまえた
ちのように庶民のメクソやハナクソとは違うんだよ」
「なんやとこらぁ、アイドル歌手がなんぼのもんじゃい、アイドル歌手やったらえらい
すでにハナクソはいつものハナクソに戻っている。血の気の多い粗暴なハナクソへ。
アイドル歌手のノグソはボコボコにしばかれている。
「まぁまぁ、待ちたまえ」
「なんやオッサン!!邪魔すんなボケぇ!!」
「君、暴力はいかんよ、暴力は」
ハナクソは後から「はがいじめ」にされてやっと止まった。
「オッサン何者やて聞いとんねん」
「私は哲学者の脇毛」
「ほぉ、元は哲学者やゆうこと自慢したいんかいな?」
「いや、そうじゃない、聞いてくれ、みんなも聞いてくれ!」
哲学者の脇毛は大きな声で辺りにいる全ての者に訴えかけた。
「誰が一番汚いかじゃない。実はみんな汚いんだ、私だって汚い」
哲学者の脇毛は一息ついて辺りを見回した。そこにいた者全てが次の言葉を待っていた。あの短気なハナクソでさえも。

「なぜ私たちはみんな汚いのか。それは、私たちはみんな人間の体から生まれたからだ」
                                  (おわり)




前のメッセージ 次のメッセージ 
「空中分解2」一覧 たにぐちの作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE