AWC 江戸市中における裁判機構と警察機構の分離に関する問題/弾正


        
#1907/3137 空中分解2
★タイトル (TAA     )  92/ 6/28  13:27  (108)
江戸市中における裁判機構と警察機構の分離に関する問題/弾正
★内容
 吉原のはずれにある遊廓・戸留古(とるこ)は、風呂遊技と姿絵による指名が江戸
の町人に受け、今では大盛況を極めている。ところが、ここで働いていた売れっ子・
戸留古娘のメコが行方知れずになったのだ。
 数日後、メコは近くの村の肥溜めの中で惨殺死体となって発見された。
 すぐに下手人として浮かんだのが、メコが最後に相手をした客・極楽屋助平であっ
た。極楽屋は、メコが尺八を拒否したことにいたく腹をたて、怒鳴りつけたという。
聞くところによれば、メコは極楽屋の「暴れん坊将軍」様が汚いと、尺八を嫌がった
という。

    *    *    *    *

 *** 悪徳屋 ***

「親分、例のメコの亡骸が発見されやしたぜ。どうしやす?」
「ほっておきなさい。お奉行所の役人は、極楽屋さんを疑っているらしい。だいたい、
お*コが私に本番奉仕をしなかった悪いのだよ。殺しても憎み足りないアマだよ。あ
いつは」
「へい。まったくそのとおりで」
「まあ、極楽屋さんがしょっぴかれれば、私は安泰だ。はっはっは!」

    *    *    *    *

 *** 極楽屋 ***

 あらぬ疑いを受けていることを心配した極楽屋助平は、八丁堀同心の袖下好之助を
自宅に招き、相談を持ちかけていた。
「袖下様、例のお*コ殺しのかどで私が疑われております。何とかなりませんでしょ
うか?」
「うむ、難しい問題じゃな。お奉行もそなたを疑っておられるようじゃ」
「そ、そんな。袖下様。なんとかしてくださいまし。私は本当に何も知らないのでご
ざいます」
「わかっておるわ。されど、そなたがお*コを恨んでおったことは確かじゃ。うーむ、
難し・・・むっ! だれじゃ!」
 袖下好之助は、太刀をとって障子を開けた。
 そこには、遊び人ふうの男が一人立っていた。
「おっと、悪党がよって何の相談だい?」
「何を申しておる。貴様、何者だ!」
「へっへっへ。おらぁ、遊び人のぴーさんてぇ、ケチな野郎でさぁ。だがねぇ、てめ
えらみてぇな悪党は許しちゃおかねぇのさ」
「下郎!」
 袖下好之助は、遊び人に斬りかかったがあっさり交わされると、後ろに投げ飛ばさ
れた。
 極楽屋助平はあわてて、
「おーい、誰か。誰か来てくれ! 強盗だぁ! 強盗だよ!」
と叫んだ。
 極楽屋もまっとうな商売ばかりをしているわけではない。すぐに何人かの浪人が出
てきて、遊び人を取り囲んだ。それを見ると遊び人は、
「やいやい、てめぇら! てめぇらにはもったいねぇが、地獄のみやげに見せてやらぁ
。このぴーさんの桜吹雪、散らせるもんなら散らしてみろいっ!」
 そういうや否や、遊び人は右肩を露出した。そこには見事な桜吹雪!!
 一斉に斬りかかる浪人たち。しかし遊び人は、ことのほか強かった。ばったばった
となぎ倒されてゆく用心棒たち。
 やがて、そうこうしているうちに、遠くのほうからぴー!ぴー!と笛が響いてきた。
それを聞くと遊び人は、ニヤリと笑みを浮かべて極楽屋助平に当て身を食らわせると、
どこへなりか走り去ったのである。
 駆けつけた追手により、極楽屋助平たちはしょっぴかれていった。

    *    *    *    *

 *** お白州 ***

「遠山左衛門丞様ぁ、ご出題ぃぃぃぃ!」
 ちゃーんちゃんちゃん、ちゃちゃちゃちゃーん。
「これより、スケコマシのお*コ殺害に関する吟味を執り行う。一同の者、面を上げ
い。
 さて、極楽屋助平。そのほう遊廓・戸留古に働くお*コが、尺八を拒んだことに腹
をたて、これを呼び出して殺害、肥溜に捨てたこと、相違ないか?」

「へ、へへぇ。恐れながらお奉行様に申し上げます。私にはいっこうに覚えのないこ
とでございます。もう一度お調べくださいまし」
「なに。それではあくまでも知らぬ、と申すのだな」
「はい。その通りでございます」
「では、八丁堀同心・袖下好之助、そなたは極楽屋助平より金子を受け、事件のもみ
消しをはかったであろう」
「まったく身に覚えのないことにございます。それがし、やましきことはいっさいし
ておりませぬ」
「ほう! では両名ともに何も知らぬと申すか。しかし、遊び人のぴーさんなるもの
が、そなたのお*コを惨殺する現場と見たと言うが。・・・」
 極楽屋は昨日、突如殴り込んできた遊び人が、このようなデマカセをお奉行にふれ
回っていることに少々腹がたった。
「お奉行様。そのような遊び人の言うことを信用なさるのでございますか」
 袖下好之助も同じ心境であった。
「どうか、かような遊び人のことは捨ておいて、もう一度お調べください」
 袖下好之助が終わらぬうちに、突如お奉行の声が荒々しくなった。
「ナニ? お*コ殺しなんぞ、知らぬ、存ぜぬ? 挙げ句は、遊び人の言うことなど、
信用できねぇだぁ? ヤイヤイ、てめぇら! その目ん玉かっぽじいて、よく見やが
れぃ!」
 言うや否やお奉行は、階段に足をかけると、右肩を露出した。
「ま、まさか。あのときの遊び人が、お奉行!?」
 それを聞くとお奉行は、勝ち誇った口調で、
「そうとも。遊び人のぴーさんよぉ。てめぇらの悪事、この遠山桜がしかと見届けた
ぜ!」
「しりませぬ。本当に身に覚えのないことでございます。なにとぞ、なにとぞもう一
度。・・・」
「ヤカマシイ! いつまでもシラをきり通すその根性が気にいらねぇや! 極楽屋助
平には市中引き回しの上、獄門。袖下好之助は、お役御免を申し渡す。ひったてい!」
「お許しをお奉行様。なにとぞお調べ直しを!」
 むなしい声を響かせて、極楽屋と袖下好之助はひったてられていった。
 やがて衿を正した遠山左衛門丞は、
「これにて一件落着!」

 考察:このように捜査機関と裁判機関が同一であるというのは、はなはだ危険な
    ものである。笑って、許して!

  <了>

                         弾正(だんじょう)





前のメッセージ 次のメッセージ 
「空中分解2」一覧 弾正の作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE