#1769/3137 空中分解2
★タイトル (ZQG ) 92/ 6/ 6 4:14 (182)
マレーシアは暑かった。(3) 【惑星人奈宇】
★内容
−−−−− ペナンへ −−−−−
クアラルンプールからバタワースに向かう汽車の中。
宇見は車掌の「乗車券を拝見します。」の声で目を覚ました。目を少し大きく開け
たりしながら切符を車掌に差し出すと「これにはコーヒー・サービス券も付いてい
ますよ。」と言われ、この切符にコーヒー三杯分の料金が含まれていることを思い
だしたが、今更コーヒー飲みに出かける気にも成れず、再び毛布を被って眠ること
にした。車掌は戸を締めて次の部屋へ移って行った。乗車券は一等寝台席だったか
らシャワー室も付属しているのかと思って居たけれど、一室に二名定員の簡素なも
のだった。でも冷房が利いていてとても快適であった。クアラルンプールからバタ
ワースまで9時間程もかかって進む寝台列車であったが、今日に限って出発が一時
間程遅れたのだ。プラットホームに人が溢れるほどの乗客が駅で列車の来るのを待
って居たのだからなあ。宇見は暑さと疲れでへとへとに成っていた。
所々で汽車の進行が止まってしまったりして のろのろと進んで行った。
宇見の心は「更にバタワースへの到着が遅れたらどうしよう 辛いなあ 宿屋探しに
影響しそうだなあ 」と言う気持だった。汽車の窓から見える早朝の景色は何処まで
も続く椰子の木の林と時たまに見られる簡素な集落だった。
バタワースに近付くにしたがってあちこちで住宅の建設が行われていた。
マレーシアでは急ピッチで工業化が進んでいるのである。そこに止まらずに通りすぎ
るプラットホームには沢山の人達が列車を待っていた。簡素な服装と気取らないさば
さばした人々の気性は昔の日本即ち今から30年程前の生活態度に似ているのではな
いかと感じた。見ていて気持ちがいいのである。
汽車は遠慮無く遅れバタワーウ到着は8時半頃であった。
もう暑い ! バタワースは単なるペナンへの橋渡し箇所でしか無く、駅前とはいっ
てもだだっぴろくて目星き建物なんて何にもありません。 あああっ あった 遠く
にそびえ立っている建物 あれは・・・えっと ひょっとしたらホテル ホテルかも
知れない。でも あそこまで歩いて行く ? どうやって歩く ? ここはマレーシ
ア! とにかく暑いのです ! とても歩く気には成れません。
俺の頭の中の理性は「ここに泊まるべきだ。」と主張し、感情は「無理しなくてい
い! ペナンにもきっと適当なホテルが有る。」と主張するのでした。暫くうろうろ
して居たが、意を決して宇見は長い長いフェリー乗り場への通路を歩き始めた。
今日夜からハリ・ラヤ・プアサ、つまり断食明けの祭りが行われるのである。きっ
と何処の観光地も混雑するだろうなあ! 幾分期待と不安の入り混じった気持ちでジ
ョージ・タウンに着いた。
宇見のように始めて来たお上りさんはすぐにトライショーのおじさんの目に留まり
「おほっ いい客が来た よしっ獲得だ。」と映ります。観光案内書の地図を見てい
ると、すかさずトライショーのお兄さんに声をかけられた。
「やあああ ホテル オールオキュパイド イツァ ナショナルホリデ 」
まさか そなこと実際に探してみないと解らないでは有りませんか ?
若者の呼びかけを無視して、まず最初にどのホテルを尋ねてみようかと考えながら旅
行書のホテル欄を見ていると、「どのホテル? これっ これは満員 これは大丈夫
予算はどれくらい?」と言うでは有りませんか ! 大きな荷物を引きずって街中を
歩くのは辛いだろうなあ ほんとに暑すぎる! 宇見はトライショーを利用しようと
考えるのであった。
旅館街までは近いから、それ程苦痛になるとは思えないけど、でもこの街のことを
良く知っているトライショーの兄さんと探す方が楽で便利で疲れない。
値段の取り決めの後三輪自転車トライショーに乗ることにした。全く楽ちんだ!
汗ばむほどの暑さも動き出すと風が吹抜けて気持ちいい。 チンチーン !爽やかに
風を切ってトライショーは軽々と進んで行った。 時々 チリンチンと鳴らしなが
ら「あれは中国の寺院 これがキリスト教会 ここはホテル・・・」と説明した。
案内書に載せられているような奇麗で清潔そうな旅館は何処も満員であった。
くじけずに4、5軒を尋ねた! でも何処のホテルも満員であった。 今日は駄目か
なあ 安ホテル位にしか泊まれるところが無いかなあと半ば諦めた心境でコムタ近く
の規模は大きいが、少し古いかなあと感じさせられるホテルを尋ねてみた。
O.K. だった。思わず安心した心境に成り宿泊料金を尋ねると、何100ドル
だった。ちと高すぎると交渉したが受け入れられそうにない。答えは一つ 「ナショ
ナルホリデ オールオキュパイド 明日は何処も休み!」。
「明日はバス 商店 銀行 全部休み 飛行機の予約できるよ 二泊の予定は?」
などと言われて、さすがに「まさか そなこと有る筈がない ここは観光の街だから
全部休みなんて有り得ない。」と想定し一泊だけすることにした。この時トライショ
ーの兄さんに、料金を請求された。 最初の契約金の3倍だ ! おおおおっ びっ
くり ちと高すぎる! 何とか 10ドルで折り合いがついた。 歩いて尋ね回る
苦労を考えたら10ドルでも仕方がない。宇見は快く「ありがとう」と言ってお兄さ
んに10ドル支払った。
部屋に案内された。部屋はまあまあの奇麗さだった。
案内ボーイに「O.K.?」と聞かれO.K.と答え1ドルのチップを渡した。
暫くしてボーイはコップと水の入った魔法瓶を持ってきた。安心した心持ちでコップ
に水を注ぎ飲んだ。 美味しい 全く美味しい水であった。 街の商店で売られてい
る水よりずっと美味しい水であった。
この時 何処からかエロ映画で男女交合する時女性が発するあのなまめかしい声が
聞こえて来るでは有りませんか !。宇見は思わず、旅館を間違えたかなと思った
が、でも何だか知らぬが、にやにやと笑い出したくなってしまった。俺も裸になって!
あっそだ でもここには女が居ない そだったのだ あっはははは 。
宇見はどうせエロ映画でも見ているのだろうと思い浴室を見に入った。さっと見る
分には解らないが、良く見ると塵の汚れで一杯だ。こりゃあ汚い! この様子だと一
ヶ月は空き室だったろうなあと想像できた。とてもこのまま使用できる状態ではない
。 今更不平の文句を言う気にも成れず、宇見は浴槽と便器の掃除から始めた。
それにしても酷いものだ! このホテルはよっぽど客入りが悪いのだ。
夜には少しでも衣類を洗濯して明日までに乾かしたいからと思って紐をかける場所を
探した。タイルに吸盤を付けてでは剥がれて仕舞いそうで、簡単には紐を張れそうに
無かった。シャワーの固定部を利用すれば何とか成りそうだと言うことに落ち着いた
。
ではそろそろ観光に出かけることにしようと思い、鞄から豆を取りだしぽりぽり
食べながら出かけることにした。今日から明日にかけて ハリ・ラヤ・プアサ ナシ
ョナルホリデなのだからなあ。 きっと何処に行っても混雑しているだろうなあ 。
明日のことを当てに出来ないからなあ! のんびりとしても居られない。
まずバタフライ・フアーム 次にペナン・ヒル観光が今日の目的だ。
ひゃあああ 暑い 外は暑い。腹が減った! 何処かに食堂がないかなあと考えな
がらコムタに向かって歩くと銀行は所々に有ったけど、食堂はなかなか無い! キョ
ロキョロ 何処か! あああっ あそこに有る ! だけどこの道路の向こう側だ。
どうやってこの道路を渡ろうか! 日本だったらこんなに悩むことはない。信号が有
ってそこを渡れば大体安全に向こう側に行ける。でもここはペナン マレーシアのペ
ナンなのだ。信号機なんて何処にもない ! どうやって道路を横切ればいいのだろ
うか。暫く考えていたが、いい方法が思い浮かばない。そだ 周囲の人達を見ていれ
ば解るはずだ。 あっあっ 自動車が速いスピードで動いている道路を人が渡ってい
る。うっひゃあ!この暑い中を注意しながら敏速に動いて道路を横断するくなんて!
そなこと考えている暇はないのだ。
宇見は気を引き締めて注意深く道路を横断することにした。汗がどっと出てしまった
が、早めの昼食を食べてコムタ横のバス乗り場に行った。
イエローバス グリーンバス ブルーバス などが引っ切り無しに出入りしていた。
バスには番号の表示しかなく、何処を経由して終点駅が何処かの表示がない。
仕方無く下手な英語を駆使して何とか「バタフライフアーム」行のバス番号を教えて
貰った。
バスは古い! 全く古いバスである。
ガタガタ ガタガタガタ ガタと音を立て震動しながら疾走した。
事故が起きないのが不思議だと思える程の速さだ。
車掌は「皆さん 乗車券を買いましたか そちらに行きますから買ってください。」
と言いながらバスの中を前後に移動している。 宇見は「バイフライフアームまで一
枚」と言って切符を買った。バスはジョージタウンの街を出て海岸道路を通りながら
フルスピードで進んだ。約15キメメートルの道のりであったが、ガタガタガタと震
動させながら、でも乗車運賃が1ドル位でしたから日本に比べると信じられない程
安い。かざりっけの無い生活態度と質素な風景が宇見を気楽で快い気分にした。
車掌さんに「ここで降りればいいんですか?」と確認して下車したが何処にも
予想していたバタフライフアームの大きな看板がない。 何処だ ? 何処だ!
きっと近くにあるに違い無い思っていたが、見つけられない。
食品店のおばさんに、アイスクリームを買うついでに聞いてみることにした。
おばさんは「あそこに道路標識が有りますよ。ここから歩いて15分ですだあ。」と
教えてくれた。
あっほんとだ あそこに有る 標識が有る! 1.2KM !
こりゃあ まあああ近いけど、歩くとちょっと遠いなあ。 汗をふきながらゆっくり
歩いた。質素な住居と椰子の木の一般的な風景! どこもかも静かでひっそりとして
いた。
「もうすぐ ハリ・ラヤ・プアサだものねえ」
そだ! 何処の家庭でも静かに断食明けを待っているに違い無い。
だから静かでひっそりしているのだ。
期待に期待をかけていた ”バタフライフアーム ” 。中は熱気むんむん!
それに匂いが凄い ! 果物が腐り始める少し前の状態の甘いような匂いに満ち溢れ
ていた。沢山の人達が入場していて、団体とか二人連れが多いかった。
宇見は誰も居ないところを求めて歩いた。様々な蝶があちこち飛び回っていて、
まさに地上の楽園である。それにカメレオンも居たけど、どうにもカメレオンの姿を
見つけられないのには往生してしまった。
他の人達はあそこの カメレオン 今動いたとかこっちに来るとか言って騒いで
いるのに宇見にはなかなかカメレオンを見つけられなかった。宇見は「カメレオンは
何処か?」何て隣の人に尋ねた程である。執ように見ているうちに、やっとカメレオ
ンを見つけた宇見は「ひゃああ 凄い それに出っ界 うほおおう」と歓声をあげて
しまった。 回りの人達は、にこにこと微笑みながら談笑していた。
宇見は満足したのでまた皆から離れて、体色とその模様が木の葉にとても良く似て
いる昆虫を見ていた。
この時「宇見さん うみさん」と私を読んでいるのに気づいた。周囲には誰も居な
い! 一体誰だろう 「わたち わたしです」と言っているではありませんか !
うへっ うへへへ 一体どうしてしまったのだろう! 蝶に話しかけられてしまった
のです。 宇見は自分は大丈夫だろうかと不安な気持ちで居ると、蝶が「うみさん
大丈夫 私は妖精 ”サーフ ” です。何か望み事が有るならば叶えさせてあげら
れます。私は魔法使い ”サーフ”ですから 」と言った。
うほほほほう ほんとか 信じられない うひっ ようしっ では頼むとしよう。
あっ それでねっ 宇見さん 魔法は3時間しか持たないからねっ。
えっ たったの3時間か!! でも頼むよ ペナン・ヒルに連れてって呉れ!
御安い御用です ! では目を閉じて「サーフ サーフィン」と唱えてご覧 !
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いややややあ 涼しいですね ペナン・ヒル !
標高 692メートル 。
晴れているから遠くまで見えて、海とジョウジタウンの街が明確に見えて!
素晴らしい景色だ。
サーフ サーフは何処だ! キョロキョロして見回すと花の近くで気持良さそう
にこちらを見ている。 私 宇見さんとは4時までしかつき合えないの! あそこに
帰らないといけないから 。
俺がサーフの魔法でペナン・ヒルに登ったって言っても誰も信じないだろうなあ。
これは夢なのだから!信じられなくてもいいのよ!とサーフは宇見に少し心配顔で
言った。 俺っ頭悪いから何がなんだか解らなく成ってしまった。 サーフ 別れる
前に握手しよう 。 「ああ いいわ 」。 宇見が近寄って行くとサーフは宇見の
頬にそよ風のようなキスをして柔らかな絹のような手で握手した。
宇見は思わず、あまりの良い感触にびっくりしてしまった。